第27話 採掘ギルド
「はぁ……はぁ……やっとついた……」
「つかれたのです……」
町の1番上にあるという採掘ギルドを目指して、100段を超える階段を上ってきた。わたしたちは、くたくたになりながらも、なんとかギルドの前までたどり着く。
採掘ギルドは、本当に町の1番上に作られた建物で、同じ高さには他の建物が1つもない。
つまり、ここに向かうにつれて、町がすぼまっていたのだ。ようするに、この建物は、ピラミッドの頂点に位置することになる。
採掘ギルドの建物には、ギリシャの神殿みたいな柱が何本もたっていて、でも、その柱は黒い鉱石で作られているので神聖な印象よりも無骨な印象が強い。そして、何本も立ってる柱の内側は、山の中に続いている。この建物も洞窟ハウスのようだ。
わたしたちは息を整えてから、その建物の中に入って行った。
「中もすごく広いのです!それにひんやりしてて、すこし寒いのです」
「だね〜、上着羽織る?」
「まだ大丈夫なのです!」
アウルムちゃんのいう通り、建物中は少しひんやりしていた。鍾乳洞に入ったような冷たい空気が流れている。
それもそのはず、建物の中は、大穴をくり抜いたような空間で、壁や天井は岩肌のままだった。
天井には、氷柱型の水晶がぶら下がっていて、優しい光を放っている。照明器具のようだが、あそこから水滴が垂れてこないか心配になった。
垂れてきて首筋にでも当たったら、めちゃくちゃ冷たそうだ。
「あっちが受付なのです!」
アウルムちゃんが指差す方を見ると、石の柱に挟まれた石のカウンターを見つけることができた。
カウンターには、5人の受付嬢がお客さんの相手をしている。それぞれ、4、5人の列ができていた。
「そうね、いってみましょ」
わたしたちはカウンターの1番空いてる列に並んで、順番を待つ。10分くらいでわたしたちの番になった。
「こんにちは、採掘許可証の申請でしょうか?」
「はい。そうなんですけど、今日この町に来たばかりで、どういう仕組みなのか詳しく教えてもらえますか?」
「わかりました。ベルルクにようこそ」
にっこりと微笑むお姉さん、この人の頭にはバッファローの角のようなものがついていた。そしてオッパイが大きい。ここには牛系の亜人の人が多いのだろうか。
「それではまず、このベルルクの簡単な歴史と採掘場について、説明します」
「お願いします」
「なのです!」
「ふふ。それでは説明しますね」
バッファローお姉さんは、元気なアウルムちゃんを見て少し笑顔を見せてから説明をはじめてくれた。
「ベルルクは、多種多様な鉱石が採掘できるリトス山脈に食い込むように建てられた町です。
このような形で町を作った理由としては、貴重な鉱石は山の中腹で見つかることが多いため、採掘場への入り口も山の中腹に作ろう、そしたら。その周りに家も作っちゃおう、そういう思想で作られたそうです」
「ふむふむ」
「そして、この採掘場には、どなたでも入場できる制度を整えています。こちらにも理由があります。
なぜなら、レアな鉱石を見つけるには、オーダーウルフのパートナーが必須なのですが、オーダーウルフさんたちは気まぐれな子が多く、誰とでも契約するというわけではないのです」
「へー。じゃあ、オーダーちゃんたちを連れてる人は、この町の人じゃないってことですか?」
「いえ、この町の人もいるのですが、旅人も多く在籍しています。ただ、旅人の方が町を離れる場合は、オーダーウルフとの契約が解除となるケースがほとんどなので、パートナーと離れたくなくて、永住を選択される方も沢山いますけどね」
「じゃあじゃあ、オーダーウルフさんとは、この町の中だけでの契約になるのです?」
「そうですね。そのあたりもオーダーウルフさんたちの気まぐれなんですが、この町から離れる子はあまりいないようです」
「わかったのです!」
「ですので、オーダーウルフさんに気に入られて、パートナー契約を結べた人には誰でも採掘許可を与えて、レア鉱石を掘ってきてもらおう、それを買い取れば町も発展する、というのがベルルクの考えになります」
「なるほど、町の人だけで採掘権を独占しようとしても、オーダーちゃんたちに好かれる人が少ないと効率が悪いから他所者も使おうってわけね」
「ふふ、まぁ、有り体にに言えばそうなりますね。では、オーダーウルフさんたちとどう契約するかについてですが」
