第28話 マリアとの変わった1日


ソフィアとデートした数日たった頃

俺は今、姉のマリアと一緒に過ごしてた。

最近姉上はここにいることが多く

学園の方は大丈夫なのかと思ったが、どうやら学園長の許可のもと、特別に長期休暇が出されたらしい。


兄は今も真面目に学校に行ってくるのにこの人は....不真面目な方だ。

んでその姉上が今何やってるかというと....



「....あの姉上?そこまで抱きしめられると少し苦しいのですが?」


「そ、そう?じゃあもう少し緩く... 」


「いやそういう問題ではなくて...」


いつも通りに抱きついていた

俺が目を合わせたり、話しかけたりすると挙動不審になるくせに何故か抱きしめるときは積極的だ。


「それより本当に大丈夫なんですか、学園の方は?」


「何度も言ってるでしょ?ちゃんと許可は貰ってきたもの」


「...ちなみに許可をもらえた理由は?」


「あ...えっと...ここの治安維持のために?」


「なに疑問系で答えてるんですか...」

この人、さては確信犯だな?見た目は真面目で学園の英雄ブリュンヒルデとか呼ばれてるくせにその実態はこれだ。どういうことなんだ


「だ、だって仕方ないじゃない!」


「なにが仕方ないんですか?」

子供みたいに駄々をこねる姉上に呆れたように俺は聞く。


「最近私が帰ってもアクセル構ってくれない!」


「そりゃあ僕にもやることがありますから。いつまでも姉上に構ってる暇はないんですよ」


「なっ!...お、弟に嫌われた....」


「いやどうして嫌うんですか?嫌いだなんて思っていませんよ」


「じゃ、じゃあ好き?」


「まあそうですね。姉上ですし」


「....」

何故か姉上が抱きしめる力が強くなる。それに少し不機嫌にでもなったのか、顔色が少し険しい気がする。


「あ、姉上?先程よりも苦しいんですが...」


「むぅぅ!!」


「姉上!?」

さ、さらに強くなってる!ちょ、ちょっと待って、これ以上いくとまじで死んじゃう....

俺はひとまず姉上に引き締める力を弱めようとなんとか力を振り絞って言った。


「あ、姉上...苦しいです、このままだと本当に死んじゃいます....」

そんなことを言うと、姉上は不機嫌ながらも力を弱めてくれた。俄然苦しいのだが。


「あの、どうしてそこまで不機嫌になられたのですか?」


「....て....んで」


「え?今なんと?」

声が小さすぎてほとんど聞き取れなかった俺は再度不機嫌の姉上に聞いてみた。

すると先程よりも大きな声で


「わ、私のこと....お姉ちゃんって呼んで...」


「え?お姉ちゃん?」


言ってる内に自信をなくていったのか徐々に声が小さく、弱々しいものになっていた。

にしても、そんなふうに呼んでほしいのか?


「と、というかこれはお願いよ!アクセル言ったわよね?待っててくれたら一つだけ何でも言うこと聞くって!」


「はぁ...それは言いましたけど」


「じゃあこれからは私のことお姉ちゃんって呼びなさい!」


「あの、流石に少し恥ずかしいのでせめて姉さんで許してもらえませんか?」


「ね、姉さん....ありね.....うん、ありだわ」

あ、どうやら言いらしい

流石に前世のこともあってお姉ちゃんっていうのは少し恥ずかしいかったから少し交渉してみたが、思ったよりもあっさりと許してくれた。


「じゃあ...呼んで?」


抱きしめながら俺の方を期待してるかのような目で見てくる。

ソフィアのときもそうだったけど、そこまで呼び方とか話し方に意識してないんだよな....


「...姉さん?」


「〜〜!!!」

すると姉上....姉さんの身体がビクッと跳ねてとても幸せそうな顔をしている。


「姉さん....姉さん....えへへ〜」

この人と関わるとほんとに自分の姉なんだろうかとますます疑問が湧いてくる。

身体を左右に揺らしてるので俺もつられて左右に揺れることになる。


「あの、姉さん?僕もつられて揺れるんですが」


「うふふ〜アクセル〜」

ダメだこりゃ、頭の中がお花畑になっていて話を聞いていないな。

しかたない、このまま姉さんが正気に戻るまでなんとか耐えるか


しばらくの間、俺は姉さんが冷静になるまで遊び道具になっていたのだった。





「姉さん落ち着きましたか?」

おそらく落ち着いたであろう姉さんに聞いてみたが


「ん〜な〜にアクセル?お姉ちゃんは落ち着いてるよ〜」

どうやらまだまだ余韻は落ちていなかったようだ


「姉さん、この後は何をするんですか?」

このまま聞いても埒が明かないと思った俺は話題を変えるために

この後なにをするのかをきいてみた


「ん〜なにもしないよ〜」


「え?何もしないんですか?」


「アクセルは私となにかしたい?」


「いえ、少し気になったので、それに僕も姉上も忙しい身です。こういう時間も中々取れないので、もしなにかしたいことがあったらやろうと思ったんです」


「そっか、アクセルは優しいね」

すると姉上は別人みたいな雰囲気を出して、俺のことを撫でてきた


「だったらこうやってお姉ちゃんと一緒に過ごしてくれないかしら?

