第23話 帰って待っていたものは……




俺たちはあの混沌カオスの状況になった後無事、本の外に出て現世に帰ってきた。


正直、ここから外に出て家に帰るまで歩きたくない。だが、色々やらなきゃいけないことがあるからそれをしなければならない。


……俺、何かと苦労人な気がするけど気のせいかな?まぁ自分でやるって決めたんだから仕方ないけど。



と、外に出てみたらいつも通りの森で安心する。とりあえず今ここでやらなきゃいけないことを2人に説明しようと後ろを振り向いた。



「二人ともすこしいい……」



「「………」」


久しぶりの外の世界だからか2人は周りをキョロキョロしながら森の中を唖然と見ていた。

…まぁ2人が落ち着いてからでいいか。


と2人が落ち着くまで俺は少し身体を休めるのだった。








「…そろそろいいか?」

落ち着いたであろうローレンスとユニーレに声をかける


「…我ら、ほんとに外に出たのだな」


「当たり前だ。じゃなきゃここは一体どこになるんだ?」


「…幻?」


「おいおい…」


魔導書の中に滞在しすぎて、現実か幻かの判断出来てねぇじゃないか


「…ユニーレは?」


「…えぇ少し落ち着いたわ。でもまだ不思議な気分よ。ほんとに外に出てるのね」


こいつら同じこと言ってるな。まぁ懐かしい所にいると感傷したい気分とか呆然する気持ちとか分かるけど今はそんなことより…



「少しかけたい魔法があるんだ。二人とも固まってくれ」


「かけたい魔法?どんなものなのだアクセル?」


疑問に思ったローレンスが聞いてくる。そりゃあ不思議に思うわけだ。ユニーレだって分からなそうに首を傾けてるしな。


「かけたら分かる。とりあえず言う通りにしてくれ」


「?分かったのだ」


二人は頭の中がスッキリしないのか、少し腑に落ちない顔をしながらも俺の言う通りに固まってくれた。


そして俺は2人にある魔法をかけた。


認識阻害インビジョン


空間魔法を利用した魔法、認識阻害インビジョンを2人を覆うようにかけた。


初めはなんの魔法か分からなかったらしいが、かけられた瞬間流石というわけか俺の方を見ながら驚いたような納得したような顔をしていた。


「アクセルこれは…」


「あぁ、もしかしたらお前らのこと知ってるやつがいるかもしれないからな。認識阻害の魔法をかけさせてもらったぞ」


「でも、これくらいなら私達でも…」


「魔法を使う中にも効かなかったり、もしかしたら打ち破ったりするやつがいるかもしれないからな。俺の力なら少し特殊だからそう簡単には破られたりしないはずだ…まぁ迷惑ならやめるが」


