第3話  相談

 その後も和花は茶谷のアプローチを断る、というか逃げ続けた。

 それを見ていた良子は茶谷に言う。


「もうあきらめたら? まったく脈ないよ。守ってくれるっていう利点を蹴ってまで断るんだからさ」

「うるせえ。部外者は黙ってろよ」

「おー怖。そんなんだから和花も嫌なんだよ」

「意味わかんねえよあいつ。いじめなくなってほしくねえのか?」


 茶谷は明らかにイライラしてる。近くにあったゴミ箱を蹴飛ばし、中身が辺りに舞う。


「そもそも、おれに対する感謝あるなら受けるのが道義だろが!」

「なにしてんのみっともない。まあ、仕方ないっしょ。和花好きな人いるっぽいしね」

「はっ!?」





 和花は茶谷から逃亡し、走っていた。

 ――どこへ向かって?

 和花自身わかってはいなかったが、自然と足は図書室の方へ向かっていた。


 闇野青春がいるかもしれない場所……


「「廊下を走るな!!」」


 教師の怒号が響いた。

 和花は驚き、曲がり角寸前で振り向いてしまう。

 すると、ちょうど曲がり角に人の姿があった。


 ――当然激突。

 走って勢いあまっていた和花は、ぶつかった相手を押し倒すような形になってしまっていた。


「ご、ごめんなさい!」


 相手の顔も見ずに平謝り。


「……別にいいよ」


 相手の声。和花はこの声に聞き覚えがあった。


 顔をあげ、相手を確認すると……

 気になってる男子、闇野青春その人だった。


「……どうかしたの? 必死に走ってたみたいだけど……」


 和花の頭の中はパニックだった。


(は、初めて話しかけられた! ていうか怪我ないかな? そもそも謝ったっけ? あれ? なんで走ってたんだっけ!?)


 そのせいか、少し涙ぐんでるように見えた青春は心配そうに言う。


「……話しくらいなら聞くけど?」





 先ほど涙ぐんでた理由とは違うものの、和花は今の悩みを打ち明けることにした。


 いじめられてるなんてカッコ悪い事、本来なら和花は言いたくなかった。

 そんなこと言ったら、助けてくれと言ってるようなものだから。

 和花は彼を巻き込みたくなかった。


 ……だが、優しく話すよううながす青春につい、全てをはなしてしまった。

  聞き上手な彼にうまくのせられるように。


「……いじめに、それを止める変わりに付き合えねえ……」


 青春は和花から事の一部始終を聞いた。


「同じクラスなのに知らなかったよ。あまり、クラスメイトと関わらないようにしてたせいかもね」


 どうやら自主的に孤独になっていたようだ。なにか理由でもあるのかと、和花は疑問に思った。

 だが、そんなことよりまず和花は頭を下げる。


「ご、ごめんねどう反応すればいいかわからないよね! 相談するような事しちゃってごめんね! 気にしないでね! 巻き込む気ないし」

「いや、そんな大事なら放ってはおけないでしょ。とはいえ僕一人でどうにかもできないし、先生の力でも借りようか」

「……え?」




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