第12話 「俺」の答えは変わらない


俺が禁句の魔導書という言葉を言った瞬間

この部屋の空気が凍りついた


と言っても父の雰囲気が変わって、兄上、姉上、ソフィアは禁句の魔導書について分からない様子である。


「....本気なのかい?アクセル」


今の父上多分あの飄々とした余裕のあるお気楽な雰囲気でなく、

表情は厳しく、その目は半端な答えだったら許さないとでも言い表すような

まさにこの領を変えてきたと噂されてもおかしくないそんな雰囲気を出している。


「はい、父上僕は本気です。」


「....アクセル。君は、?」


それを聞いてきたのは、父上ではなく、今の父上に似ているオーラを出している

兄上である。


「前のアクセルなら、こんなこと言わない。そもそもどうして混乱しないんだ?この事実はどんな人でも、少なくても僕たちなら驚くはずだ。なのに....君は知っているどころか、その禁句の魔導書を使ってなにかをしようとしている。僕には今の君のことが不気味に見えてくるんだ....アクセル改めて問う。?」


父上や母上ならきっとどんな僕でも息子だと尊重してくれるだろう。

でも、兄上は....アルマンは違う。もし家族に害するものならたとえかつてのアクセルだろうと容赦はしないという雰囲気を醸し出している。


......なら俺もそれ相応の答えを出さなければならない。


俺は―――――




「――――俺は俺ですよ兄上」


「は?」

兄上は真面目に答えろと言っているのか、その顔は少し苛立っている。


「....」

姉上はなにを考えてるのか、黙って俺のことを見守っている


「お兄様....」

ソフィアは俺のことを心配しているかのような声をだして俺の名前を呟く。


三者三様の反応をしている


「....どういうことだい?」

兄上はさっきまでの苛立ってる顔を変え、その問いを俺に催促する


俺も当たり前のように答える


「簡単ですよ兄上。たとえ俺がどんなに変わろうと、どんなに狂っていようと俺は俺です。アクセルです。でも、あなた達の知っているアクセルはもしかしたらいないかもしれない。それでもしかしたら、俺のことを嫌いになるかもしれない....でもそれでも俺は構いません。ただ俺は進み続けるだけです、自分のために。

そのためなら.....悪魔にだって魂を売りますよ?」


「...あ、アクセル」

アルマンは一種の恐怖抱いていた。あの無邪気で優しい弟はもういない。

今、目の前にいるのは....


それは自己中心的だろう。自分勝手で子供あまり変わらない。

でもアクセルは確信している。ただ突き進むと。目的のためなら、家族だって敵に回すだろう。救いたい相手を敵に回すほど、彼の想いもまたとてつもなく強いのだ


彼はアクセルのことを狂っていると評価している。




「...それが、兄上の問いに対する俺の答えですよ」


俺はさも当たり前のようにそう告げた。

...幻滅されたかな?それでも構わないだろう。家族さえ守りきれば俺は――



「いいえ、違いますよアクセルお兄様」


そんな問いに異を唱えるようにその声は響き渡った。


「ソフィア?なにが違うんだい?僕は間違ったことは」

俺がそう答えようとしたがソフィアの声が遮った。


「いいえ、間違っておりますお兄様。お兄様はなにも変わっておりません。

お兄様は今も昔も優しいアクセルお兄様です」


そう言うと、ソフィアは手のひらを掲げて兄上達に見せつけるように

それを唱えた


「水よ、光よ」


そうすると、ソフィアの手のひらにポワっと浮いている水と

眩しく光っている光が浮いていた。


これには父母含めて、家族全員が驚いていた。


「ソフィア?そ、それは....」

母上がソフィアに聞いてくる

それもそのはずだ。適正なしと判断された娘が突然魔法を使えたのだ。

驚くのも無理はない


「正真正銘私の魔法です。どうやら私の魔法適正が多すぎて適性なしと判断されたようなんです。ちなみにですがあと3つほど魔法が使えます」

それを証明するかのように、その後、ソフィアは魔法を見せた。


「ご、合計5つの魔法を....?聞いたことがないわ」

姉上は炎、雷の適性を持っており、この世界では珍しい部類なのだが、やはりソフィアの魔法は少しばかり異常らしい。


「...これが分かったのはアクセルお兄様のおかげなんです。」

「お兄様は言いました。私達の知っているアクセルお兄様はいないと。ですが私にはそうは思えません。確かに私達の知らないことを知っていたのかも知れません。雰囲気も変わったのかもしれません。ですが、それだけです。私の、ソフィアのことを受け止めると、尊重をすると、そしてソフィアのこの力を目覚めさせて....自信を持たせてくれた。そんな優しいアクセルお兄様が変わってるわけないじゃないですか!!」


「ソフィア...」

....この子の根本的な強さは想いなのかもしれない

原作だって、いまだってそうだ。アクセルのことを信じてる。想っているのだ

それは、月日が経っても変わらない。もしかしたらその想いもだんだんと強くなっているのかもしれない。


「お兄様」

ソフィアは俺の方を向いて告げる。


「お兄様は言いました。ソフィアのことを尊重してくれると、ならソフィアもお兄様のことを尊重します。お兄様が選んだ道がソフィアの道ですから。」



...やっぱり敵わないな。

これが、ソフィアの強さなんだなと俺は自覚する。

それと、こうも呼ばれてたっけ?


