第15話 うさ耳幼女とお風呂
ゴブリンさんとの初コミュニケーションに成功したわたしたちは、夕食を食べてから、その足で銭湯までやって来ていた。
昨日は、お風呂なしで身体を拭いただけだったので、1日ぶりだ。
「お風呂!お風呂入っていいのですか!?」
先頭の前にきて、アウルムちゃんが驚いた顔を見せる。
「ん?もちろんよ、一緒に入りましょ」
「久しぶりなのです!湖での水浴びはもうイヤだったのです!」
うう……不憫な子……アウルムちゃんはわたしが幸せにするからね……
わたしは、うるうるしながら、不憫なうさ耳幼女の手を引いて、銭湯の中に入って行った。
「まいどー、子どもは大銅貨3枚ねー」
「アウルムは大人なのです!」
「……」
アウルムちゃんが受付のにいちゃんを威嚇していた。そしてにいちゃんは無視だ。ダウナーなにいちゃんなのでしょうがない。
「はいはい、大丈夫だからね。はい、大銅貨6枚、と2枚、タオルありので、お願いします」
「あいよー」
「アウルム大人なのです!」
「そうねぇ、アウルムちゃんは大人よねぇ」
言いくるめながら脱衣所につれて行って、服を脱がせてあげて一緒に浴室に入る。
洗い場で髪の洗いっこなんかして、キャッキャウフフしてから湯船に浸かった。楽しすぎる。
「あぁ〜……幸せ〜」
「なのです〜……やっぱりお風呂は最高なのです〜」
わたしの幸せ発言は、アウルムちゃんがいることが8割くらいを占めていたのだが、まぁ、わざわざ言わないでおくとしよう。キモすぎるから。
「それでフランお姉さん〜」
「ん〜?」
「結局、あの土地は買うのですか?」
「ん〜、たぶん買うと思うけど、その前に色々確認と準備がいるからね〜」
「そうなのです?ところで、あの土地を買ってなにをするのですか?」
「価値を上げてから売ろうかと思ってるのよねー。あの土地は今はすごく安いでしょ?」
「はいなのです」
「理由はなんでだと思う?」
「臭いからなのです!」
「正解。じゃあ、あのあたりが臭くなくなったら土地の価値はどうなると思う?」
「んー?高くなるのです?」
「そう!正解!アウルムちゃんは賢いわね〜」
「えへへ〜、褒められるの好きなのです」
ニコニコしてる隣のうさ耳ちゃんを眺めながら、わたしは前世のことを思い出していた。
♢♦♢
「がはは!この土地がね!5倍の値段で売れたんだよ!すごいよねー!」
「そうですね、さすが成宮様です」
「だろうだろう!で、どうして値上がりしたか聞きたいかい?」
「………はい。ぜひ教えていただけますか?」
「それはねー!隣のラブホが取り壊されたからだよ!」
「ほほう?」
「嫌悪施設ってやつだね!多くの人はラブホの隣に住みたくはないよね!知り合いの事業家が、そこのラブホ所有者でさ!取り壊して駐車場にするから、周りの土地買っとけばって教えてくれて!ああー!また儲けてしまったよ!がはは!」
「……おめでとうございます」
♢♦♢
わたしがやろうとしてるのは、まさにこれだ。
前世では嫌悪施設がラブホで、この世界ではゴブリンたちの住処。
ゴブリンさんたちを駆逐するなんて野蛮なことはしなくないので、嫌悪施設じゃなくすればいい。
つまりは、インフラを整えて、悪臭の元をたち、ゴブリンさんたちに清潔な生活をしてもらう。ということだ。
「でもでも、臭くなくするのには、どうするのです?」
「それはね〜、町長さんに相談しようかなぁって思ってるの」
「なるほどなのです?」
問題は、町長がどんな人物なのか。
それと、ゴブリンさんたちが洞窟暮らしを止めることに抵抗がどれほどあるのか、ということだ。
まずは、明日あたりにでも町長さんに会いに行ってみようと思う。
「アウルムちゃん、お風呂は満喫できた?」
「はいなのです!とっても気持ちよかったのです!」
「じゃあ、そろそろ宿に帰ろっか」
「今日も、ベッドで寝ていいのですか?」
「もちろんよ、一緒に寝ましょ」
そしてモフモフさせてください。
「嬉しいのです!ありがとなのです!フランお姉さん!」
「いえいえ、こちらこそ、んふふ……」
「こちらこそ?」
「あ、なんでもないわ、あがりましょうか」
「はいなのです!」
そしてわたしはアウルムちゃんの身体を拭いてあげて、今日も一緒に眠るのであった。
もふもふ幼女はポカポカあったかくて、最高の抱き枕であった。
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