第27話 ソフィアとの楽しい1日



混沌の魔女の件がひとまず解決して平和に過ごしていた日のこと


俺は街のとある繁華街の中央で人を待っていた。その人物とは....



「お兄様〜!」


....と、どうやら来たようだ。

声が聞こえた方に向くとそこには普段のドレス姿とは違う

白を基調としたシンプルなワンピース姿のソフィアの姿があった。


「申し訳ありません。お待ちしましたか?」


「やぁソフィア、ううん僕も今来た所だよ」


いつもの姿とは違うソフィアに俺は新鮮に思いながら返答した。


そうなぜこのようなことな状況になったのか、それはソフィアのお願い事を実行してるからだ


禁句の魔導書に行く前に俺がソフィアに何でも言う事を聞くよと言ったことをどうやら覚えてたようで、そのお願い事っていうのがこのデートということだ。


正直、とんでもないことを言われそうと予想してたが、とても可愛らしいお願いだったので俺はもちろん二つ返事でOKを出した


その時のソフィアの顔はとても幸せそうで街でも見かけたらしいのだが住民もあんな顔のソフィア様は初めてみたとのこと。



というわけでデートなので、俺もソフィアも普段とは違うラフな格好をしていた。


「ソフィア、今日はいつもと違ってシンプルなワンピースなんだね?」


「は、はい!一生懸命考えてこのワンピースにしました!....えっと...その.....似合ってないでしょうか?」


少し不安そうな顔をして聞いてくるが、全然そんなことはなく


「いつもと違って驚いたんだよ。とっても似合ってるよソフィア」


そう言うとさっきまで不安そうな顔が嘘みたいに笑顔になり


「ほ、本当ですか!?....えへへ...嬉しいです」


とても嬉しそうにそんなことを言ってくる。

こういう姿を見ると微笑ましい気持ちになる。

原作を知っている分、余計に感じてた。


「お、お兄様も!いつもの姿とは違ってとてもかっこいいです!!」


「ありがとう、ソフィアのために選んだからね。選んだかいがあったよ」


「そ、ソフィアのためにですか?...ソフィアの....えへへ」


俺がどんなことを言っても今回のソフィアはとても幸せそうだ。

ならこの笑顔を無駄にしないためにもしっかりと楽しまなきゃな。


そう思った俺はソフィアに手を差し出す


「さぁソフィア、そろそろ行こっか?今日は思いっきり楽しもうな」


「〜〜!はい!!」

こうして俺とソフィアの特別な日常デートが始まった。



とりあえず俺たちは近くにあった繁華街の中を適当に回ってた。

繁華街の中は料理や衣装店、アクセサリーなど色々売っており、どこもかしこも人々の声が聞こえておりとても賑やかだ。


もちろんソフィアはとても楽しそうで


「お兄様見てください!あそこにある屋台に見たことないお料理がありますよ!早速食べに行きましょう!」


そんなことをいいながら俺たちは手を繋いでその屋台に向かっている。

正直俺も内心楽しんでいる。


それもそのはず。転生していきなり魔王以上の脅威と戦うために2週間はずっと修行してたんだ。だからこんなのんびりと街を回ることがなかったし、異世界の街並みも新鮮なので楽しまないはずがない。



と、そんなこんなでどうやらソフィアは常に買っていたらしい。


「お兄様、このお料理癖がなくさっぱりしてて美味しいですよ!食べてみてください!」


その料理を見てみると、現実にある焼き鳥のような見た目をしており食欲をまさる匂いを醸し出している。


俺も食べてみたいと思って早速食べてみようと思ったんだが.....


「...あの、ソフィア」


何故かソフィアは自分が食べた物をそのまま俺に差し出している。

それはまるであーんを強要しているかのように


「お兄様」


妹の顔を見るととても眩しい笑顔を俺に向けている。

...まぁ今日くらいいいか

そう思った俺はそのままソフィアが差し出している焼き鳥みたいな料理を食べた。


「....うん、たしかに美味しいね。ソフィアの言った通り凄くさっぱりしてて見た目の割には食べやすい.....ソフィア?」


俺が素直に感想を述べていると顔を真っ赤に染めながら俯いてる妹の姿があった。


「....お、お兄様と.....か、かかか関節キスを......そそそれに親しい異性がよくやるちまたに聞く「あーん」を.....!」


あ〜...どうやら無意識にやってたらしい。

なんかアクセルとして過ごしてるとこういうソフィアを見ることが多い気がする。




....原作の彼女はほとんどこんな仕草をすることはなかったし、笑顔なんて尚更だ。


少し原作のソフィアについて話をしようか

ソフィアはアクセルが見つけた時、常に息絶えてた。

間違いなく一度死んでいた。


ただ、彼女は最終章までアレスの仲間として君臨していた。

それはなぜか?