「相変わらずソフィアはぶれないな」


「ふふっそんなのお兄様のためですから。負ける気がしませんので」














―――――ヴァニティフィロスの蘇った

      ソフィア・アンドレ・レステンクール













「兄弟姉妹同士、納得いく答えを出せたかな?」


父上がそう言うと、兄上はまだ納得していないのか、黙って俯いており

姉上は「私はどんなアクセルでも構わないわ」と特に気にせず、

ソフィアは満足げに頷き、俺も特に何もないので頷いた


「話を戻すけどアクセル...本当にやる気かい?」


「はい決めましたので」

元々引き返すつもりはない

俺はそんな覚悟で父上に答えた。


「...分かった、二週間後に渡すとしよう。」


「今でもいいんですよ?」


「息子の心配をさせてくれ....」

呆れたようなそれとも息子の言動に疲れるのか気だるさを感じさせる声で父上は答えた


「...本当ならもう反対したいところなんだけど、なぜだか今のアクセルなら、あの方を救ってくれるんじゃないかって思いがあるんだ」


「過大評価ですよ父上僕はそこまで立派ではありません」


「なら諦めるかい?」


「まさかそんな選択捨ててますよ」

俺と父上はそんな会話をする。母上はどこか寂しそうに

またもや三人は置いてけぼりに....


「あ、アクセル?そ、その....アクセルはその魔導書で何をするの?」

姉上は代表して、そんなことを聞いてくる

なので俺は何をするのかを答えた


「助けに行くんですよ。封印された混沌の魔女を」


「た、助ける!?待ってアクセル混沌の魔女は生きてるの!?」


「えぇ、封印されてるので、月日自体は経ってないですからね」

そうこの禁句の魔導書。実は封印された混沌の魔女が眠っている。

原作ではその効力がきれ、自ら破るのだが

その時にはすでに精神は壊れていた。


だから、そうなる前に封印を解こうということだ。

「でもどうやって?封印されたってことだから暴れたりするんじゃないかしら?」


「えぇ、だからおれもその禁句の魔導書の中に入るんです」


「え?...ということはもしかして」


「俺が混沌の魔女と戦う可能性が高いですね」

まぁ封印を解くということは多分どちらにしても戦うことになるだろう

それなら、いっそのことおれも魔導書の中にはいって戦えば被害がなくなる

まぁ一人になって戦うのは、少し危ない気がするが、大丈夫だと思う


「お、お兄様!流石に危険です!!もしものことがあれば...」

「ソフィア、僕の選択は尊重してくれるんじゃあなかったかな?」


「そ、それとこれとは別です!死地に向かって行くようなものみたいじゃないですか!?....もし、もしお兄様が死んだら」

確かにそう思うのも仕方がないだろう....少し乱暴になるが仕方ない

「ソフィア、ソフィアは僕のこと信じられない?」

「そ、そんなことありません!ソフィアはお兄様のことを....!」


「それなら僕は絶対帰ってくる。信じてほしい」

「うっ!そ、それは...」


まだ戸惑ってるな....こうなったら最後の切り札だ

久しぶりにお兄ちゃんスペシャル奥義③「耳で囁く」それと...


「待っててくれたら、ソフィアのお願い何でも聞くよ?」


「ひゃっ!ほ、本当ですか!?お兄様!!」

なんか反応が混ざってた気がするが、まあいいだろう


「絶対ですからね!約束破ったら一生ソフィアのそばにいてもらいますからね!!」


「ソフィアと一緒なのはいいかもしれないけど、約束守るから大丈夫だよ」

こうして、ソフィアは攻略したがその後ろで物凄形相になってる姉上の下へ向かう


「...ソフィアだけずるいわ」

どうやらいじけてるらしい。かわいいなおい

「姉上も僕でよろしかったらなにかしてあげますよ?」

「い、いいの!?」

姉上の表情が子供みたいにぱあっと明るくなった

改めてかわいいなこのやろう


「え、えぇ僕でよろしければですけど」


「...わ、わかったわ。アクセルのこと信じてる....えへへ」


そんなことをいいながら姉上の表情は誰から見てもにやけてる

この人、本当に姉上なのかってぐらいの疑問が出た


「アクセル」


「あ、兄上」

兄上は少し気まずそうにしながらも俺に話しかけてきた

「おそらくアクセルが混沌の魔女に会うことができるのは、その得体に知れないなんかだ」


「...気づいてましたか?まだまだですね僕も」

この得体のしれないなにかは虚無力のことだろう

できるだけ出さないように、してたが難しいな


「僕があのときアクセルに問い詰めたのは家族をまもるためだ。だからアクセルも大切な家族だと思っている。だから」


そんなことを言いながら、アクセルのことを抱きしめた

「必ず帰ってきてくれ。それが兄として僕にできることだ」

「兄上...」

家族を大事にしているののは変わらないということか。

少し恥ずかしい思いを隠しながら


「はい、必ず帰ってきます兄上。」


そう言い放ち暫く兄上と抱きしめた。





「父上、母上ご迷惑かけること心から謝罪します」

そんなことを言うと彼らは当たり前のように

「「息子の頼みなんだから当然(だ)よ」」

と二人同時に言ってきた。


俺もこんな家族がほしかったなと心のそこからそう感じた。

「アクセル」

母上は急に俺のことを呼んできて、申し訳なさそうに

「本当にごめんね本当なら、私がやることなのに...ローレンス様のことお願いね?」


「...えぇおまかせください」

自分の道を進むだけの俺だが、ローレンスのことを思ってるのは俺一人だけじゃないと強く実感し絶対成し遂げることを改めて決意する。




そして、二週間後

俺は禁句の魔導書の中に入っていくのだった。






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