「それが一番気になってました!」
「ふふ、もうこれは相性が合うかどうか、それだけですね。オーダーウルフさんたちが集まる集会所に赴き、気に入られると向こうから近づいてきてくれます。そして、お互いに契約したいと思えば、自動的に契約完了となります」
「へー!楽しみ!だけど……誰にも気に入られないってこともあるってことですね……」
「はい、そういうことも多々あります。確率的には7割くらいの人は失敗しますね」
「うわっ……結構シビア……」
「ですね、こればっかりは運になります。なので、運良くオーダーウルフさんと契約できたら、次は採掘ギルドに来てください。登録料をいただいて、採掘許可証を発行致します。金額は金貨5枚になります」
「ふむふむ」
「ちなみに、これは町を出るときに返却されますので、お預かり金、みたいな感じですね。
採掘許可証を受け取ったら、あとはピッケルなどの道具を自費で揃えていただき、採掘場へお越しください。採掘場でオーダーウルフさんたちに導かれて鉱石を探し、採掘した鉱石をギルドに持ってきていただければ買い取らせていただきます。鉱石の種類によって買取金額は変わっていて、時価はそこの掲示板に毎朝掲示されることとなっています」
言いながらお姉さんは、カウンターの後ろ、少し高いところにある掲示板を指差した。
大きな掲示板だ。5人の受付嬢が並ぶカウンターと同じくらいの横幅があり、縦にも、その半分くらいは伸びている。
掲示板は黒板になっていて、鉱石ごとの買取金額が、チョークで書かれていた。
例えば、【ルビー(Sランク):1キロ、金貨1枚、銀貨2枚】というような表記がされていた。
「Sランク?」
わたしは、掲示板で気になった点を口にする。同じルビーでもAランク、Bランクとランクがあり、下がるにつれ金額が下がっていってるようだった。
「ランクというのは、鉱石の純度とか、透明度を表しています。ようは綺麗だったり、密度が高いものは、価値も高いということです」
「なるほどなるほど」
「アウルム……難しくなってきたのです……」
「ふふ、説明は以上ですよ。とにかく、オーダーウルフさんに認められたら採掘許可証を取得し、道具を揃えて採掘場にレッツラゴーということです。レアな鉱石を見つけたらウッハウハ、という感じですね」
「わかったのです!すごくわかりやすいのです!」
「ふふ、ありがとうございます」
「なるほど、だいたいは理解できました。じゃあ、まずはオーダーちゃんたちの集会所ですね。それはどこにあるんですか?」
「町の1番下ですね。正門あたりになります」
「1番下……」
わたしはさっきのぼってきた階段を思い出し、ゲンナリする。あれを往復するのか……
「あはは……気持ちはわかりますが、ベルルクで過ごすには階段とは付き合っていかなければなりません。そうですね、えっと……ダイエットになるので健康にはいいんですよ!」
「あはは……」
バッファローお姉さんが力説したら、ブルンとオッパイが揺れた。
わたしはそれを見て、そんなけしからんものをぶら下げて階段の上り下りは大変だろうに……とか考える。
「えーっと……まずは、オーダーちゃんたちの集会所に行ってきます。もしパートナーが見つかったら、改めてお願いします」
「ええ、こちらこそ。かわいいパートナーが見つかることをお祈りしています」
わたしたちは、バッファローお姉さんに手を振って採掘ギルドを後にする。
外に出て下に降る階段を眺めた。
何段あるかわからない……200か、300か……検討もつかないほどの階段が建物の間をぬって眼下に広がる。
「オーダーウルフさんと契約できるのか楽しみなのです!」
「そうね〜。でも、この階段をくだって、また上ってくることを思うと……」
「たしかになのです……アウルム、くたくたになりそうなのです……ごきゅり……」
アウルムちゃんが喉を鳴らす音が聞こえた。わたしも同じ気持ちだ。ダイエットどころか筋肉痛になりそうだ。
「と、とりあえず集会所に行って、ギルドに来るのは明日でもいいかもね」
「そ、それは名案だと思うのです……」
「あはは」
わたしたちは笑い合ってから、のんびり階段を下ることにした。
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