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「あ、ほら。 もしかしたら第五世代が班に補充になるかもよ? それなら戦力的に大幅にアップするかもしれないし、いいんじゃない?」


 笑いを堪えていたシンエイも、不機嫌になっていたサイカも、固まったかのように動きを止めた。そんな二人に対して、エイキは首を傾げたが、シンエイが、真剣な面持ちで、身を乗り出した。


「それは絶対に有り得ない。 まず教官たちが別世代を、同じチームにするはずがない。 第四世代が入校して、どれだけ大変な思いをしたか……。 俺は思い出したくねえし、同じ思いはしたくない」


「うん、あれは本当に酷かったよね。 僕も正直、思い出したくない」


 シンエイとサイカは、拳を握り、深刻な表情を浮かべた。


「何、何があったの? 僕だけわからないんだけど、話についていけないんだけど。 第四世代の事は、誰も教えてくれなかったし、外に情報出ない内に、第四世代は消えたし、この際に教えてよ」


 エイキは、まるで駄々を捏ねた子供のように甘えた声を出した。


「駄目だよ。 これは、九坂くさか学校関係者と、軍上層部と研究所しか知らない。 口止めされてるんだよ」


 サイカが宥めるように言うが、エイキは、黙り込んで下を向いたまま数分、微動だにしなかった。やっと口を開いたと思ったら、目は深い闇を孕み、顔は青白く、発せられた声に抑揚はなく、一切の感情は感じられない。


「僕はさ、知りたい事は殺してでも知りたいんだよね。 例え寝食を共にした仲間であっても。 同じチームの仲間であってもね。 君たち二人を殺すのは骨が折れそうだ。 今日みたいに、隙をつければ一瞬だけどさ。 学校側も、君たちを失うのは痛手だろうね、全学級で見ても即戦力な上、技術はトップクラス」


 エイキは立ち上がり、脱力した状態で、少し前傾姿勢をとった。だが脱力しているはずのエイキの手は、筋や血管が浮き出ていて指先は白く変色し、爪は鋭く伸びていた。

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