実はアレスがとある物を使ったからだ。


その物の名は「不死の石」

その効果は強力で一度だけ死んだ人を蘇らせることができ、さらには死という概念をそのものを消し去ることができる。

つまり不老不死を実現できる理不尽極まりない石だ。


代々受け継がれてきたその石をアレスがソフィアに使用した。


その理由は至極単純だということ。

....俺から言わせてもらえばそんなことで妹に使ってほしくない

不老不死は良いふうに言えば死ぬことなんてない

だが悪いふうにいえば...苦しくても死ぬことができすに一生生きなければならない。


そんなアレスの一つの思いがソフィアを地獄へとまい戻したのだ。


ソフィアは蘇った後、彼女は暴走した。

どうして生き返らせたのか?こんなことまで生きたくなかったなど主人公達に絶叫。そのあと、お兄様ことアクセルを探すべく、行動するがこの時の彼女は無力。

当然、アレス達に止められる。


彼女はどう思ったのだろうか?自分は何もできない存在で、会いたい人にも会うことができず止められる。

これほど、悔しくて辛い思いをしたのは前にも後にもこのソフィアだけだろう。


その後目的が一致したことで、アレス達と同行。


アレスは魔王を倒しに、ソフィアは兄を探しにそれぞれの目標のために一緒に行動する。

ただ、彼女が心を開くことはなかった

アレスがどんなに彼女に話しかけても、仲間が気にかけても彼女は無表情で冷淡、冷たい態度で一蹴した。


ただ何も見えない馬鹿アレスは何を思ったのか、ソフィアに想いを告白。

...まあ玉砕されたがな。


そんなこんなでアクセルとの戦闘。

彼女は決してアレスたちに心を開くことはなかったが、それでも兄のために奮闘した。


そして無事、魔王そしてアクセルを倒すことに成功した。

アクセルを倒した時のソフィアは....悲しそうな、そして今までにない笑顔を浮かべてたということだ。


....その後、彼女がどうなったかは誰にも分からない。

その死ぬことのできない身体で一人で生きることは....どれだけ辛いことなのか、

それはきっと誰にも分かることができないだろう。


でも生き続けるのだろう。それが、彼女の残された運命だから。




......これが原作のソフィア・アンドレ・レステンクールのある意味

悲劇的な運命だ。


他のキャラの末路とは違い、ソフィアの末路はまた別の意味で悲劇だろう。


その時の読者の反応は「悲しすぎる」や「報われてほしい」など悲観的な感想が多い。また、中にはアレスのことが大嫌いになった読者もいたほど。


俺もなんで最初はここまで頑張ることができるんだと思ったほどだ。

...でもいまなら少し、その気持ちが分かる気がする。


「お、お兄様...」

ソフィアはまだ顔を真っ赤にしているが、俺に声をかけてきた。


「そ、その....ソフィアにも.......」


....あぁ、なるほど。

俺は焼き鳥ぽいものをソフィアから貰って、彼女が食べやすいように差し出す


「はい、ソフィア口を開けて?」


「は、はい.....!」


恥ずかしがりながらも意を決したように彼女は口を開けて焼き鳥ぽいものを食べた。


「美味しい?」


「....はい....とても」


先程より顔を真っ赤に染めてるが、口元を見ると少し綻びていた。


...そう、わかった気がするんだ。なぜ彼女がここまでがんばれたのか


きっとそれは―――



「...楽しいですねお兄様」


―――大切な人だから、なんだろうな


「...うん、そうだね」


だからここまで頑張れたんだね?と素直に思った。

その後も俺たちはなんのトラブルもなくデートを楽しんだ。





「すっかり日が暮れちゃったね」

本気で楽しかったのか、気づいた頃には空はすっかり赤くなっていた。


「そうですね...楽しい時間はあっという間です」

少し残念そうな顔をしているソフィアが言うが、ちゃんと楽しめてたんだなと

俺は心の中で安心する。


「そんなに残念そうにしなくても、また行けるさ」


「えっ?ま、またお誘いしてもよろしいんですか?」


ソフィアが驚いてるような顔をしている。そんなに変なこと言ったか?


