第13話 アクセルの実力
2週間後、俺は父上に禁句の魔導書を借りて
ある森の中まで来ていた。
家族のみんなは出来るだけ近くにいて欲しいと言ってはいたが、もし俺が負けた時のリスクが高すぎる。だから出来るだけ被害が出ないようにこの森の中を選んだわけだ。
妹のソフィアは相変わらずで「もしその魔女といかがわしいことをすれば…分かってますよね?」と物凄い圧を出しながら言っていた
俺のこと尊重するって言ったのに、なんか余りにも不自由すぎませんか?とそんな疑問を抱いたが、まぁ特に嫌な気持ちではないのでいいだろう。
と、そんなこんなで俺は今、この魔導書の中に入る準備をしている。と言ってもそこまで大掛かりなものではないが
「さて、と…じゃあそろそろ入りますかね」
色々な準備も出来たので、俺は早速禁句の魔導書にある魔法をかける。
「
そう唱えると、禁句の魔導書に人並みの大きさの穴が出現する
虚無力を利用し、擬似的に魔法にした「空」の力だ。
二週間もあったおかげで、俺はほとんどの虚無力の制御が出来るようになっていた。
アクセルのセンスはただならないということだ。だがまだまだ出来ない所、分からない所もあるからそこは要注意だな。
と、そんなことを思いながら俺はゲートの中に入った。
◇
ゲートの中を通り抜けた俺が見たのはもはや何もない空間……と思ってはいたが、どうやらそうではないらしい。
「…実際に見たのは初めてだが、これは凄いな」
俺の目の前に広がっていたのは一つの大きな城
その禍々しさでも神々しいのでもなく、何か歪でそして不気味であるその雰囲気はまさに「混沌」と表現してもいいだろう
普通の城とは違い、何かぼやけていたり、歪んでいたりともはやなんでもありなりな状態である。
またそれだけではない。周りに広がっている夜の森は混沌に蠢き、その光景はまさに歪みそのものだった。普通の森にはない奇怪な風景が、視界の隅々まで広がっていた。闇の中で光る瞳、異様な音を立てる木々、不規則に揺れる影。それら全てが、この場所が異次元に通じていることを物語っていた。森の奥深くへ足を踏み入れるたびに、現実と非現実の境界が曖昧になり、まるで夢の中にいるかのような錯覚を覚える。静寂と狂気が同居するこの森は、まさに異形の世界そのものであった。
そんなふうに混沌の城?と環境?みたいなものを感心して見ていると.....
「メインディッシュの前の前菜ってところか?美味しくはなさそうだけど」
まるで、小説とかにでてくるダンジョンだ。
そう思えるほどの魔物が一体いる
「〝ガアアアアアアアアアアアア!!!!」
そんな雄叫びをあげるのは、狼のようなそれとも熊なのか、なんの生物かがわからないものだった。
「あえて命名するならキメラってところか....にしては生き物っぽさはどこにも感じられないけどな。いやキメラだから感じないのか?」
と、そんなことを考えてくるとキメラモドキ共がいきなり襲ってきた。
「おっと」
知性もなにも感じられない攻撃だが、当たればきっとただでは済まないだろう
そんな攻撃を先程雄叫びをあげた狼?熊?のキメラモドキが放ってきた。
「といっても、避けること自体は難しくはないけどな」
ただ、俺の目的はこいつと戦うことじゃない
なので、早々と終わらせることにした。
俺は虚無力の一つの本来の力を発揮する。
「
創造の力 アクセルは魔法に使っていたが、俺はこれを武器を生成することに利用した。といってもこれは俺が前世の記憶があるからできる芸当であって
なにもイメージせずに創造してもそこらの武器に圧倒的に劣るだけだ。
「やっぱ刀は落ち着くな。それにこいつのセンスのお陰で使い方とか、癖とか改めて分かるからある意味武器鑑定してる気分だ」
元々剣道を習ったことや少し刀を握ったことがあってか、ある程度使い方自体は理解できていたが、
どうすれば効率よく倒せるのか、どうすれば本領を発揮できるのか
ここまでは理解できなかったから、やはりチートである。
さっさと終わらせたいが、隅々まで理解した刀の腕前を確かめたいという強い好奇心が勝り、俺は居合の構えをする。
「〝ガアアアアアアアアアアアア!!!!」
雄叫びをあげて近づいてくるが、俺は焦らず相手を見る
刀というのは、剣と違い斬ることに重点を置いた武器だ。
剣なら叩くというイメージでやれば、ある程度であるがまだ戦える。
だが、刀はさっき言った通り斬ることには特化しているが剣よりも薄いため耐久力は低い。むやみに振るえば簡単に折れることになる
つまり技術力が必須になってくるのだ。
だが、使いこなせば強力な武器となる
どれに関しても言えることだが結局のところ武器に対してどれだけ理解するか、使いこなせるかが勝敗の鍵となる。
考えた結果俺は刀を使うべきだと判断した
剣も技術は必要だが、力や腕力も必要になってくる
