第31話 ジークリンデとの遠征
魔法の修行をしばらく行っていた頃、俺は今ジーク団長ととある所に遠征に来ていた。
普通ならこういう遠征の時は大勢の騎士が行くようなものだが、今回は俺とジークだけである。
今回の目的は近辺の村の調査だ。
最近、音沙汰もなく村が襲撃されたり村娘が攫われたりすることが多いらしい。
だから調査として父上ことマエルに頼まれたらしいが、あまりに大勢だと相手側にバレてしまうという可能性が出てくる。
そこでジークと信頼できる騎士を1人選んでその村に調査するということらしいのだ
それで選ばれたのが俺だということ。
新人さんを選ぶということでほんの少しジークさんにパワハラ上司の才能を疑ってしまう。
ちなみにユニーレやローレンスは連れてきてない。今回は特殊ということもあって2人を連れてきてない。ユニーレはソフィアの修行もあるということでなんとか納得させたのだが、ローレンスは置いてかないか?我を見捨てないか?と宥めるのに少し大変だった。
それで今は襲われたという村の状況を見ていたのだが…
「…団長これは…」
「……えぇ、どうやら想定以上のようですね」
その光景はまさに惨憺たるものであった。周囲の建物は無惨にも破壊され、今なお炎が立ち昇っている。瓦礫の中にはかつて村人だったであろう者たちの遺体が、無残に横たわっていた。
「遺体は成人した男性や老人しかいませんね…報告を聞いた通り女性や子供は攫われたと考えていいと思います」
俺が自分の考えを言うと団長もそれに賛成するように頷く。
「そうですね 状況から見てもそのように見解するのは間違い無いでしょう。まずは襲ったであろう者の手がかりを探しますよ」
そう言うと俺たちは死んでしまった人達を弔いながら手分けして村だった所の調査をした。
建物の中や畑、村の周辺を探しに回ったが、相当手練れなのか手掛かりになるものは見つかることが出来なかった。
「団長、僕の周りにはめぼしいものはなにも……団長?」
報告に行くと団長は地面を凝視している。おそらく俺の声は耳に入ってないのだろう。
俺も見てみるが地面にはなにもないように見える。一体何があるのだろうか?
「団長?団長〜!」
「…あぁすみませんアクセル様、どうでしたか そちらは?」
「特に何もありませんでした。それより団長は一体なにをみていたんですか?」
そう言うと団長は再び地面に視線を置きながら
「…おそらくですが、襲ったものであろう者の足跡が見つかりました」
「え?そこにですか?」
俺ももう一度地面を見てみるが、そこには特に変わりのない地面が広がっている。
ただジークが嘘をついてるようには見えない。
なので、少し魔法を使うことにした。
「虚無活性:
視覚を虚無力を利用して極限にまで高める。
すると、さっきまで普遍的な地面はどんどんなにかが浮かび上がってきて……
「…確かに足跡がありますね。これほど古い足跡だとおそらく相当後だと…この先の森まで続いてます」
俺が足跡を見ながらそのように答えると、ジークは俺を見て少し驚いてるように見える。
「…私のこと疑わないんですか?それにその口ぶりからすると…視えてるのですか?」
「え?…あぁ最初は確かに視えませんでしたが、団長が嘘言ってるとは思えないので少し魔法を使って視えるようにしました」
「…そうですか」
何故か団長は俺を可笑しな人だと言ってるかのように少し口を綻ばせながら見ている。なぜこのように見られなければいけない?