「ソフィアが良ければね」

ソフィアの方を向いてそう言うと、花が咲きほこるように笑顔になって


「じゃ、じゃあ毎日でもいいんですか!?」


「それは僕たちじゃあちょっと無理かな?」


「あっ....そうですね....ごめんなさいお兄様」


何も考えず勢い余って言ったのか彼女は恥ずかしそうに俯いている。


「でも、ソフィアがまた行きたかったら僕はいつでも歓迎だよ」


「...ありがとうございます、お兄様...やはりお優しいんですね」


「妹のためだ。多少は無理しても問題ないさ」


「もう...ふふっ」

あれだけ楽しんだのに、俺たちは今も会話が弾んでいる。

今更だが、こうして憧れのキャラと話してるんだなと少し感動している。

と考えてたら、ソフィアが少し真面目な表情で話しかけてきた。


「お兄様....最後に我儘な妹のお願いを聞いてもらえないでしょうか」


「ん?なんだいソフィア?」

なんかあったか?もしかしたら重大なことを言うかもしれない

そう思ったら俺も自然と顔が険しくなった。


「...本当のお兄様でソフィアと関わってくれませんか?」


「...ん?本当の僕?」

どういうことだ?俺は別にソフィアに隠し事があるわけじゃないし、そもそも言ってることが分からない?本当の...俺?


「....他の人達と関わる時とローレンスさん、ユニーレさんと関わる時のお兄様はすこし違う気がします....二人と関わる時の方が本当のお兄様みたいに思えるのです」


「...あぁそういうこと?」


なるほど、確かにローレンスとユニーレと関わる時の俺は口調は少し乱暴になるしこっちがおそらく素だろうな。

ソフィアが言ってるのはあの二人みたいに俺と関わりたいということか


「我儘なのは承知の上です...ですが、ソフィアは偽りのお兄様ではなく、本当のお兄様と関わりたいんです。」


「....」


「ソフィアが暴走してしまった時、お兄様は言いました。どんなソフィアでも受け入れると、ならばソフィアもどんなお兄様でも受け入れます...だから....本当のお兄様を見せてくれませんか?」



....正直そこらへんはあんまり考えてなかったから、驚いてた。

ソフィアは本当の俺と関わりたいと考えてたんだな。


その証拠としてソフィアの顔がいつになく真剣だ。

改めて大事にされてるってうれしいんだな


「...これでいいか?」


「ッ!はい!」


素の俺を曝け出した瞬間ソフィアは嬉しそうに笑って俺の方を見ていた


「ん?どうしたんだソフィア」


「...嬉しいんです」


「嬉しい?」


「はい、こうやってお兄様がソフィアに素を見せてくれることが...なにより」


すると満面な笑みを浮かべながら


「お兄様がソフィアのことを信じてくれて、とっても嬉しいんです!!」


「...そうか」


少し感動で涙を流しそうになったが、そこはなんとか耐えた。

少し素っ気ない態度を取ってしまったけどソフィアは気にしてない様子で笑顔を浮かべたままだ。


少しむっときたので俺もソフィアに言い返すことにした。


「そんなの当たり前だろ?ソフィアは俺の自慢な妹なんだからな」


前を向いてそんなことを言ったらソフィアが突然立ち止まった。


どうしたんだと思ってよく見ると....あぁ〜どうやらやりすぎようだ。





「お、お兄様....そ、そんなにソフィアのことを....うぅ....ひっぐ...」


完全に泣かせてしまったからだ。そんな様子のソフィアに苦笑しながら

俺は再び手を差しだす。


「ほら....帰るぞ?」

それをみたソフィアは止まらない涙を浮かべながら――


「はい!!!」


――今日何度目かの最高の笑顔をして、俺の手を握った。

今日のデートは楽しかったな

そう思いながら俺たちは帰路に辿ったのだった。





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