未だ発展途上のアクセルが使ってもあまり脅威にはならない
一方で刀は力も必要だが最も重要なのが技術力だ。
経験という力はどうすることもできないが、アクセルのセンスと才能があれば
刀を使いこなす技術が身につくことができる。
そして刀のことを隅々まで理解できている俺が使えば――――
「居合――
――――その威力は計り知れないものになる
抜刀というシンプルな技だが、通り際に放ったことで首は飛んでいった
「〝グギャッ...〟」
そんな最後の一言を吐いて、キメラモドキは散っていった。
圧巻の勝利を掴みきったの瞬間だ。
戦い終了後、俺は密かに驚いていた。
「わかってはいたが、ここまでとは....流石は魔王の幹部まで上り詰めた男」
まるで自分の身体じゃないかのように自然と動けていた
剣のときはここまでじゃなかった。理解はしていたし実際人並みには使いこなせていた自負もある。だが刀はそれ以上だ。それこそいままで刀を振っていたとかでもないと説明できないくらいには
とそこまで考えていると
「「「「「「〝ガアアアアアアアアアアアア!!!!!!」」」」」」
先程の化け物が何体か俺に襲ってきた。
そこらへんの魔物や冒険者なら恐怖で逃げ出してしまうほどの迫力だ
だが俺は、まるでバーゲンセールだなとか悠長に考えていた。
まぁ流石に遊んでいる暇はないと改めて考えて....。
「しゃーない、少し暴れますか」
俺は刀を空間魔法で作った空間に入れた後、もう一度虚無力を扱う
ただしそれは魔法ではなく、虚無力本来の力を
「「「「「「!!!!」」」」」」
化け物共は本能で止まった。そして感じてしまったのだ
この大人にも成っていない子供の、本当の恐ろしさを。
それはまるでこの世界を作り出したかつての化け物を見ているかのように
「?なんだ?お前らも恐怖とか感じるのか?」
子供のようななにかが話している。
「でも俺の前に立っちまったもんな?それなら仕方ないよな?俺の前に立ち塞がるなら....どんなやつでも蹂躙してやるよ」
子供...いやそれを模したなにかが「それ」を放つ
化け物達は後悔する。こんな自分達よりも遥か格上に立ち塞がってしまったことを。
怪物の最後の言葉を聞きながら。
「
◇
俺が
そこにあったのは最初からなにもなかったかのような風景だけ。
虚無力本来の力「何もかもを無にする力」
このエネルギーを塊に圧縮して相手に放つ
シンプルな攻撃だ
だが、当たれば最後、そこにはなにも無かったかのように存在ごと消してしまうめちゃくちゃな技。
いま俺が常にまとっている虚無バリアを絶対防御だとしたら、さっきキメラモドキ共に放った攻撃はまさに防御不可避の理不尽な力
それが虚無力の本来の強さであり、圧倒的な力だ。
それを使いこなしているアクセルはさぞ運が良かったか、はたまた狂っているのか
それは本人でも分からない
「ふう…この世界、本の中なのか分からないけどエネルギーが取りにくい。ってことはあんま長くいるわけにはいかないな」
本来、虚無力は宇宙から取り出してるものだ
それが密封された本の中だとどうなるのか?
そんなの、受け取りにくいに決まっている。
俺はすぐさまに混沌の魔女の所に行きたいのだが、現実はそう上手くいかず…。
そこに広がっていたのは、先ほどよりもはるかに多い化け物の数々
さっきの動物のキメラモドキもいれば、妖怪のような不気味なもの、さらには植物に人間が生えてるような
もはや人智を超えた生物達がそこにいた。
「…そんなに戦いたいのかお前ら?ならいいぜ。修行にもなる。まとめてかかってこいよ
………また、根絶やしにしてやるからよ?」
そんな発言を発した瞬間化け物どもと俺の戦いは再び始まった———
「はぁ…はぁ…はぁ……あまり強くない癖に数だけが多すぎるだろ。くそっ少し道草くったか…」
俺の後ろに広がっていたのはまるで化け物どものピラミッドと思われてもおかしくないほど死体の山は広がっていた。
修行とはいえ、あまり虚無力を使いたくないと考えた俺はできるだけ空間魔法から出した
政宗を使い、全部切り捨てていった。
そのおかげか、刀に対する理解も深まったし技術力も上がった気がする。
おそらく熟練度が上がったのだろう。
このスペックだけはほんとに訳が分からない
「ふぅ…休憩もしたし、そろそろ行きますか」
俺は目の前にある不気味な城を眺めながら言い放った。
「悲劇の裏ボス:ローレンス・アンドレ・ライファスを救いにな!」
そして俺はその城の中へ入っていくのだった
【小説家になろうにも投稿しています。
メインはこっちですが、小説家になろうの方もみてくれたら嬉しいです!!もし良かったらレビューやいいねをお願いします!!!】
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