第3話 相談
その後も和花は茶谷のアプローチを断る、というか逃げ続けた。
それを見ていた良子は茶谷に言う。
「もうあきらめたら? まったく脈ないよ。守ってくれるっていう利点を蹴ってまで断るんだからさ」
「うるせえ。部外者は黙ってろよ」
「おー怖。そんなんだから和花も嫌なんだよ」
「意味わかんねえよあいつ。いじめなくなってほしくねえのか?」
茶谷は明らかにイライラしてる。近くにあったゴミ箱を蹴飛ばし、中身が辺りに舞う。
「そもそも、おれに対する感謝あるなら受けるのが道義だろが!」
「なにしてんのみっともない。まあ、仕方ないっしょ。和花好きな人いるっぽいしね」
「はっ!?」
♢
和花は茶谷から逃亡し、走っていた。
――どこへ向かって?
和花自身わかってはいなかったが、自然と足は図書室の方へ向かっていた。
闇野青春がいるかもしれない場所……
「「廊下を走るな!!」」
教師の怒号が響いた。
和花は驚き、曲がり角寸前で振り向いてしまう。
すると、ちょうど曲がり角に人の姿があった。
――当然激突。
走って勢いあまっていた和花は、ぶつかった相手を押し倒すような形になってしまっていた。
「ご、ごめんなさい!」
相手の顔も見ずに平謝り。
「……別にいいよ」
相手の声。和花はこの声に聞き覚えがあった。
顔をあげ、相手を確認すると……
気になってる男子、闇野青春その人だった。
「……どうかしたの? 必死に走ってたみたいだけど……」
和花の頭の中はパニックだった。
(は、初めて話しかけられた! ていうか怪我ないかな? そもそも謝ったっけ? あれ? なんで走ってたんだっけ!?)
そのせいか、少し涙ぐんでるように見えた青春は心配そうに言う。
「……話しくらいなら聞くけど?」
♢
先ほど涙ぐんでた理由とは違うものの、和花は今の悩みを打ち明けることにした。
いじめられてるなんてカッコ悪い事、本来なら和花は言いたくなかった。
そんなこと言ったら、助けてくれと言ってるようなものだから。
和花は彼を巻き込みたくなかった。
……だが、優しく話すよう
聞き上手な彼にうまくのせられるように。
「……いじめに、それを止める変わりに付き合えねえ……」
青春は和花から事の一部始終を聞いた。
「同じクラスなのに知らなかったよ。あまり、クラスメイトと関わらないようにしてたせいかもね」
どうやら自主的に孤独になっていたようだ。なにか理由でもあるのかと、和花は疑問に思った。
だが、そんなことよりまず和花は頭を下げる。
「ご、ごめんねどう反応すればいいかわからないよね! 相談するような事しちゃってごめんね! 気にしないでね! 巻き込む気ないし」
「いや、そんな大事なら放ってはおけないでしょ。とはいえ僕一人でどうにかもできないし、先生の力でも借りようか」
「……え?」
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