第30話 採掘許可証の発行

-翌日-


「じゃあ、今日は採掘ギルドに行って!道具を揃えてレッツ採掘よ!」


「わふん!」


「はいなのです!」


 わたしの号令を聞き、ドルチェとアウルムちゃんが元気に返事をしてくれる。


 まだまだ仲良しとは言えないけど、歪み合うことは少なくなった2人と一緒に、わたしは採掘ギルドに向かうことにした。



-採掘ギルド前-


「はぁ……はぁ……」


「なのです……」


「わふん?」


 わたしとアウルムちゃんが、地獄の階段のぼりでくたくたになってるのに対して、ドルチェは平気そうな顔だ。体重が軽いからだろうか。もしくは魔獣だからか。


「ふぅ……まずは採掘許可証を発行してもらいましょう」


「わふん!」


 息を整えてから受付へと向かう。今日も今日とて混み合っていて、5つある列の4番目に並んだ。

 まもなくして、わたしたちの番がやってくる。


「あら?昨日ぶりですね。こんにちは」


「あ、こんにちは」


 受付を担当してくれるのは、昨日と同じバッファローお姉さんのようだ。


「またいらしたってことは、オーダーウルフさんと契約できたんですか?」


「はい!それはもうキュートな子と!この子です!」


「わん!」


 ドルチェを抱っこして見せると、バッファローお姉さんに向かって挨拶してくれた。


「うふふ、良かったですね。じゃあ、採掘許可証を発行しますか?」


「はい!お願いします!」


「わんわん!」


「それでは、この用紙に名前の記載と、オーダーウルフさんの拇印を、あと発行時の預かり金として金貨5枚をお預かりします」


 ということで、わたしは言われた通り名前を書き、ドルチェに肉球ハンコを押してもらい、金貨をお姉さんに渡した。


「たしかに。こちらがフラン様の採掘許可証になります」


 渡されたのは、青色に輝く宝石、500円玉くらいのサイズで、宝石にはピッケルのマークが彫られていた。


「へー、綺麗ですね、これが採掘許可証」


「ふふ、ですよね、男性の方はそういう反応をしてくれないので、なんだか嬉しいです」


「あはは。えっと、それで、この許可証を見せれば採掘場に入れるんですか?」


「ええ。基本的には、扉が開いている採掘場にはどこからでも入れます。ただ、日によって解放する採掘場が変わりますのでご注意ください」


「ほほう?なんで入れる採掘場に制限を?」


「それは、鉱石の採掘量をコントロールするためですね。同じ鉱石ばかりが彫られすぎて物価が大きく変わるのを懸念しての対策です」


「ふむふむ。じゃあ、採掘場ごとに取れる鉱石が違うんですか?」


「ええ、取れやすい鉱石が違ってきます。そのあたりについては、入り口付近のあちらの掲示板に記載されています。今日はどこの採掘場が解放されていて、そこではなにがよく取れるか、ということが」


「わかりました。見てから出発しようと思います!あとは道具ですね。わたしくらいの普通の女子でもピッケルって振れますかね?」


 そう、今更聞いておいてなんだが、それが1番の懸念事項だった。

 オーダーちゃんとの契約に夢中で、すっかり頭の片隅にいっていたが、せっかく鉱石を見つけても掘る力がなければなんの意味もない。


「え?あれ?知らずに登録したんですか?ま、まぁいいんですけど……はい、ピッケルには、岩石を簡単に掘れる魔法が付与されているので、女性や体が小さい方でも大丈夫ですよ」


「へー、魔法ってやっぱり便利ね」


「アウルム、その魔法気になるのです。魔法使いの血が騒ぐのです」


「え?あなた魔法使えるの?」


 バッファローお姉さんがアウルムちゃんをカウンター越しに覗き込む。


「はいなのです!アウルムはコーラル族随一の魔法使いなのです!」


「へー、魔法使いの人ってはじめてみたわ……」


「あれ?でも、ピッケルには魔法が付与されてるって……」


「ああ、ピッケルの魔法付与は王都の宮廷魔道士さんがやってるらしいので、実際に魔法を使っているところは見たことはないんですよ」


「へー?」


 宮廷魔導士、そんなのがいるんだ、と思ったが本題からだいぶ逸れた。今はピッケルの話、魔法付与済みのピッケルについてだ。


「えっと、そのピッケルってどこで買えるんですか?」


「ギルド内で売ってますよ、一本でいいですか?」


「これは買い取りなんですよね?」


「レンタルもできますよ。レンタルだと1日銀貨1枚、買い取りだと金貨10枚です」


 ふーむ、毎日採掘場に行ったとして、レンタルだと1ヶ月で金貨3枚くらいか……3ヶ月以上ベルルクにいるなら買取でもいいけど、そんなに滞在するかな?疑問だ。


「じゃあ、とりあえずレンタルで」


「かしこまりました。少々お待ちください」


 バッファローお姉さんが立ち上がり、掲示板の裏に引っ込む、そしてピッケルを持って再登場した。


「何日レンタルしますか?」


「10日でお願いします」


 言いながら金貨を1枚差し出した。


「たしかに、こちらにサインを」


「はーい」


 そしてピッケルレンタルの申込書にサインをして、意外と軽いピッケルを持って受付を離れた。


 みんなで入り口近くの掲示板に近づく。


「ふむふむ、今日は10ヶ所ある採掘場のうち、4つが解放されているのね」


 掲示板には、採掘場の名前と場所、取れる鉱石の種類が書かれていた。そして、その1番左端に、解放中、閉鎖中のプレートがセットされている。毎日変わると言っていたので、あのプレートは取り外し式なのだろう。


 例えば、1番上の採掘場の記載は以下のような感じだ。


---------------------------------------------------------------------------------

【解放中】

 採掘場①

  場所:1番地区Bゾーン

  主要鉱石:ミスリル、ルビー、エメラルド、鉄鉱石

---------------------------------------------------------------------------------


 1番地区Bゾーンとはどこのことだろう?と疑問に思っていたら、すぐ隣の大きな地図で疑問は解消された。


 ベルルクの町を上下、左右に区画分けしているらしく、ギルドがある1番高いところ周辺が1番地区、正門がある1番低いところは7番地区というらしい。そして、縦に割って、左側がAゾーン、真ん中がBゾーン、右側がCゾーンだ。


 つまり、採掘場①は、1番高いところの真ん中あたりにあることになる。


 地図を見ると、ギルドのすぐ下に扉のマークが書かれていて、①と記載がある。あそこが採掘場①なんだな、とすぐにわかった。


 今日解放されているのは、他にも3つ、あるにはあるが……


「んー、1番近い採掘場でいいよね?階段の上り下り大変だし」


「アウルムは賛成なのです!」


「わん!」


 2人の同意を得れたので、採掘場①に向かうことにした。

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