第36話 いぬ耳幼女に可愛い衣装を

 ルビーを大量に掘った後、ベスティーアの扉を開き、ベルルクの採掘場に戻ってきた。


「あら?またいる……」


 わたしたちの帰りを待ち構えていたように、ミニゴーレムが2体、そこにいた。ゆっくりとこちらに近づいてくる。


「がるる……」


「わたしが戦うわよ?」


「ドルチェだって倒せるぞ!ガァ!」


 言いながら、四つん這いでかけていき、ミニゴーレムに爪をたてる。


「ああ!痛そう!えい!」


 わたしはもう一体のミニゴーレムを倒して、すぐにドルチェの元に駆け寄った。


「怪我してない!?」


 ドルチェのお手手を確認する。ちっちゃくてぷにぷにだ。なのに、あんな石の塊を引っ掻いたわりに怪我がない。


「大丈夫なの?」


「大丈夫だぞ!ドルチェは強いんだぞ!えっへん!」


「そ、そう?ならいいけど……心配だから急に戦ったりしないでほしいな?」


「ご主人様のことはドルチェが守ってあげるぞ!」


「んー?」


 いまいちわたしの言いたいことが伝わってないようだ。


「犬っころには難しい話なのです」


「なんだと!バカうさぎ!ドルチェはドルチェだ!犬っころじゃないぞ!」


「またバカって言ったです!アウルムは賢いのです!訂正するのです!」


「はいはい、まぁまぁ、よちよち」


 睨み合う天使たちの頭を撫でてなだめる。


 それにしても、今まで出てこなかったミニゴーレムが2日連続で2体も……なにかの偶然かしら?

 考えていても答えは出ないので、採掘場を出ることにした。



 とりあえず採掘ギルドに戻り、ルビーを50キロほど納品してみると、金貨80枚になった。全部Sランクだったようだ。


 通行税15枚をひいても、65枚の儲け、たった1日ですごい成果である。


 わたしたちがルビーを売却したあと、カウンターの後ろの掲示板を見ると、ルビーの相場が少し下がった

 ルビー(Sランク):1キロ、金貨1.6枚から金貨1.4枚への減少。やはり、流通量が上がれば、相場は下がる。


 予想通りではあったが、あまり大量に納品するのは避けた方がいいな、と再確認することができた。



 それからのわたしたちは、週に3日、採掘場に潜ることにして、残りの4日はのんびり過ごすことにした。


 あまり頻繁に採掘場に潜るのも疲れるし、鉱石の流通量を増やしすぎるのもまずいと判断してのことだ。

 決して、自堕落に過ごしたいからじゃない。……決して違う。


 そうそう、お休み期間を設けたタイミングで、ドルチェの衣装を新調した。いつまでもTシャツ、短パンでは味気ないし、ドルチェくらい可愛い女の子なら、もっと可愛い服を着るべきだからだ。



-ベルルク洋服店-


「わふん……ご主人様……これ、ふりふりすぎないか?」


「そんなことないわ!最高にかわいいわよ!」


 ドルチェのために選んだ服は、不思議の国のアリスを意識したメイドさんみたいな服だった。


 白いエプロンに水色のインナーで、胸元には細い黒リボンを結んである。


 活発なドルチェのために長袖ではなく半袖にしていて、動きにくいという要望もきいて、短めのスカートにした。動き回ってすぐパンツが見えるのでスパッツは必須だ。


 茶色の髪の毛には、ドーナツのヘアピンをさして、可愛く飾っている。ドルチェの髪は、肩くらいまでの長さで、後ろ髪で色々ヘアーアレンジしようと思ったのだが、嫌がられたので、ヘアピンだけはつけさせてもらった。


 靴は最初、パンプスを履かせたのだが、「走りにくいぞ!」と怒られてスニーカーで妥協した。


 まぁ、服は可愛い系だから、スニーカーだけちょっと浮いてるけど、全体的にはすごく可愛く仕上がったらから最高だ。


「犬にも衣装なのです」


 わたしがずっとドルチェに付きっきりだったのが面白くなかったようで、アウルムちゃんがそんなことを言う。


「それどういう意味だ!ドルチェのことバカにしてるのか!」


「そんなことないのです」


「まぁまぁ2人とも、並んでこっち見て?」


「なんなのです?」


 うさ耳幼女と犬耳幼女を並べてこっちを向かせる。


 アウルムちゃんは白ベースのさくらんぼ柄のワンピース、ドルチェはアリス風のメイド服、素晴らしい、もふもふ美幼女たちが同じ空間に存在していた。


 並べるとその尊さは天にものぼるのだ。


「と……尊い……尊死しそう……」


「……」

 こくこくこくこく!


 隣の店員さんも激しく頷いて、わたしと一緒に2人を崇めていた。同好の士であった。



 まぁ、そんなイベントもありつつ、わたしたちは、ベルルクで1ヶ月ほど過ごした。


 週に3回、1日50万近くかせげるので、1ヶ月で、金貨が600枚ほど増えることとなる。


 ミラヴェルクに行くと、なぜか帰り際にはミニゴーレムが必ず姿を現していたが、あまり気にせずに倒してきた。


 こうしてベルルクで過ごしているうちに、わたしたちは、こう呼ばれるようになった。



「おい……あれが例のSランクハンターだぜ……」


「マジかよ……あんな可愛い女の子たちが?うそだろ?」


「ウソじゃねーよ……俺、後ろで見てたからよ……鉱石全部Sランクだった……どうやってるんだろうな……」


「そりゃあ、あのオーダーウルフが優秀なんじゃねーか?」


「いや、あのうさぎの亜人の子もすげーんだ、魔法でどんな重い鉱石も軽々運んじまう。採掘効率もすげぇってことさ……」


「へぇぇ……」



 採掘ギルドに鉱石の買取をお願いに来たら、周りからヒソヒソと噂されているのが聞こえてきた。


 やばい……目立ち過ぎただろうか……


 一応、鉱石の相場が崩れないそうに、売る鉱石の種類を調整してきたつもりだったのだが……いや、そうことじゃないのか、さっきの話からすると。


 そんな不安を感じていると、受付のバッファローお姉さんから声が掛かる。


「フランさん、それにアウルムちゃんもちょっといいでしょうか?」


 カウンター越しではなく、わざわざわたしたちの前までやってきた。なんだか嫌な予感がする。


「あはは……なんでしょう?」


「ちょっと、別室でお話ししたいことがあります。ギルド長から」


「ぎ、ギルド長?えーっと……わたしたち、なにか悪いことしましたっけ?」


 わたしは、身に覚えがありまくりなのに、すっとぼけた。


「いえいえ、悪い話じゃありませんよ。とにかく、来ていただけませんか?ギルドにとっても、フランさんたちにとっても、win-winな話です」


「ほほう?」


 そう言われたなら、ついていくしかない。なんだか、儲け話の匂いがするわ。

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