「森までの足跡は私でも視えませんでした……アクセル様、失礼ながら案内してもらえないでしょうか?」
「分かりました。では付いてきてください こっちです」
どうやら団長はそこまで視えなかったらしい。ただそれが普通だ。俺が魔法を使えないと認識出来ないものを普通に視える団長はおそらく視覚が鋭いのだろう。
そう思いながらも俺たちは古い足跡を辿って
森の中に入るのだった
◇
「そういえば団長、先ほどはなぜあのようなことを?」
俺は足跡を辿りながら聞いてみた。それを聞いたジークは少し苦笑しながら話し始める。
「実は私、普通の人よりも少し五感が鋭いんですよ。それでさっきみたいな足跡や古い痕跡も視えるんです」
「あぁ…もしかして」
「はい 普通の人には視えませんから、私がどんなに言っても最初は疑われるんです。酷い時には聞き入れない人も居たぐらいで…」
そうか 団長と普通の人だと認識が違ってくるのか。どんなに言っても疑われたり、信じられなかったりするから さっき聞いてきたのも俺が即時に信じ込んだのが異常だったからだろうな
「貴方で二人目ですよ 私の五感を信じてくれた人は」
「あ、やっぱり一人目は父上なの?」
二人きりということで少し砕けた口調になるが、まぁいいだろう。ジークもそっちの方が落ち着くのか少し雰囲気が柔らかくなったし。
「はい 私がどんなに言っても疑われ、信じててもらえない中 マエル様だけは私のことを信じてくれたんです……とても嬉しかった覚えがあります」
懐かしんでるのかジークは頬を少し染めながら微笑んでいる。相当嬉しかったんだろうな
「やっぱり ここに来たのも父上の影響かな?」
「あっ…その……はい その通りです…」
「あはは父上も罪深いお方だ。こんな美人さんのことを放ったらかしにしてるんだから」
「いえ……いいんです リアーヌ様と一緒に居られる時のマエル様はとても幸せそうですから。せめてその幸せを守らねば」
ジークは決意を固めるように、剣に力を入れていた。やっぱり優しい人だなこの人は 普通なら他人のために犠牲になんて出来ないのだから
「そっか ジークは優しい人だね。そんなジークならきっといい人が見つかるよ」
「アクセル様……私は別に誰かと婚姻を結ぶつもりは…」
「それならそれでいいさ でもジークには幸せになって貰いたいからね それぐらいは許してくれよ?」
「…貴方を見ているとまるでマエル様を見ているようです」
「僕を?アルマン兄上じゃなくて?」
「確かにアルマン様の方が似ているでしょうね…ですが……私には何故かアクセル様をマエル様と重ねてしまうんです」
「…私が辛い時に一緒に居てくれたのは貴方なのですから」
えっ?どういうことだ?とそんなことを聞こうとした時 突如としてこちらにナイフが飛んできた
「「!!」」
俺たちはそれぞれ自分に飛んでくるナイフを愛用の武器で打ち落とし ジークと背中合わせになる。
「ジーク…団長 どうやら僕たちは囲まれたようですよ」
「えぇ、そのようですね…今更なのですがアクセル様の武器は刀なのですね」
「まぁね こっちの方が色々と僕には扱いやすいようだし」
「そうですか…なら帰った後、少しお付き合いしてもらえませんか?刀を使った相手はほとんどしたことないので少し気になります」
「それはいいけど…まずはこの状況を乗り切ってからね おそらく例の犯人だと思うから」
「そうですね……では背中は任せますよ?」
「えぇ こちらこそよろしく頼むよ」
俺たちは互いに背中を任せ今森の中に潜んでいる奴らの相手をする。
こうやって誰かと背中合わせで戦うのは初めてだが、不思議と悪くない気分だ。
ジークとだからか?まぁ今はあいつらの相手をしようか
◇
「……」
「おらぁ!!死ねやゴミカスが!!!」
(……アクセル様。貴方は覚えていらっしゃいますか?私がどうしてもマエル様の事で割り切れなかった時に貴方はそばに居てくれたことを...今の私がいるのはあなたのおかげであることを)
「ふっ!」
「ぐあぁ…」
(不思議な気分です。あの時寄り添ってくれたお人とこうして背中合わせで戦えるのは…)
私はチラリとアクセル様を見ます。
そこにはあの時のような幼さは残りながらも少しずつ男らしく成長しているアクセル様の姿。
「隙ありじゃあ!!」
「遅い」
シュッ!
