〜ペレク家編〜

第34話 3年後




「……」



ここ、イメドリア王国の辺境と言っても過言ではない場所レステンクール領。


そこのとある森で1人の少年が眠っている。

原作「ヴァニティファロス」の悲劇の悪役とも呼ばれる男であり、そして齢10でありながら混沌の魔女を手懐けた者

アクセル・アンドレ・レステンクールだ


「お兄様〜」

そこに1人の少女がアクセルを探していた


「……あ、見つけましたよお兄様…って眠っているのですか?」


「…ん?ソフィアか?」


「おはようございますお兄様。お目覚めになられましたか?」


この少女の名は

ソフィア・アンドレ・レステンクール

ここレステンクール領を治る領主の娘であり

原作のメインヒロインの一人

そしてアクセルの実の妹である。


「あぁ、少しリラックスしたかったからな。

ここなら良い気分転換ができると思ったんだ」


「お兄様、お気持ちは分かりますがここは魔物がいないとはいえ領地から離れてる場所です。万が一のことがあれば危険ですよ」


「…お前も一緒に行きたいということか?」


「まぁお兄様!ソフィアが何も言わなくてもお分かりなのですね!これはもう心が通じ合ってると言ってもおかしくないですね!」


「あはは…そりゃ、あれだけ過ごしてるんだからな……」


アクセルは過去の事を思い出してるのか、目を逸らしながら呟く。



転生してから3年の月日が経ち

アクセルとソフィアは13歳(アクセルは厳密には15歳)になっており、ともに美少年、美少女と呼ばれてもおかしくない程に成長していた。



「そういえばソフィアはなんで俺を探してたんだ?流石に俺に会いたかったわけではないだろう?」


「むぅ、甘いですよお兄様。私はいつでもお兄様にお会いしたいです……ですが、今回は少し違いますね」


「ユニーレさんがお兄様のことを探していました。それで私も頼まれてお兄様を探してたんです」


「あぁそういうことか」


アクセルは立ち上がって背伸びをして身体をほぐす。


「そういえばもうそんな時間だったな」


「なにかあるのですか?」


「いつも通り、魔法の修行だよ」


「そうなのですか?それならお兄様の勇姿を確認しなければ」


「ソフィアは飽きないなぁ」


「ふふっお兄様ですもの」


そんな会話をしながら2人はユニーレと呼ばれる女の場所へ向かう。


レステンクール家が崩壊する運命の年。

その運命を捻じ曲げんとする1人の人間が

今、動き出した。






「あら、やっときたわね。遅いわよアクセル」

そう言ってきたのは魔法の師匠的な存在、ユニーレだった。

魔法自体はローレンスの方が上手だが、こっちもこの世界では最高潮だ。


「悪い、少し森で寝てた」


俺はさっきまで待っていたのだろう彼女に苦笑しながら謝る。


「一応貴方のためにやってるのだけど?」


「いやほんとに悪かった。昼寝するのがあれだけ気持ちいいとは思わなくてな」


あと少し怒り気味になってる。流石に俺は悪い事をしたと思ってる。これ以上機嫌を悪くさせないようにすぐに準備をする。



「まったく……ソフィア、貴方もそこで見てないで自分の課題に取り組みなさい。じゃないとさらにきつい内容にするわよ?」


「は、はいっ!今取り掛かります!」


どうやらソフィアもユニーレには頭が上がらないらしい。それもそうだ。ここまでみっちりと魔法を鍛え上げられてる、それも厳しくだ。


そんな相手に反抗的な態度を取れるわけがない。事実この時のユニーレには俺も頭が上がらない。


「…さぁ貴方の魔法の実力がどれほど上がったのか…確かめてあげるわ」


するとユニーレが準備万端と言わんばかりに魔法や物体を用意する。


「…魔法はともかく異能を使うのは違うんじゃないのか?」


「そうかしら?でも今の貴方を見ると……

期待しちゃうもの」


目が変わる、先程まで怒りに満ちていた目が戦いを楽しむ狂戦者の目に。俺もその期待に応えるように構える。



「…いくぞ」

その掛け声が合図かのように俺とユニーレは同時に魔法を発動する



「「劫火アグニ」」

シンプルに圧縮した炎の噴射。だが、その威力は炎魔法だけで見れば最上クラスの技、劫火アグニが当たった瞬間、魔法が混ざり合い爆発する。


煙が上がるとそこには構えたままのユニーレの姿がある。これは互角か?


「…ふふっやっぱりそうだわ。貴方、さっきの態度の割には隠れて凄い努力した?三年でここまで魔法の精度が上がるなんて本来ありえないもの」


だがよく見るとユニーレの掌が少し爛れてる。どうやら押し勝ったらしい。


「この日のために向けて俺も努力したからな。これぐらいはしないと」


「…私の勘は間違ってなかったということね」

瞬間、ユニーレの背後から魔法ではない物が飛んでくる。俺はそれを地面の土を利用して壁を張って防御をする。


土龍乱壁ランドウォール

地面から土で出来た龍のような生き物が俺を囲い、襲いかかる物から身を固める。


「…これも防ぐのね」

ユニーレは驚いてたと同時に興奮しているように見えた。

自分の得意分野である力も防いでくるのだから、驚くのも無理ないだろう。興奮するのはよく分からんが。


「あはは 貴方はいつも私の予想を超えてくるわ」

ユニーレは俺と最初に戦ったように

空を飛び、以前よりパワーアップした魔法と物体を出現させる。


「今回の縛りは魔法で攻撃することだけでいいわ。動いても構わないし、避けても構わない…この勝負の勝つ条件は……私を、楽しませることよ?」


その膨大な数の魔法と物体が雨のごとく俺に襲いかかる。動いていいと許可されたのでそのまま魔法と物体の雨に突っ込み最小限の動きで避け、当たりそうな魔法は相殺する。


そしてユニーレを捉えた時、俺は彼女に反撃をする。


光と闇の融合リオ・マヒナ!」

光でもなく闇でもない波動が彼女を襲う。

この魔法は概念的な物であり、魔法が当たろうとしても透過して絶対に当たらない。その魔法が当たる時は対象に触れた時だけだ。


「ぐっ…こんな魔法聞いたこともないわよ」

彼女が苦しそうに呻いている。それに見たことも聞いたこともない魔法なのか、驚きながらそんな言葉を漏らす。


「そりゃ、俺の作ったオリジナルの魔法だからな。知ってたりしたら困るぜ」


「…なるほど。ふふっもはやめちゃくちゃね。でもそういうのは嫌いじゃないわ」


すると彼女は攻撃を止め、新たな魔法を俺に浴びせにきた。


創樹の呻きオグロ=レイク

ユニーレが魔法を唱えた瞬間、下から大きな樹が出てきて、それが生き物のかのように俺に襲いくる。



「なっ!まるで生き物じゃねぇか!?」


「そうよ、さっきの魔法を参考にさせてもらったわ♪」


くっこの化け物…そう思い始める前に俺は目の前の魔法をどうにかしようとその魔法目掛けて攻撃をする。


獄炎の炎インフェルノ!」


さっきの劫火とは対照的に範囲攻撃に適した以前の戦いで打った魔法、獄炎の炎

それがユニーレの魔法に襲いかかる。

木は燃え移り、葉は炭になりそしてその規模がだんだんと大きくなる。

だが、一向に燃え尽きる気配がない。

違和感を感じよく見てみると……


「この魔法‥再生してる!?」


「正解よ。よく早く気づいたわね。そんな優秀な弟子で私は嬉しいわよ」


「くっ…だが、このまま押し切る!」


俺は気合いと根性で獄炎の炎の火力を引き上げる。するとユニーレは口を歪めて


「アハハハ!いいわよアクセル我慢比べということね?こういうのは普段しないけど、その勝負受けてあげる!!」


するとユニーレのボルテージが上がるように

彼女の魔法も性能が引き上げられる。

少ししか戦ってないはずだが勝負に熱くなったり、楽しんだり、そう思ってるのが原因で俺たちは周りが見えていなかった。



「お、お兄様!?ユニーレさん!?

そこまで規模を上げられると被害が!?」


空間結界は張っているが規模がデカすぎるせいで破れそうなってしまうのは

この時の俺達は知らなかった


その後、ソフィアに怒られたのは言うまでもない。





「それでユニーレ、今回はどうだった?俺的には中々だと思うんだが?」


俺はソフィアにこっぴどく怒られた後、魔法の評価を師匠ことユニーレに聞いてみた。

あんなにハイテンションだったんだから

少しは期待をしてもいいだろうと自負してるんだが…


「…そうね今回は貴方の勝ちよ。実際私も楽しませてくれたし、貴方の魔法の技術がここまで上がってるとは思わなかったわ」


おぉ…!魔法に関してマジで厳しいユニーレがここまで評価してくれてる。これほど嬉しい誤算はない……


「ただ、まだまだね。私を楽しませてくれたとはいえ、もっと伸びるはずよ。さっき戦った様子だと、私の魔法を全て撃ち落とすのは厳しそうね」


……まぁですよね。実際、俺もあれだけの魔法や物体を自分の魔法だけで撃ち落とすのは少し厳しい。ただこれに関してはユニーレも実力が上がってきてるということもある。まだこちとら発展途上なのにさらに魔法の最高潮並の実力

者も成長してるんじゃ無理はない。


「でも本当にこの短時間でよく成長したわね。師匠として鼻が高いわ」


「…そうか。ならその言葉は素直に受け取っとくよ。ありがとう」


俺はそう言うと、レステンクール領に向かう準備をする。


「今度はあそこかしら?」

どこに向かうのかが分かってるのにも関わらず、ユニーレは聞いてくる。


「あぁ魔法もいいが、も力を付けていかないとな。今回は合格でいいだろ?」


「えぇ、特別よ。行ってきなさい……ソフィアは駄目よ?」

すると俺の隣にいる妹はギョッとした顔をしてユニーレを問い詰める。


「そ、そんな…!?お兄様の勇姿が見れないなんて……」


「貴方もアクセルと比べても造作ないほど実力がだんだん身についてるわ。私も出来れば彼の戦う姿を見たいのだけど、それとこれとは別ね」


「ゆ、ユニーレさん……どうしてもですか?」


「えぇ、どうしてもよ。貴方には私の全てを教えるって約束したもの」

それが答えなのかソフィアはガクッと頭を落とし、ドンヨリとした空気を出して落ち込んでいる。


「うぅ……お兄様と離れ離れになってしまいます……」


その様子を見て流石に気の毒に感じたので少し助け舟を出すことにした。

「あ〜…今日最後まで頑張ったらソフィアのして欲しいことなんでもしてあげるぞ?」


「ほ、本当ですか!?」

するとさっき落ち込んでいたのが嘘みたいに俺に飛びついてくる。


「あ、あぁ。だから今日も頑張ってくれるとお兄ちゃん嬉しいな。それに頑張ってる子の方が俺は好きだぞ?」


「〜〜!!な、ならソフィアは頑張ります!さぁユニーレさん、早速始めましょう!こうしてる間も時間が勿体無いですよ!」


するとソフィアは早速ユニーレに始めるように促している。ユニーレはそのソフィアの態度に苦笑しながらも準備をする。


「あの子、普段も真面目で取り組んでくれるけど、貴方が言えばそれ以上ね。私が振り回されそうだわ」


「まぁソフィアの良いところだな。純粋な兄想いでその為なら人一倍頑張れる力がある」


と、分かってるかのように言ったのだが...何故かユニ―レにジト目をされてしまう。

たまにあるのだがなぜこのような目でみられなければならない?


「兄は兄でもあなたのためだって分からないのかしらこの子...」


「ん?」

何か言ったか、そう言おうとしてると、それを遮るようにソフィアが元気な声で俺に別れの挨拶を言いだした。


「ではお兄様。ソフィアは今日最後まで頑張らせていただきますので、お約束を忘れないでくださいね?」


「あぁ、ちゃんと頑張ったらな」


「はいっ....あと....他の女狐に惑わされてはダメですよ?」


....久しぶりに聞いた気がするよ、その言葉。

最近は落ち着いてきたと思ってたけど、どうやらまだ健在らしい。


ブラコンなのは分かっていたけど...いつになったらソフィアは兄離れができるのだろうか


そんなことを考えながらレステンクール領のとある場所に向かうのだった。





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