それが今の私がアクセルにしてほしいことよ」


「そうですか...それなら言いんですけど」

少し撫でられることに恥ずかしさを覚えながら、返事をしていく


しばらくそんな状態が続いた時だ

「ねぇアクセル」


「ん?なんですか姉さん」


「アクセルはどこにも行かないわよね?」


突如姉さんの雰囲気が変わった気がする。

さっきまで挙動不審だったり、幸せそうだと思ったら、今度はなにかただならぬ気配を纏って俺に問いてくる


その時のオーラがまるでかつてのローレンスを見ているようで....


「アクセルはどこか遠くに行ったりしないよね?また私の前から消えないよね?」


「ね、姉さん?僕はどこにも行ったりしませんよ?」


「ッ!」

姉さんの気配がまた濃くそして、凍てついた風のような空気が俺の身体に直々と感じてくる。


「また、またそんなこと言って...アクセルがいなくなったら」


「ね、姉さん?」

あの禁句の魔導書のときの件のことか?だが、それのように見えない。もっと別のなにかを怖がってるような....いやそんなことよりも


「姉さん、僕は姉さんが思った通りのことはしませんよ。ちゃんと姉さんのそばにいますから安心してください」


「...ほんと?」


「うん、ほんと」

俺がそういうと姉さんの気配が少し和らいだような気がした。


「...じゃあ」

そんなことを思ったら姉さんが急に俺のことを離してきて....


「私のこと、安心させて?」

姉さんの方をみるとまるで俺から抱きしめてとでも言ってるように手を伸ばしてくる。


「は、はぁ... 分かりました姉さん」

少し飽きれたような違和感を持ったようなそんなモヤモヤを抱えながら姉さんを抱き

しめる


「....安心する」


「それなら良かったです」


今度こそ姉さんから纏っていた気配が消えた。

あれはなんだったんだ?この世界に来てから謎が多い

姉さんは確かにブラコンと呼ばれている。


だが、ここまで露骨に見せることはなかった。なんだ?なにがここまで変化させる?

色々な疑問が飛びまわる中、姉さんが話しかけてきた。


「ねえアクセル?」


「はい?」


「私、がんばってるよ?昔も今もアクセルのためにずっと....だから」


「私のこと、置いてかないでね?」

姉さんがドロドロに濁った目をしながら俺の方を見ながら言う。

怖さや違和感が混ざり合いながら、動揺を見せないように答えた。


「...うん、姉さんのことは置いてくつもりはないから大丈夫だよ。逆に姉さんに置いてかれないかが不安だよ」


「..そっか」

そこにいたのはいつもの孤高で優しくて何でも包んでくれそうな姉ではなく、弱々しく、少しでも触れたら壊れそうなそんな姉さんの姿があった。


もしかしたら、なにかあったかもしれないそう思うと少し不安になった。


「姉さん、姉さんが何か抱えてるなら....」

僕が力になるよ

そう言おうとした時、扉が開く音がした。


「お兄様、少しお聞きしたいことがあるの...ですが....」


ソフィアだ、ソフィアがいる。

ちなみにこの部屋は俺の部屋で、そこにマリア姉さんが入ってきて留まっていたのだ。そこにソフィアが入ってくる。しかも今は俺が姉さんを抱きしめている。するとなにがおきるか―――


「...おにいさま?」


―――修羅場になるということだ。


「随分とお姉様と仲良くしていらっしゃるのですね?」


「待てソフィア?違う、違うぞ姉さんの様子がおかしかったから少し抱きしめてただけで....」


「姉さん?....うっふふふ」


あ、まずいソフィアの気配が濃くなっているぞ

これは俺では止められない....


「まぁお兄様とはまた後でお話をするとして....お姉様?」


ソフィアが呼びかけるとマリア姉さんが反応し、目つきや雰囲気が変わった。


「....今は私とアクセルの時間なはずよ?」

「だからってお兄様の部屋に行くのは違うと思いますが?」


「「.....」」


二人は臨戦態勢に移る。妹は多彩な魔法を、姉はいつの間にか用意していた愛用の剣を。しかも姉さんの方は邪魔されたと思ってるのか凄くイライラしてるような顔をしてる。さっきとはまるで別人だ。


「...今回は手加減できないわよ」


「いいえ、お気になさらず」

お互い煽り文句を宣言して、いつもの姉妹喧嘩が始まった。


はぁ...俺はどうすればいいんだ?

素直にそう思った俺は姉妹喧嘩を最後まで見送ったのだった。





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