第14話 騎士と玉座に座る悲劇の女王




門をくぐって城を入った後に俺が感じたのは、一言で言えば「異質」だった。


 まるで迷宮のような迷走を強いられている。闇が支配する廊下を進むたびに、足元には荒れ果てた床が広がり、その先には薄汚れた壁が立ちはだかる。灰色の光が幽かに差し込み、影が不気味に伸びる。時折、遠くから聞こえる不気味な囁きが空間を満たし、脈動するような不穏な静寂が包み込む。かつて栄華を誇ったであろう装飾や彫刻は、今や朽ち果て、その美しさも忘れ去られた過去の遺物と化している。その空間にいると、まるで自分自身が幻の中にいるような錯覚に襲われる。



混沌の魔女が作った哀しき世界はまさにそんな廃墟となった城のことを一生忘れないように、自分の罪なのかを伝えられてるような

場所だと今は感じる。


そんな場所になにかが現れ始める

夜の闇が城を覆うとき、古びた廊下には異様な気配が漂い始める。冷たい月光が石壁に反射し、そこに現れるのは騎士の甲冑を纏った奇怪な魔物たちだ。彼らの姿はかつての城の守護者たちを彷彿とさせるが、その実態は遥かに恐ろしい。


その甲冑は錆びつき、血のような赤黒い汚れがこびりついている。動くたびに金属が擦れ合う音が響き、静寂を引き裂くその音は耳に不快な寒気を感じさせる。兜の下には眼窩がぽっかりと空いた骸骨の顔が覗き、暗黒の瞳が不気味に光る。その眼差しは死をもたらす冷たさを帯びており、生きた者の魂を射抜くような鋭さを持っている。


歴戦を感じさせるような者たちが、今俺の目の前に何体かが立ち塞がった

「この中にも魔物みたいな化け物がいるのか....お前らにもお前らなりの事情があるのかも知れないがな」


俺は刀を目の前の敵に向けて言い放つ


「俺にはやらなきゃいけないことがあるんだ。それの邪魔をするなら....それ相応の覚悟があるってことでいいんだよな?」


少し圧を出して言ったが、騎士のような化け物はそれに臆せず俺の前に剣という刃を向ける。


「受けて立つというわけか。上等だ、その敬意を持って相手をしてやるよ」


それを言ったのが合図なのか、俺と騎士みたいな化け物達が同時に動き始めた

先手を打ったの騎士共だった。

何体かのうちの二体が剣を振り上げて全力で叩き斬るかの如く一撃を放ってきた

まともに受けるのは得策ではないと考え、俺は移動速度を上げてその騎士の横を通り過ぎて避ける

二体のうちの一体に通り際に刀を振ろうとしたら、ガキンッ!!となにかを打ちつけたような鈍い音が響き渡る。そこにいたのはまるで城壁のような盾を持った重騎士だった。そして攻撃を防がれた瞬間、俺の方に炎のような物体が飛んでくる。

虚無力を使っても良かったが、あまり消費もしたくないと思い後ろに飛んで避ける。

奥に目を向けるとそこにいたのは、杖のような物を持った甲冑の騎士である。


...なるほどな。バランスの良いパーティーと戦ってるみたいだ。

近接戦闘をあのロングソードを持った二体、おそらく主なダメージソースはあの二体だろうな。だが攻撃されそうなところをあのでかい盾を持ったやつが防ぐ。

その隙に後ろにいる魔法使いが魔法を打つって感じだ。


消耗戦にも対応できる典型的な組み合わせだが、それが相手だとこれほど厄介なことはない。


「だからって勝てないわけではないけどな」


俺は刀を納め、居合の構えをする。とりあえずまず狙うべきなのは――――


俺はそこに移動するため攻撃には意識せず、ただそこにたどり着くことだけを考えて走り抜ける

途中ロングソードを持った二体に前後で挟まれたが、レイスの時みたいに股の間をスライディングで駆け抜け、二体を同士討ちさせる


盾を持った重騎士が前に立ち塞がったが、こいつはおそらく移動速度自体は早くないと考え、そのまま突き抜ける。

重騎士の後ろを駆け抜けた後、目的が分かったのか重騎士は急いで俺の所に向かおうとするが、俺の予想通り移動速度が遅く追いつけない。


そして、俺の目的を知った残りの二体も後を追いかけるが、もう遅い

俺の狙いは———



「まずはお前だな」


魔法使いは慌てて、俺に炎のような魔法を何発も打つが、簡単にそして最小限に避ける。アクセルの特性上、相手を見ただけで弱点、癖を分析できる。

さっき放った攻撃を「見た」ことで、そいつの魔法を打つ癖を認識したのだ。


俺は避けて避けて、たまに目の前に来た火球を刀で切り、そして目の前まで近づいた魔法使いを———



「居合——『陰縫いかげぬい』!」


その居合から影のように下から伸びる抜刀はやがて相手の弱点を正確に捉え——


ザシュッッ!!


