第39話 いぬ耳幼女と仲良し(意味深)

「わふわふ。ご主人様、王都にいくのかー?」


 宿のベッドの上でドルチェの頭を撫でていたら、その話になった。


 わたしが宮廷魔道士に会いたいとギルド長に話したことを言ってるようだ。


「そうねぇ。そのつもりなんだけど……ドルチェはついてきてくれる?」


「もちろんついてくぞ!」


「あれ?」


 前聞いた話だと、オーダーウルフはベルルクから出たがらないと聞いていた。だから、どうやってドルチェに質問しようか悩んでいたのだが……


「どうかしたのかー?ご主人様?」


「えっと、オーダーちゃんたちはこの町を出たくないって聞いてたから」


「ドルチェはご主人様とずっと一緒がいいぞ?」


 ゴロンと寝返りをうって、わたしのことを見つめてくれた。キラキラのまん丸な目だ。かわいい。


 わたしは頭を撫でながらお腹あたりもさすってあげることにした。


「くぅ〜ん♪」


 気持ちよさそうにしてる。


「わたしもドルチェとずっと一緒がいいわ」


「わふわふ♪」


 そっか、ベルルクを出る唯一の懸念だったけど、ドルチェがついてきてくれるなら、お金を受け取ったらさっさと王都に向かうのもありかもしれない。


 そう思いながら、わたしはこの休み期間中にやりたいことを妄想しはじめた。


 時間があるなら、また、あれをやりたい……



「ご主人様ー?なに買いに来たんだ?」


 町に出て、雑貨屋に入ったところで質問された。ドルチェは、わたしの手を握って、こちらを見上げている。


「ちょっとねー、ドルチェを天国に連れていってあげる道具をね」


「わふ!?ドルチェ死にたくないぞ!!」


「あ!ごめんごめん違うの!ドルチェが気持ちよくなるものを探しにきたのよ〜、んふふ……」


「き、気持ちよく?それならいいけど……わふん……」


「……フランお姉さん、あれをドルチェにもやるのですね……浮気なのです……」


「……」


 アウルムちゃんがジト目を向けてくるが、見なかったことにする。


 ごめんね、アウルムちゃん、でも、わたし我慢できないの!

 こんなわたしを許してちょうだい!


 そしてわたしは、ドルチェのためのグッズを買い揃えた。



-宿 自室-


「それじゃあ、ドルチェ♪そこに寝転んでね?」


「わかったぞ!」


 わたしは、ドルチェをベッドに仰向けに寝かせ、わたしも正座して横に座った。アウルムちゃんは本を開きながら椅子に座って、ジト目でこちらを見ている。


「わふわふ、きもちよくしてくれるのかー?」


「そうよ〜♪たっぷり気持ちよくしてあげるからね♪」


「わふん!ドルチェ気持ちいいの好きだぞ!たくさん撫でてほしいぞ!」


「そうよね、ちょっと待ってね」


「わふん!」


 わたしはニコニコでグッズをベッドに並べ出した。ドルチェ用に買い揃えたグルーミンググッズだ。

 アウルムちゃんのものとはちゃんと使い分ける。これは神聖な儀式なので、その子ごとにグッズを分けるべきなのだ。


 グルーミンググッズとして、ブラシ、爪切り、爪研ぎ、リップクリーム、音叉をタオルの上に順番に並べ、準備が整う。


 ふぁさ。


「くんくん、なんだこれ?」


 ドルチェのお腹の上にタオルを置くと、それの匂いを嗅ぐ。


「爪が散らばらないようにするタオルよ。それじゃ始めるわね?」


「わん!わかったぞ!」


 ドルチェの笑顔も確認できたことなので、まずは爪切りから始めることにした。


 小さいお手手を持って、両手ともドルチェのお腹の上にひいたタオルの上に乗せる。


 パチン……パチン……


 ゆっくり丁寧に爪を切る。


「わふわふ?なにしてるんだ?」


「まぁまぁ、リラックスして〜」


 シャリシャリシャリシャリ……


 爪切りが終わったら爪研ぎだ。艶々にさせていただいた。綺麗になった爪を濡れタオルで拭いて粉を落とす。


「それじゃあ、マッサージしま〜す」


「わふ?」


 もちもち……もちもち……


 わたしは、両手で念入りにドルチェのお手手を揉む。右手、左手、また右手。


「わふ〜……これは気持ちいいぞ……」


 やっとドルチェが気持ちよさそうにしてくれた。可愛いので、いつもより多めにモミモミしておく。


「アウルムのときより長い気がするのです……」


 アウルムちゃんが嫉妬の炎を燃やしている。あ、あとでフォローすればいい。今はドルチェに集中するのよ!


「……つ、次は足の爪になりま〜す♪」


「わふん……」


 そして、足の方も同じようにさせていただいた。


「ご主人様のマッサージ……すごく、きもちいいぞ……」


 足のマッサージを終えると、ドルチェの目はとろんと眠そうなものになる。


 それを見てから、わたしは音叉を持ち上げた。左手に持って、右手にゴムハンマーを持つ。


「ちょっと音が鳴るけど、リラックスして〜」


 ボーーン……


 音叉を叩いて間伸びした低音を鳴らす。


「わふ!?……わふぅ〜……」


 ドルチェの犬耳の周りに音叉を移動し、右耳から左耳にかけて、動かした。


 プルプルと、こそばゆそうに犬耳が動く。


「変な感じだぞ……」


「じゃあ、耳もマッサージしま〜す」


 ふさっ。ドルチェの垂れた犬耳は今日ももふもふだ。大切に持ち上げて、ブラッシングしていく。

 サラサラである。ブラッシングと同時にもちもちと揉みほぐす。


「きもちぃぞ〜……」


「んふふ……」


 とろとろのドルチェをわたしはニコニコと眺めてグルーミングを続けた。


「ドルチェ……ねむいぞ……」


 耳の手入れが終わったら、ドルチェが眠いと訴える。


「あ、待ってね、最後にリップ塗るから」


「なんだぁそれぇ……」


「これよ」


 言いながらキャップを開けて見せてあげる。


「今から唇に塗るから……えっと……ちゅって……ちゅーって、して?」


 わたしは、自分の唇をすぼめて、真似するように求めた。


「わふ?……ちゅー……」


 ああ……ああああ……わたしは、またなんて罪深いことを……


 アウルムちゃんのときは、んー、だったのに、今度はもう、ちゅー、なんて言ってしまった。


 これは……こんなのもう……完全にキス顔じゃない!


 わたしの目の前には、お腹にお手手を置いた犬耳幼女がとろ顔で口をすぼめていた。


 そんないたいけなワンワンに、わたしは!


 ちゅ♡


 リップクリームを塗り塗りする。


 わたしにも、理性は、あったようだ。まだ。


「プルプルになったぞ……」


「そうねぇ、よかったわねぇ、んふふ……」


 そしてそのまま、肩をもみもみしてあげる。


「ドルチェ……ねむいぞ……」


「いいのよ、寝ても、おねんねしまちょうね?よちよち」


「ドルチェ……赤ちゃんじゃ……ないぞ……すぅ…すぅ……」


「んふふ♪寝ちゃった♪」


「……終わりなのです?」


「んー、もうちょっと」


 もみもみ。


 気持ちよさそうに寝ているドルチェのお手手をとって、追いマッサージをしてあげる。気持ちよさそうな反応だけが返ってきた。


「浮気なのです……」


「ちがうわよ〜、わたしは2人とも大好きなのよ?」


「それを浮気っていうのです」


「なぁに?アウルムちゃんもやってほしいの?もちろんいいわよ♪」


「そんなこと言ってないのです!」


「あら?も〜、ドルチェがおねんね中なんだから、おっきい声はだーめ」


「むー……」


 アウルムちゃんはジト目を続けていたが、ドルチェのマッサージのあと、膝の上に乗せて、持っていた本を読み聞かせてあげたら機嫌を直してくれた。


 わたしとしても、膝の上に乗ってもらうと、うさ耳の感触を顔で味わえるので幸せだ。


 この日、また新たなケモ耳幼女のグルーミングを堪能することができ、大きな満足感を得ることができたのだった。


 ハマりそう……こんな癒されることハマりそうだわ……


 わたしはベッドに寝転びながら、ひたすらにそう思うのであった。

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