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エイキが地面を蹴り、直線で向かってきたのと同時に、サイカは座っていた状態から手で床を思いきり押し、エイキの一撃を宙返りで交わした。だが、飛び上がるのは自殺行為に等しい。着地までの時間が長い為に、サイカの着地に合わせ、エイキは既に第二撃に移っていた。
「そこまでだ。 死ぬか、話を聞くか選べ」
二人の間に割って入ったのは、シンエイだった。エイキは不覚にも、背後から首に薄刀があてがわれ、更にはエイキとサイカの間に、身体を半分捩じ込ませた体勢で、サイカの喉元にも
言葉には、かなりの苛立ちを含んでいて、エイキとサイカの首からは、赤く細い筋が流れている。
エイキは何が起きたのか理解が及ばず、その状況と、怒りを含んだ殺気に身動きがとれない。
サイカは、既に臨戦態勢を解除し、両手を頭の上で組み、声を絞り出した。
「ご、ごめん。 話し聞くから」
シンエイは、サイカに突き立てていた
エイキは負け知らずだった。軍学校に通わずとも、飛び抜けた戦闘のセンスと、恐れ知らずな特攻は、恐ろしい早さで軍功を上げていった。特殊暗殺部隊という、表に名をあげることもない、実態のない存在ながらにも、戦場には噂が立っている程だ。
小さな人影を見たら死ぬという、怪談の類いであるが、その実は戦場を駆けるエイキだ。〈
戦場に出ると、必ず返り血で全身を赤く染め、その凶悪な目付きと、幼過ぎる少年兵の見た目から、付けられたものだった。エイキがその名前で恐れられるようになった時、まだ十歳にも満たなかった。
「あっ、ゔ。 僕は、負けてない。 お前、何者だよ。 ただの、訓練兵じゃないだろ」
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