第32話 ミスリルで大儲け
「本日の買取額は、金額35枚になります」
「え?」
わたしは、採掘ギルドのカウンターにならんだ大量の金貨に呆然としていた。
綺麗な金色のお盆に、35枚の金貨が並んでいる。つまり35万だ。
「こ、こんなに?」
「ええ、今回はミスリルの原石がありましたので。おめでとうございます」
「え、え?ミスリルってそんなに高いんだ……あの、買取の内訳って?」
「はい、こちらになります」
お姉さんから、買取額のレシートのようなものを渡された。
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ミスリル(Aランク):5キロ、金貨29枚
エメラルド(AからCランク):50キロ、金貨6枚
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「ミスリル……たっか……」
「すごいのです……」
「と、とりあえず、金貨の収納お願いできる?」
「はいなのです……」
アウルムちゃんに金貨を渡す。いつもの宝箱にしまってもらった。
「……それにしてもすごい魔法ですね。それがあれば、一日中掘り続けても1往復で良さそうです」
「え?ああ、そうですよね」
バッファローお姉さんがアウルムちゃんの収納魔法を興味深そうに見ていた。
「他の人は何往復もされるんですか?」
「ええ、鉱石は重いですしね、一度に運べる量は限られますから」
「そりゃそっかぁ……それにしても……1日でこんなに稼げると……金銭感覚狂いそう……」
「あはは……ミスリルを見つけた人はみんなそう言いますよ」
「てことは、ミスリルってすごくレアなんですか?」
「ええ、今回のようなAランクの原石となると、次にお目にかかるのは1ヶ月後くらいですかね?」
「なるほど……」
「だから、採掘初日でミスリルを見つけたフランさんはラッキーガールということです」
「はは……それを言うならラッキーオーダーウルフですよ。ねぇ?ドルチェ?」
「わんわん!」
「ふふ、そうですね。とてもラッキーなオーダーウルフさんです。……でもですね、フランさん?」
「え?はい」
なんだか、バッファローお姉さんに真剣な顔をさせる。
「ミスリルというのは本当にレアで、なかなか掘れるものではないということ、重々理解してください」
「あ、はいー?」
同じことを繰り返し言われ、何を言ってるのだろう?と首を傾げる。
「くれぐれも、オーダーウルフさんに、ミスリルだけを探せ!なんて言わないでくださいね?」
「ふむ?でも、効率を考えると……そっか、そこまでは嗅ぎ分けられないんですね?」
「その通りです。オーダーウルフさんたちはレアな鉱石を見つけることはできますが、種類までは特定できないんです。そう説明しても、低ランクの鉱石が出続けて、オーダーウルフさんのことをぞんざいに扱う人がたまにいるんです。そういう人は見つけ次第、ギルドの方で対応させていただいています」
ふむ、つまり、かわいいオーダーちゃんを虐待するようなクズは処罰される、ということね。好感しかない。当然だ。
「わかりました。ちなみにわたしはドルチェにメロメロなので!大丈夫です!」
「わんわん!」
わたしは、ドルチェを抱き上げて、わたしたちのラブラブっぷりをお姉さんに見せつけた。
「ふふ、たしかに、フランさんなら大丈夫そうですね。ですが、儲けに目がくらまないように、くれぐれもご注意を」
ぺこり。
お姉さんが丁寧に頭を下げたので、カウンターを後にする。
ギルドの外に出て、暗くなりつつある空を見て考えた。
たった1日で金貨35枚、たしかにこんなに稼げたら、金に目がくらむ人が出てきてもおかしくない、と思った。
そして、これが大きなビジネスチャンスであることも実感する。
もっともっと上手くやれば、大儲けできる気がした。
だってわたしには秘策があるから……
「フランお姉さん?」
「え?なぁに?アウルムちゃん?」
「ご飯いかないのです?」
「わふん?」
わたしがなかなか動かないので、2人に首を傾げられてしまった。
「ああ!そうね!いきましょいきましょ!ちょっと考えごとしてて!今日はドルチェの歓迎祝いもかねて豪華にいこうかしら!」
「わんわん!」
「贅沢はダメなのです!」
「グルル……」
「はいはい、ケンカしないの。今日だけ今日だけだから、あ、ミスリルが出た日だけ出た日だけだから」
「そ、それなら……まぁ……」
相変わらずしっかりしたうさ耳ちゃんだ。でも、そんな子を適当に説得してしまう悪い大人なわたし。
今日はテンション上がってるし!ちょーっとだけ美味しいもの食べたっていいよ!うん!いいと思う!
そして、わたしたちはベルルクのちょっといい洋食屋さんを目指すのであった。
これからのベルルクでの毎日が楽しみである。
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