そうもしかしたら混沌の魔女関連で知ってる奴がいるかもしれない。


それに魔法でやったとしてももしかしたら先ほどの言ったみたいに効かなかったら破られたりするかもしれない。


だから俺の虚無力でかけた魔法なら打ち破られる心配がないからかけたんだけど、とそんな考えをしてたら……


……ローレンスは少し涙を流しながら、ユニーレは微笑みながら幸せそうな顔をして俺の方を見ていた。


「お、おい…お前らなんだその顔は?」


「……あ、アクセルが我らのことを考えてたと思ったら…嬉しくて…」


「ふふっ、かつて恐れられていた混沌の魔女の事を心配してくれる人がいるなんておかしな話ね」


どうやら嫌ではないらしい。まぁそれならそれでいいんだが…にしても背中がむず痒いな

そんな目で見られても俺が困る。


恥ずかしくなった俺は2人に背を向けて歩き始めた。


「ほらお前ら、落ち着いたんならさっさと行くぞ。じゃないと置いてくぞ〜」


「あ、ま、待ってくれアクセル!」


ローレンスが慌てたように俺についてくる音が聞こえて


「あらあら…照れてて可愛いわね私の愛しの人は。ふふっ」


ユニーレが俺に聞こえるように、そして嬉しそうにしながら俺についてくる音が聞こえた。



…はぁ、なんかこいつらといると調子が狂うな。


俺はそんなことを考えながら懐かしのレステンクール領に向かったのだった。





時間が少し経ち俺たちはまだ森の中をしばらく歩いていた。


俺は戦いからの疲れなのか、少し頭が痛くなったり、身体の疲労感が半端なかった。


なんとか顔を出さずにいたんだが…


「あ、アクセル?大丈夫か?少し顔色がわるいぞ?」


どうやらローレンスにはバレてたらしい。

ここで嘘を言っても仕方ないので、本当のことを話すことにした。


「大丈夫…とは言えないな。流石にあんな戦っていたら少し疲れるな」


俺が正直に答えると後ろにいたユニーレが申し訳なさそうな顔をしながら謝ってきた。


「ごめんなさい…私のせいね」


「あー…別にお前が気にすることじゃないぞ?

大体戦うのは予想出来てたし他にも戦ったりしたからな」


まさかこいつが謝ってくるとは思わなかったから俺は心の中で驚きながらユニーレに返答した。


こいつなんか変わったか?まだ自我が芽生えてそこまで経ってないはずなのに……。


「…貴方は優しいのね」


「優しいとかそんなんじゃない。ただ事実を言っただけだ」


「そう…ふふっ」


俺の返答がおかしかったのかユニーレは困った顔で笑っていた。


なんだ?馬鹿にしたなら喧嘩買うぞ?


「…わ、我が最初に心配したのに2人がいい雰囲気なのだ!どういうことだアクセル!」



「いや俺に言われてもな…」


何故かローレンスが俺に八つ当たりしてきてた。なんで俺こんな目に合わなかんのだ?


この世は理不尽だと思った時だった。




"きゃああああああああ!!"


「「「ッ!!」」」


女性のような甲高い声が聞こえてきた。

俺たちはお互いに視線を合わせて俺が頷くと、2人は先に声が聞こえた方に向かい、俺は後から向かうのだった。



こんな場所で襲われただ?比較的安全な場所なはずなのに何故……


そんな疑問を思い浮かべていると。もう着いたのか遠くにいるはずのローレンスから声が聞こえてきた。


『アクセル、見つけたのだ』


(ッ!これは…風魔法で電話みたいに俺に声をかけているのか…全く流石だな)


そんな技術に驚きながらも、俺もローレンスのように風魔法の応用で彼女に応答した。


『分かった、状況は?』



俺が返答すると思っていたのか、嬉しそうに笑いながら情報を的確に教えてくれた。


『襲われている方は兵士と令嬢らしき者含めて4人だな。だか、2人は相当怪我が酷いらしく倒れておる。なんとか1人で令嬢を守っとるが時間の無駄だろう』


『相手の方は?』


相手の数について教えてもらおうとしたら今度はユニーレが教えてくれた。


『相手の方は盗賊かしらね?それが15匹よ。

1匹1匹は雑魚だけど苦戦してるわね…一応そのうちの5匹は倒してるわ。』



今更だが、こいつほんとに他の人間のことなんかどうでもいいんだな。


15匹って聞いた時内心驚いたが、少し考えながら俺は彼女らに指示を出す


『まだ誰かが分からない。バレない程度に足止めを頼む』


『『了解(なのだ)』』


2人との会話を終えるとすぐに俺は目的の場所に向かうべく身体を酷使する。


さぁて一体誰が襲われてるんだ?



あいつらと会話してしばらく経って俺はようやく目的地に着いた。


「悪い2人とも。遅くなった」


隠れて足止めをしてたであろう2人に声をかけると気にしてないかのように答えてきた。


「大丈夫なのだ。これしき朝飯前だ」


「ひとまず誰も倒してないのだけど良かったかしら?」


「あぁ、助かる」


仕事ができるやつは違うな。2人の優秀さに改めて感心しながら、俺は今の状況を知るべく戦場をみたのだが……


「……」


「?アクセル?」


2人のうちの誰かが声をかけてきたが、俺はそれを耳に入れて声をかけれる余裕はなかった。


これほど驚いたのは転生した時以来だ。


……どういうことだ?何故彼女が今ここに?


確かに彼女がここには来るのは知っているが、このタイミングは早すぎる。


俺が驚いてる原因張本人の名は——













「…ナーシャ・カロナイラ」



——ヴァニティフィロスのメインヒロインの一人が今目の前にいるのだから





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