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 第三世代の、人を殺す為だけに与えられた特殊な力が二つある。指先の細胞を石灰化せっかいかし、硬化させる月白手げっぱくしゅを経て、更に爪は石灰化した指に削られながら伸びて鋭利になり、薄刀はくとうとなる。


 月白手げっぱくしゅは打撃や盾として使い勝手がよく、薄刀はくとうは暗殺に特化した能力である。新陳代謝を局所的に活性化させる為、すぐに石灰化も剥がれ落とす事も可能で、欠点らしい欠点はないが、変化させるのに要する時間には、数秒程度の個人差がある。


 シンエイとサイカに、緊張が走る。エイキの殺気は重苦しく体に絡みついてきて、呼吸をするのもやっとだ。


 だが、サイカはその極限の中でも対抗しようと、右手を薄刀へと変化させる。一秒未満でサイカの手は鋭利な薄刀はくとうへと変化した。これは第三世代でも、最速である。


 それを見たエイキの口角は上がり、肌が粟立つような、不気味な笑みを見せていた。


 どちらかが少しでも動けば、殺し合いが始まる。サイカは覚悟が決まったのか、落ち着き、エイキを見据えている。一方でエイキは、不気味な笑みを浮かべたまま、隙を伺っている。


 シンエイは、サイカの横でただひたすらに、浅い呼吸を繰り返していた。二人の極限の殺気に晒されて、動けないでいるのか。


 エイキは、痺れを切らし、乾いた上唇を舐め、動こうとした。だが、サイカは見逃さなかった。直感で動くタイプのエイキには、意図せず、攻撃に移る際に瞬きを二回連続する癖があるのを知っていたのだ。


 狙うは最短で頸動脈だが、それはお互いに想定しているだろう。

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