第23話
「無事に見つけられてよかったな」
「うん、そうだね」
公園のベンチに座りながらコンビニで買った物を食べたり飲んだりして僕達は一息ついていた。おばあさんの好意でツバメの写真も撮らせてもらえたのでお題としては達成出来、早穂さんが疲れきる前にどうにか終わらせる事が出来たので僕としてはとてもホッとしていた。
「それにしても、今回のお題は今までの中で一番苦戦したかもね」
「そうですね。ここまで見つからないとは思いませんでしたし、見つかって本当によかったと思います」
「そうだな。まあこれも共田大博士のおかげだけどさ」
「もう、止めてよ……でもこうして自分が貯えてきた知識で誰かを助けられるのってなんだか良いな」
今でも他の人と積極的に関わるのは苦手だ。けれど、誰かの助けになれたら良いなと思う気持ちもないわけじゃない。今回の件で味を占めたとかじゃなく、こうして誰かを助けられてその人達が喜んでくれるのは良い事だなと思えたからだ。
そんな事を考えていた時、まだ散歩を終わるをタップしていない事を思い出した。
「それじゃあ今日の散歩を終わりにしようか」
「そうですね」
早穂さんが答えた後、僕達はツバメの写真をアップロードしてから散歩を終わるをタップし、その後のリザルト画面に表示された妖怪を獲得するをタップした。すると、画面内には爪が鎌のようになった小さな鼬が三匹現れた。
「これは……
「私は夜雀ですね。見た目は普通のスズメのようで可愛らしいですが、たしか夜雀は捕まえた相手を夜盲症にしてしまう妖怪だった気がします」
「それで、夜に山道を歩いている人の後ろに現れてついてくるんだったね。鎌鼬も風を吹かせる担当と相手を切りつける担当、そして傷薬を塗る担当で三匹いるみたいだし、今回は飛ぶタイプの妖怪でお揃いだね」
「ふふ、そうですね。成長したらどのような姿になるのか楽しみです」
「うん」
それぞれの妖怪を見ながら笑いあっていた時、僕達の事を強い光が照らした。
「わっ……」
「ま、眩しい……」
「はは、悪い悪い。二人とも良い雰囲気だったから思わず撮っちゃったよ」
いつの間にか僕達の目の前に立って携帯を構えていた魚倉君に対して僕はため息をつく。
「魚倉君……もう、撮るなら撮るって言ってよ」
「けど、撮るって言ったらそれはそれで緊張するだろ? それに、俺が良いなと思ったのは今の自然な感じだしな。嫌なら消すけど、どうする?」
魚倉君からの問いかけに僕と早穂さんは顔を見合わせてから首を横に振る。
「別に良いよ、残してても。まああまり他の人には見せないでいてほしいけど」
「私は別に構いませんが、芽衣子があまり良い顔をしない気がしますしね。魚倉さんやご家族のみで楽しむためだけなら大丈夫ですよ」
「ああ、もちろんだ。そういえば、お前達の妖怪ってまだ進化は出来ないのか? ちょこちょこ強化はしてるんだろ?」
「素材がまだ少し足りないかな。けど、犬神はそろそろ進化出来たはずだよ」
「私ももう少しで雪女が進化するはずです。魚倉さんはどうですか?」
「俺もぼちぼちだよ。せっかくだし、もう少しこのアプリについて話そうぜ」
それに対して頷いた後、僕達はお昼近くまで公園のベンチに座りながら妖怪さんとGO! についての話に花を咲かせた。
「……へへ、良い写真が撮れたもんだな」
夜、俺は携帯を見ながら嬉しさでいっぱいになっていた。画面には一人の女が写っていたが、要らない部分を切り取ったり少し拡大をしたりしたことで画質は少し悪くなってしまったが、それでもその美貌を楽しむには十分すぎる程だった。
「けど、やっぱりアイツが邪魔だ。見た感じ、この女はアイツの事を本当に好きみたいだし、どうにかして排除しないと。あの、“共田歩”を」
電気が消えて携帯の光だけが照らす室内で俺は共田歩への憎悪を静かに燃やし続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます