第4話
翌日の放課後、授業が終わると同時に僕は御供さんのお屋敷に急いで向かった。部活動がない事や下校に誘ってくる相手がいない事がとても嬉しく、思わず鼻唄を歌ってしまいそうな程だったが、変に怪しまれても仕方ないので僕は表情には出さないように努めながら急いで昇降口を出て校門を出ると同時に走り始めた。
そうして走る事数分、昨日も見た門が見えてくると、門は独りでに開いていき、御供さんが門の外へと出てきた。
「御供さん!」
「あっ、共田さん! お待ちしていました!」
御供さんの目の前で止まると、御供さんは変わらぬ綺麗な笑顔で僕を迎えてくれ、その事がたまらなく嬉しかった。
「早く話がしたくて急いで学校から来ちゃいました」
「私も待ちきれずに出てきてしまいました。さあ、中へどうぞ」
「はい」
御供さんの後に続いて僕は門の内側へと入り、そのままお屋敷の中へと入った。そして御供さんの自室に着くと、そこには壁際で動かずに立つ吉良さんの姿があった。
「吉良さん、お邪魔します」
「ようこそ、共田様。お嬢様より何かお話があると聞いていますが、そのお話とは何でしょうか?」
「それなんですけど……吉良さん、土日祝だけでも御供さんを連れてどこかに行くというのは大丈夫ですか?」
その言葉に御供さんが驚く中、吉良さんは眉を動かした。
「お嬢様を連れて……ご存じかと思いますが、お嬢様は体力面に不安がありますし、今でも体調を崩される事があります。遠出というのであればご遠慮願いたいのですが」
「遠出というほどじゃないですよ。えっと、まずこれを見てもらえますか?」
僕は携帯を操作して昨夜の内にブックマークしておいた件のアプリのサイトを開く。そして僕の携帯の画面を吉良さんと一緒に御供さんは覗き込むと、御供さんは驚きながらも笑みを浮かべた。
「このようなアプリケーションがリリースされるのですね。名前は……“妖怪さんとGO!”ですか?」
「はい、そうです。アプリ内で指定されるお題によっては近所だけじゃなく電車に乗って隣町まで行くという可能性も出てきますが、お題の引き直しなども出来るようなので無理そうな物が出てきたらそれは引き直しをして、近所または隣町くらいまでで済むようなお題ばかりをクリアしていけば良いと思うんです。こうやってゲームという形で運動をすれば御供さんも少し体力がついて体も強くなっていくと思いますし、僕は良いと思ったんです。僕達だけの部活動、“散歩部”という形で」
「部活動……ですか?」
「はい。御供さん、部活動ってこれまでやった事はありましたか?」
「いえ、一度も。なので、部活動に励む事が出来る生徒達が羨ましいと思っていました」
「だからこそ、これをプレイして体力作りをする事を部活動にしたらどうかと思ったんです。もちろん、僕達だけの部活動ですから学校とかは関係ないですし、部室も部費も必要ないです。そして活動日はお互いに学校のない土日祝にすれば時間も取りやすいですし、他の事に煩わされる事だってないと思うんです。僕は学校で部活動には入ってないですし、遊びに誘ってくるような人もいませんから」
自分で言っていて少しだけ哀しくはなったけれど、この活動をする上ではこの上なく好都合だった。
そして御供さんがやりたそうな様子を見せる中、吉良さんはため息をついた。その姿からダメだったかと思ったけれど、吉良さんは御供さんに視線を移した。
「現在、お嬢様の体調面が不安だったのでお稽古事は何もありませんからこの活動をする時間自体は問題なく取れると私は思います」
「芽衣子、それじゃあ……!」
「私自身は不安がないわけではないですが、お嬢様ご自身がやりたそうにしているのなら私はそれを尊重したいと思います。ですが、無理だけはしないでください。無理をなさって体調を崩されては旦那様と奥様が悲しまれますので」
御供さんは大きく頷く。
「もちろんです。あとはお父様とお母様にお話をして、承諾を頂くだけですね」
「それは問題ないかと思いますが……そうですね、まずはお話をなさってからだと私も思います。そして共田様、私は屋敷内のお掃除などがあるのでこの活動には参加出来ません。なので、その間は共田様にお嬢様の事をお任せする形になります。くれぐれもお嬢様に無理をさせたり傷つけるような事をなさったりしないでください。その時にはすぐに活動を辞めさせますので」
「わかってます。僕だって御供さんをお預かりする以上はちゃんと責任を持ちます」
「ならばよいです」
「共田さん、早速部活動について相談をいたしましょう! 私、本当に楽しみになってきました!」
「はい、もちろん」
そして吉良さんが運んできてくれたケーキや紅茶を味わいながら僕と御供さんは散歩部の活動について色々な話を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます