第3話
その後、ジェーンとしてアレンとお茶をすることになった。アレンの要望で、常識的範囲で仲睦まじい様子を周囲に見せつけた。殊の外、彼は喜んでいるように見え、この恋人ごっこのような関係は少々こそばゆい。
一体、どんな気持ちでステイシーに頼んでいるのか、気になるところである。
王位に興味がないとはいえ、彼は王族。いずれは偽りの令嬢ではなく、本物の令嬢と婚約をしなければならない。
(そのうち、ジャミル殿下とリリーナ様の婚約が白紙になって、挿げ替えられるのではないかしら?)
もしそうなったとしても、ステイシーの役目は変わらない。彼の影として働くだけだ。
一応、リリーナがお茶会に現れなかった理由を知るべく、情報を得ると、恐るべき事態が発覚した。ステイシーは翌日、ジェーンとしてアレンとの昼食の席で報告する。
「アレン様、実は昨日、リリーナ様は制服を汚されて欠席したらしいですわ」
「はい……?」
アレンは目をぱちくりさせて、ステイシーを見つめる。今なら彼の気持ちがよく分かる。ステイシーもなぜ彼女がそんなことになっているのか訳が分からなかった。
「どういうこと? 彼女にも影はついているだろ?」
ジャミルにディアナという少女がつき纏うようになって、王家はジャミル、ディアナ、リリーナにそれぞれ影を付けさせた。
まずはジャミルとディアナの動向を探る為、そして二人が逢引きすることでリリーナが不貞に走らないか調べるためである。言い換えれば、これは彼女の潔白を証明する行いであり、彼女にこれ以上の瑕疵を付けさせないためだった。
「ええ、もちろん。話を聞いたら、ジャミル殿下に突き飛ばされて出来た汚れらしいです」
リリーナ付きの影が言うには、昨日のお茶会にディアナを連れて行くとジャミルは言ってきかなかったらしい。
それに対して、リリーナがジャミルとディアナをまとめて叱責し、ジャミルに逆上されたようだ。そして、水たまりに突き飛ばされたというわけである。
汚れたなら着替えて出直せばいいと思うが、彼女はそのまま屋敷に閉じ籠ってしまったらしい。
「報告ではだいぶ落ち込んでしまっていたようです。はぁ~……なんてお労しいリリーナ様……私も彼女の悲しみを浴びたかった」
「ジェーン?」
幸い、二人が食事をしている場所は王族とその婚約者、そして公爵家だけが使える個室だ。護衛は部屋の外で待機しているので、ステイシーの本音はアレンにしか聞こえていない。
ステイシーは一度咳払いして話を続ける。
「一応、今日は登校しているようですが、あまり顔色はよろしくなかったですね」
「もしかしたら、フレベル公爵に咎められたのかもね。王族とはいえ、婚約者を諫められず、男爵令嬢に出し抜かれたとは何事かって」
「言いそうですね……どうします? 本当に婚約者を挿げ替えられるかもですよ?」
「ジェーン?」
咎めるように再び名前を呼ぶと、不機嫌そうな声とは裏腹ににっこりと笑顔を浮かべた。
「ボクを怒らせたいの? それとも……ボクを試してる?」
こちらに向けられた瞳はとても綺麗なのに、彼はじっとりとした視線をステイシーに向けてくる。それはまるで獲物を捉えた獣のような目。しかし、殺意とは違う恐怖心を煽り、背筋がぞくぞくする。手練れの暗殺者だってそんな目を向けてこないだろう。
「君がその気なら、ボクは構わないよ? 君には全部降りてもらおうかな?」
「ぜ、全部降りるとは?」
「その通りさ。婚約者の座も、護衛も、諜報も、私の読者も、全部」
(なんだって~~~~~~~~~~~~っ⁉)
婚約者の座は降りてもかまわない。しかし、護衛も、諜報も任から外されたら、ステイシーは最悪この学園を辞めさせられる可能性があった。彼の影でいるからこそ、ステイシーは人間観察も諜報も補佐付きでゆるーく活動ができるのだ。おまけに彼の小説が読めないのはかなりの痛手だ。
「で、殿下~……私、殿下とはまだまだ婚約者でいたいです~」
「アレン」
「あ、アレン様ぁ……」
すがるように両手を合わせると、ぶっと彼は大きく失笑した。
「くくくっ……冗談だよ。ボクも君がいないと困るしね」
アレンの言葉にステイシーがほっと胸を撫で下ろした時だった。
個室のドアが開き、現れたのはリリーナ・フレベル公爵令嬢だった。眩しく輝くハニーブロンドの髪、目が覚めるような青い瞳は少しだけつり上がっている。化粧のせいか大人びていて勝気な印象を与えるが、今日はどこか浮かない表情をしていた。
「リリーナ?」
アレンが声をかけると、ハッとした様子で顔を上げる。
どうやら、こちらに気付いていなかったようだ。
「ご、ごきげんよう、アレン殿下。ジェーン様」
「ごきげんよう。君も食事?」
「はい。昨日はお茶会を無断で欠席してしまい、申し訳ございません。ちょっと急用ができたもので」
彼女は本当の理由も告げずに、平静を装っていたが、その声は少しだけ震えている。
「ジャミルから聞いた時は驚いたけど、用事ができたのなら、仕方がないよ」
「わたくし、リリーナ様にお会いできず、とても残念だったのですよ。良ければ、お昼をご一緒しませんか?」
彼女の悲しみをこの身で浴びたいステイシーはそう提案すると、アレンはその考えを察したのだろう。一瞬呆れた目を向けた後、アレンは頷いた。
「それがいい。どうだろう?」
「え……はい。ご迷惑でなければ」
リリーナも同じテーブルに着き、食事を始めた。
悲しみを浴びたいと言っても、さすがに食事は和やかに過ごしたい。アレンも同じことを考えているようで、今日の授業のことや、本の話など、なるべくジャミルが話題に出ないように会話の流れを作る。一見穏やかな食事の光景に見えるが、リリーナの表情が硬く、いつもより周囲が薄暗く感じた。
デザートも終わり、食後のドリンクを口にしていると、リリーナが戸惑うように口を開く。
「あ、あの……昨日は……ジャミル殿下は他の女性を連れていきませんでしたか?」
二人があれ以上訊ねてこなかったことに疑問を覚えたのだろう。それに対して、アレンが肩を竦める。
「ああ、いたね? 名前を覚えてるかい、ジェーン?」
「嫌ですわ、アレン様ったら。紹介も受けていない相手の名前なんて知るはずもございません」
社交界には社交界のルールがある。顔を繋ぎ、知人となる為には、共通の知人から紹介を受けなければならない。
学園内であれば、授業で自然と顔と名前を覚えるが、交友関係の構築の仕方は社交界に則っている。
本来であれば、ジャミルは昨日の場でディアナを紹介したかっただろうが、アレンがリリーナの所在を訊ね、お茶の席を拒否したことでそれを阻止したのだ。
「アレン殿下、ジェーン様、この場では社交の作法抜きでご意見を頂きたいですわ」
リリーナの言葉に、ステイシーはアレンに判断を仰ぐ。
「ディアナ・オーシーのことかな?」
「そんな名前でしたね。礼儀作法も出来ないどころか身分も弁えない方でしたが」
まさか婚約者同士のお茶会に、ジャミルが彼女を連れてくるとは思わなかった。彼女が少しでも礼儀を弁えているのなら、ジェーンとしての自分の心象も変わっていただろう。
「わたくしがアレン様の隣にいるというのに、彼女はアレン様に触れようとしたのですよ。その場で叩き落して差し上げましたが」
ステイシーは護衛も兼ねている。そうやすやすと彼を触れさせるわけにはいかない。そもそも、みだりに身体に触れることはマナー違反なのだ。
ステイシーの言葉にリリーナが驚いたように息を呑んだ。普段のジェーンは誰かに敵意を向けるどころか、手を上げるようなことはしない。そもそも王族に馴れ馴れしく触れようとする不敬者がいるのがおかしいのだ。
「あのジェーン様が自ら手を?」
「ええ、まるでお菓子をくすねる幼子を叱った気分でしたわ」
茶目っ気を出してステイシーが答えると、彼女は少しだけ顔色が戻る。
「で、でも、ジャミル殿下は何も咎めませんでしたか?」
「咎められたという程ではございませんわ。むしろ、ジャミル殿下はディアナ・オーシーの言動を見ていなかったようなので、ご報告させていただいたまでです」
あの時のことを思い出したのか。隣にいたアレンも声を抑えて笑う。
「その後、すぐに解散になって、ボク達もすぐにあの場を離れたからね」
「解散に……?」
「ああ。婚約者同士の交流の場だろ? 君がいないのに別の誰かを同席させるわけにはいかないからね?」
アレンがそう答えると、リリーナは黙って小さく俯いてしまう。
「リリーナ様?」
「羨ましい……」
彼女がぽつりと言葉を漏らした時、テーブルクロスの上に雫が零れ落ちた。
「わたくし、お二人が羨ましいですわ……」
「リ、リリーナ様⁉」
いつも気丈に振舞っている彼女が涙を流し、ステイシーは慌ててハンカチを差し出す。これにはアレンも驚いたようで、目を見開いて彼女を見つめていた。
「どうしましたか? 何かあったのですが?」
「ジェーン様……実はジャミル殿下が昨日のお茶の席にわたくしではなく、ディアナ・オーシーを伴うと言ったのです。もちろん、わたくしは反対しましたわ。ジャミル殿下の婚約者はわたくしであって、彼女ではありません。いくら友人とはいえ、適切な距離感も分からないような方を王宮へ招くわけにはいかないとジャミル殿下を諫めました」
彼女の言い分は分かる。ディアナは驚くほどの常識の無さだった。天真爛漫といえば、聞こえがいいが、無知であることを上塗りしているだけである。
「それで、ジャミル殿下はなんと……?」
「殿下はお怒りになり、『オレの交友関係に口を出すとは、なんて傲慢な女だ。前々からお前の命令口調にはイライラしていたんだ。お前はオレの婚約者にふさわしくない』と……それで……驚いてよろけてしまい、制服を汚してしまいましたの」
彼女はあえて濁したが、実際は水溜りに突き飛ばされたのだろう。
婚約者にそのような扱いを受けて、ショックだっただろう。
傷つくリリーナを見て、ディアナが勝ち誇った笑みを浮かべる姿が容易に想像つく。
「言葉で言えば簡単ですが、わたくし、ジャミル殿下の婚約者に恥じない努力を重ねたつもりです。未来の国母になれずとも、彼の伴侶として支えるべく、王宮での厳しい教育にも耐え、互いに交流して仲を深めていたと思っていました。それなのに……それなのに……」
ステイシーもリリーナと同じように王子妃教育を受けてきたので、その辛さをよく知っている。特に彼女は生まれながら王子の婚約者として運命付けられていたのだ。家の為、ジャミルの為に人生を捧げてきたと言っても過言ではない。
「わたくし、互いに尊重し合い、支え合う、アレン殿下とジェーン様が羨ましいですわ。わたくしもお二人のように仲睦まじくできていたのなら……」
(いやいや、仲睦まじいと言っても、ビジネスな部分もあるのですが……)
しかし、そんなことを彼女に言うわけにもいかない。リリーナはステイシーから受け取ったハンカチで涙を拭い、彼女は深呼吸し、少しだけ落ち着きを取り戻した。
「王宮のお茶会に参加しなかったことをお父様に知られ、説明を要求されました。とてもご立腹な様子で王家に抗議すると。そして、殿下を諫めきれなかったわたくしもお叱りになりましたわ。男爵令嬢ごときに遅れを取るとは情けないと……」
(ああ、予想通りか……)
ステイシーはアレンと視線を合わせ、互いに頷き合った。
「最後には、婚約者を変えるとも言い出しました。王家と交わした契約では、必ずしもジャミル殿下である必要はないと。さらにお父様はアレン様でも構わないと言い出したのです!」
(おっと~、まさかの挿げ替えが実行されちゃう⁉)
とはいえ、ジェーン・サイアンローズは実在しない令嬢である。婚約者の挿げ替えは容易いだろう。
一応、アレンの下にも弟がいるが、彼は飄々としていて掴みどころがない。ジャミルや弟と比べると、まともで扱いやすそうなアレンに目が留まるのも頷ける。
隣のアレンを見れば、彼の顔から表情が抜け落ちている。驚いているのか、それとも怒っているのか、長い付き合いのステイシーすら判別がつかない。
「わたくし、アレン殿下とジェーン様の仲を引き裂くなんてできません! それに、もし例えジャミル殿下との婚約を続行したとしても……わたくし、彼を支える自信がございません」
一度引っ込んだ涙が再び目からあふれ出した。ステイシーはリリーナの隣へ移動する。
個人への興味関心が薄くて、つい昨日まで『身分差恋愛、最高!』と歓喜していたステイシーだったが、その状況に応じてかける言葉くらい理解している。
「リリーナ様……とても、お辛かったですね。ずっと見ているだけで、手も差し伸べることもせず、申し訳ありません」
ステイシーがそう口にすれば、リリーナは自分が公爵令嬢であることも忘れ、ステイシーに抱き着いた。
「ジェーン様ぁ……!」
(ごめんなさい、リリーナ様……私、あなたの悲しみと葛藤をこの一身に浴びることができて、とても幸せです)
全ては自分の感性と価値観を養う為、ステイシーは心痛な表情を作りながらも、内心ほくほくした気持ちでリリーナを抱きしめ返した。
ふと、目の前から「参ったな……」というアレンの声が聞こえ、ステイシーは顔を上げた。
「どうしましたか、アレン様?」
「いや、リリーナに捨てられたら、ジャミルはどんな顔をするんだろうと思ってさ」
「わたくし、グスッ……顔も見たくもありませんわ」
鼻をすすりながらリリーナが答え、ステイシーは彼女の背を優しく擦りながらこう思う。
(私は絶望で顔を歪めてくれると嬉しいです。ディアナ・オーシーと一緒に)
「とにかく、今回の件は父上達にお任せしよう。リリーナ、愚兄のことで辛い思いをさせて悪かったね」
「いえ……アレン殿下がジャミル殿下を陰ながら諫めてくださっていたのは存じております。わたくしを守ってくださっていたことも……」
(え、何それ? 聞いていませんが?)
アレンに問い詰めるような視線を送るも、彼は華麗に無視して、リリーナへにっこりと微笑んだ。
「何のことかな? さて、そろそろ午後の授業が始まる。リリーナはもう少し落ち着いてから出ておいで」
「次は刺繍の授業ですから、先生には伝えておきますわ」
「ありがとうございます……」
アレンと共に個室を出ると、待機していた護衛と合流し、教室へ向かう。
そんな中、ステイシーは恨みがましくアレンに視線を送る。
(一体何をしたんですか~? 私が知らないということは、お父様とお兄様を頼りましたね~? なんで私を介してくれなかったんですか~)
無言の圧を掛けると、アレンは嬉しそうに口元を持ち上げた。
「妬いちゃった?」
アレンの茶化した物言いに、ステイシーは胸の奥で苛立ちにも似た感情が湧き上がる。
しかし、その感情を上手く言葉にできないステイシーは、護衛がすぐそこに控えているにも関わらず、公爵令嬢ジェーン・サイアンローズの仮面を一瞬だけ外してしまった。
「わかりません……」
そう、自分の感情がいまいち分からない。楽しいこと、面白いこと、嬉しいこと、嫌いなことはその場その場で理解ができる。しかし、それ以外のことになると途端に分からなくなってしまう。
人の感情は、直接伝えられる観劇や小説とは違って、分かりにくいものだ。しかし、長年の人間観察のおかげで、他者の表情や言動から感情を少しずつ読み取ることができるようになった。
しかし、未だに自分に対して鈍感なままだ。
ステイシーはハッとして再びジェーンの仮面をつけ直す。
「ごほん。ジャミル殿下の婚約者様ですもの。アレン様が心配するのも無理はありませんわ」
「なーんだ。ちょっと残念」
アレンは苦笑し、ステイシーの手を引いて教室まで歩き出す。
(でも、お父様やお兄様の手を借りたことは、ちょっと納得できませんからね~~?)
「午後は男女で科目が分かれていたね? また帰りにね?」
アレンと別れたステイシーは、実習室へ足を向けると渡り廊下でジャミルに出くわした。男子生徒は座学のはずだ。それなのに彼がここにいると言うことは、授業をサボるつもりなのだろう。彼の側にはディアナの姿もない。
ステイシーは失礼のない程度に挨拶をすると、ジャミルがステイシーの肩に触れた。
「おい、ジェーン。昨日はよくもオレに恥をかかせたな?」
「なんのこと仰っているのか分かりかねます」
自分達は当然なことをしたのだ。ジャミルが恥をかいたところでステイシーの失態ではない。
「っ!」
ステイシーの肩を掴んでいたジャミルが、不意に力を込めた。危うく反撃しかけたが、相手は王族だ。ぐっとこらえる。
「お前も公爵令嬢だ。地位や血筋の価値が分からない女ではないだろう?」
(何を言ってるの、この人?)
訝し気な目を向けると、ジャミルは不敵な笑みを浮かべた。
「アイツは第四王子で、幼い頃に病弱だったせいで王位継承権は最下位。アイツの元にいても、権力もろくに得られず、子をもうけてもアイツに似て病弱な子が生まれもしたら、サイアンローズ家には何も旨味はないだろう?」
「一体、何を……」
「ここのところ、リリーナが扱いづらくてな。もしお前が、アレンからオレに乗り換えて、リリーナを黙らせるのに手を貸すというのならサイアンローズ家にもお前にもいい思いをさせてやれるぞ。どうだ?」
(本当にこの人は何を言っているの?)
ステイシーは困惑した。
ジャミルの地位はフレベル公爵家の後ろ盾があって成立している。
まるで自分に権力があるように振舞う意味が分からなかった。彼女を蔑ろにするようなことがあれば、ステイシーの首は簡単に飛んでいくだろう。
「ジェーン?」
不意に名前を呼ばれ、ステイシーは声のした方へ顔を向けると、そこには笑みを浮かべたアレンがいた。
「それにジャミルまで。二人で何をしてるの?」
アレンはステイシーの肩を掴んでいたジャミルの手を払うと、ステイシーを抱き寄せた。
「あ、アレン様?」
「君に話し忘れていたことがあってね。探しに来たんだ……それで、ジャミルは彼女に何の用だったの?」
がっつり腰に手を回されて引き寄せられたせいで、彼の顔が見られない。腰に回された腕が、じりじりと力を込めているのを見るに、怒っているのだろうか。
「すごい親し気に見えたけど……気のせいかな?」
「た、ただの世間話だ。じゃあな!」
ジャミルが舌打ちし、そさくさと退散していく。
ジャミルの姿が見えなくなると、アレンは脱力したようにため息をつき、ステイシーを抱きしめていた腕を緩めた。
「はぁ~~~~~~……良かった。ボクの可愛いジェーンが危うく穢されるところだったよ」
「大袈裟ですよ。一体何の用ですか?」
「君がジャミルと一緒にいたのが見えて慌てて追いかけてきたんだよ……」
護衛がいるからか、甘えるふりをして頭を寄せたアレンはステイシーにこっそり耳打ちをする。
「それで、何を言われたの?」
「アレン様のお耳に入れるほどのものではありませんわ」
「ふーん。…………ふーん」
アレンは不満げな声が聞こえたが、ステイシーに聞き流すことにした。
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