——刀が相手の胴体を斬る音が静かに響き渡る

影縫いに捉えられた甲冑を着た魔法使いは

血を大量に出し、やがて抜け殻のように倒れた。



俺は後ろにいるであろう相手に振り向き

不適な笑みを浮かべる。


「安心しろよ?そんな動揺しなくてもすぐにあいつの元へいかせてやるからよ?…かかってこい」


俺がそう言って動いたのはロングソードを持った1人の騎士と図体が盾を待った重騎士だ。


重騎士が俺を力任せにそのでかい剣で振ろうとするが、正直遅い。

俺はそれをただ身体を傾けて避ける。

次にロングソードを持った騎士が俺に斬りかかる、がそれを俺は軽く受け流す。

何度も、何度も相手が疲れるまで。

そして判断力が鈍ったのだろう。ロングソードを持った騎士は力任せに剣を振り下ろす


後ろを確認すると俺の隙をついてデカい剣を振ろうとする重騎士。

これを少し利用することにする。


俺はロングソードを持った騎士の攻撃を軽く身体を傾け躱わし、後ろに回り込んで相手の胴体を軽く蹴った。


すると、ロングソードの騎士はバランスを崩し、前へ倒れ込もうとする。なんとか転ばずに済んだがそこにいたのは……


俺の隙をつこうとした重騎士の攻撃だ。

重騎士の勢いは止まらず、かといってロングソードの騎士もバランスを崩そうとしてたため

避けることが出来ず……


ズシュッッ!!


相手のでかい剣がロングロードの騎士を斬り捨ててしまった瞬間だ。まさに仲間割れだな。

ロングソードの騎士は斬られた後、力なく倒れていった

重騎士は動揺しただろうか、動きを止めてしまう。それが彼の最後の瞬間とは知らずに……


俺は動きを止めた重騎士の懐に入り込む。

すぐに対応出来なかったのだろう、そのまま身動きが取れず……。


「お前がどれだけ硬くても、頭は柔らけぇだろ!」

俺は重騎士にその自慢の刀をその頭に突き立てる。


「『烈風の一矢れっぷうのいっし』!」


重騎士の兜の隙間に一瞬の勢いで俺は刀を突き刺した。

流石に弱点を突かれた重騎士はそのまま力なく地に倒れ込んだ。


魔法使い、ロングソードの一体、重騎士を倒した俺は残ってるであろう一体に声を掛ける。


「…後はお前だけだな?」

だが、恐怖を感じないのかもう一体のロングソードを持った騎士は俺に剣を向ける。


「最後までやろうってことか?…なるほど、なら俺もお前に答えてやらないといけないか」


俺はその血まみれになった刀を相手に向ける。それが相手に向ける敬意だと思ったからだ。


そして騎士と俺は同時に動き出す。

刀と剣から鈍い音が響き渡る。刀と剣が打ち合っている証拠だ。

ただそこにあるのは、戦略でも作戦でもない。己と己の力の技術のぶつけ合い、お互いの力量を隠さず全力で相手にぶつけるという純粋な勝負だ。

負けない、負けたくない、勝ちたい!そんな両者の思いがこの打ち合いを長くさせる。

だがそれも束の間、一瞬でアクセルは相手の癖、弱点を見抜きそこを崩し始まる。

騎士は最後まで食らいついたが、その圧倒的なる技術の前にはどうすることも出来なかった。


やがて騎士は力なく地に伏せ、そしてようやく全員を倒し切った。


「なかなか面白い経験をさせてもらった……この経験は絶対力になる」


アクセルはそう呟き、お前達の戦いは無駄にならないと言わんばかりに俺は彼らの亡骸を通り抜け、目的地へと進んでいくのであった。











あの後も引き続いて先ほどの騎士達や化け物が出たが、俺は特に気にせず倒していき、そしてついに目的地のところに着くのだった。


「ここか…にしてもでかい扉だな。流石は王の間ってところか」


俺の目の前にあるのはその威厳で訪れるもの達を圧倒してしまう様な大きな扉だ。


きっとここは名のある国だったのだろうと俺は思い、そして目的の人物に会うためその扉を開ける。


王の間の扉が開くと、そこには異様な雰囲気が満ちる空間が広がった。外の世界とは異なり、そこには混沌とした風景が広がっている。色とりどりの物質が混ざり合い、精神を振り乱すような感覚をもたらす。

本来何もない本の世界がこれほど不気味なところになった原因にでもなったかのような、

それほどまでの雰囲気をこの空間からは醸し出していた。


そんな中で部屋の奥に玉座に座っている1人の少女が静かに座っている。

まるで御伽話に出てくるお姫様みたいである。だがその雰囲気は決して良いものではなく、ただただ壊したい、破壊したいという意思が伝わり、この世界を憎んでいるかのようなそんなオーラを身に纏っている者が俺のことをじっと見ている。


「……」


少女はただただ俺のことをじっと見ており、俺もそれに応えるようにじっと彼女の事を見続ける


沈黙の中、最初に口を開いたのは少女の方だった。


「……驚いた。まさかこんな場所に人間がいるとは…くくっ歓迎しようぞ、人間。我の名はローレンス・アンドレ・ライファス

この空虚なき世界を作り出し、その頂点に立つ王である。」


ローレンスの美しい姿に触発され、俺もそれに答えなければと思い、口を開いた。


「私も貴方に会えて光栄ですローレンス様。そして初めまして、アクセル・アンドレ・レステンクールでございます。」


「〜〜!!」


何故が一瞬ぱぁっと表情が明るくなった気がしたが、気のせいだろうか?まぁ気のせいだろう。悲劇の運命を辿った子とはいえ一応裏ボスとして存在している者だ。

まだ本編に入ってないが、その憎しみは抑えられるはずが———



「して、アクセルという者よ」






















「————我と共にこの空虚なき世界で楽しまないか?」








———そんなこと、あるはずない……よね?







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