「ぐぇぇ…」
(こうして戦うのは初めてですが…何故でしょうか?貴方がいれば……負ける気がしないのは)
かつて守らなければならなかった対象は…いつの間にか自分と一緒に戦う対等な存在になっていた。
それが悲しいのか……それとも嬉しいのか分かりません…ですが今はこの時間を楽しむことにしましょう。
「ジーク!!」
アクセル様が私を呼んだ瞬間 振り返り彼の後ろの相手を斬り落とします。
同時に彼もまた私の後ろの敵を斬り落とす音が聞こえました。
…おそらく彼も思ってることを私は口にしましょう。
楽しいですね?アクセル様
◇
こうして俺たちは最近の村襲撃事件の犯人であろう者達を殲滅した。
その後、犯人の一人にアジトの場所を教えてもらい そこも二人で殲滅。
アジトの中にはどうやら生き残ってる者も居たようで俺たちはその人達と 犯人どもを領地に連れて行った。
襲われた者には感謝をされ犯人どもに睨まれながら俺たちはこの事件を解決した。
……問題はその後だ。
しかも二つある。何故かこういうトラブル体質なんだろうか?意味が分からない
一つ目は
「……ジーク?あんた 私の弟になに危険なことをさせてんのよ?」
「これはマリア様 ご無沙汰しております。いえ私が一番信頼ができる者がアクセル様だったのでそれだけです。ではアクセル様いきましょうか」
……このジークとマリア姉さんだ。
この人達まじで仲が悪いのか、出逢っては喧嘩ばかりしている。
しかも俺のことなのかは分からんが言い争いはだんだん激しくなっていく気がする。
「待ちなさいよ!アクセルの前だからってなによその態度!!いつものあんたなら暴言の一つや二つ私に言うでしょうが!!」
「まさか?そのようなことあるわけございません。頭でも腐ったのではないのですか?あっいえ、元々そうでしたね 失礼しましたマリア様」
「いちいち一言多いのよあんたは!ていうか私のアクセルになにしようとしてるのよ!!」
「貴方のではないと思いますが?まぁそれは置いとくしましょうか。アクセル様と少し模擬戦でもしようかと」
「なっ!?貴方と模擬戦ですって!?アクセル危険よ!こんなお堅い戦闘狂と戦ったりしたらアクセルが怪我するわ!!今すぐお姉ちゃんと一緒に帰りましょう?」
そういうと俺の腕を掴んで一緒に帰らせようとする
「待ちなさいあんた」
すると 口調を変えたジークが俺の腕を掴んでくる。何故俺の腕を?
「なによ?さっさと離しなさい。じゃないと帰れないじゃない?」
「なら一人で帰ればいいでしょう?私が用があるのはアクセル様だけよ」
「あらあら ついに本性見せたわね。ご敬愛する方の前なのに…そんなんじゃ団長も続けられないんじゃないかしら?」
「ご心配なく、これでもみんなには尊敬の眼差しで見られてるつもりよ。それよりあんたこそ学園に戻らなくていいのかしら?そのうちアクセル様に嫌われるかもよ?」
「……言ってはいけないことを言ったわね?」
「……そっちこそいつまでも邪魔しないでくれる?」
すると彼女らは俺の腕を話してどこかに行く…おそらくどこかで戦うんだろうなとか思った。
「アクセル〜少し待っててね〜お姉ちゃん頑張るから!」
「すみませんアクセル様、少し用事が出来たのでそこで待っててください。すぐに戻りますので」
……そんなことを言って今度こそどこかへ言った。
なんか最近誰かとの争いばかり見てる気がするのは気のせいか?色々とデジャブを感じてしまう……
そして問題二つ目だ……こっちは俺が屋敷に帰った後の事だ。
「……見つけました……私の
そんな戯れを言うのは…かつて盗賊に襲われてた所を救ったヴァニティファロスのメインヒロイン ナーシャ・カロナイラだ。
それが今、帰りを待っていたかのように俺たちは鉢合わせたのだった
……なんで 俺のことを知ってるんだ?
【小説家になろうやアルファポリスにも投稿しています。
メインはこっちですが、そちらの方もみてくれたら嬉しいです!!もし良かったらレビューやいいねをお願いします!!!】
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