第3話「夏のバーガークィント」

夏休み……

俺は暇してる小鈴や里桜、宗治、張間を連れてバーガークィントに来ていた。

他にも誘ったが、時間が合わなかったりでこの面子となってしまったのだ。


「流人……言いたいことがあるんだ。」

「なんだよ、張間。」

「炸裂すればいい。」

「ふざけんな、もう誘わねえぞ。」

「なんで奏といい、宗治といい、お前らそんなモテんだよ!ハーレム大国が!!」


ズビシッ、と人差し指を突きつけられるが、俺は知った事かとばかりにタバスコのビンを開けて張間のハンバーガーに真っ赤になるまで振りかける。


「俺のラム肉バーガーがぁっ!?雨宮、何とか言えよ!里桜ちゃんでもいいから!」

「そんな事言われてもねー?」

「ねー?」


と、足の間に座ってる里桜が、小鈴に楽しそうに返す。

最近、奏の事を言えないのかもな……と思うが、もう今更なのだろう。

ある事件がきっかけで外でも甘えん坊になった里桜を止めることなど最早不可能だった。


「張間ー。誰がモテるって?そうかー、そのふざけた口が言うのかー。そのまま開けてなよ、残りのタバスコを直にぶち込んであげるから。」

「何でだよ!お前、木吉とか九重といるじゃねえか!ハーレ……か、辛い!辛いよチャーリー!?」


暗い笑顔を浮かべる宗治によって、口に直接タバスコを注がれる張間。

九重はともかく、木吉とラブラブなんて言うからだろう……と呆れて溜め息を吐く。


「そう言えば、椿君は元気にしてるのかな?」

「してるだろ。アイツが元気じゃなかったら、それはもう椿奏じゃない。」

「変な言い分だけど、たしかにそうかも…。流人、ポテトちょうだい?」

「……自分で食いなさいよ、まったく。」


恋人でもないのにベッタリどころかベットリな里桜の口元にポテトを持ってくと、美味しそうに咥えるので、何となく流れで頭を撫でる。

柊さんを甘やかしてる奏は、こんな気持ちなんだろうか……。


「あー……、かれぇ、かれぇよ。目の前の光景は甘いけど……。」

「うるせぇ。海外から1万くらいする辛いソース買ってきて原液で飲ませるぞ。」

「死んじまうわ!?」

「まあ、うるさい張間は置いておいてさ。「置くなよ?!」今度、奏も誘わない?久々に顔を見たいからさ。」

「そうだな、誘うか。」


やかましく騒ぐ張間を無視して、宗治がそんな事を口にするので俺も頷く。

こないだ会ったとはいえ、折角の夏休みなのだ。

上坂でも池塚でもいいから、皆で予定を立てて盛大に遊んでみたい。


「……けどよ。アイツ、あんな彼女いっぱいいるんだぞ。俺らの相手しないで、きっとエッチな事を……って、いってえ!何すんだよ!!」


品のない事を言う張間に全員の拳が炸裂する。


「そういう事言わないの、張間くん!」

「おう、ごめん……?」

「そうです!先輩がそんな事出来る訳無いじゃないですか!」

「そうだな、ごめ………ん?」


小鈴に怒られ、里桜の言葉に謝りかけて張間が首を傾げるが、そんな事を気にせず、俺も畳み掛ける。


「そうだぞ。アイツは江崎どころか、最早聖皇でも最強のヘタレ男だぞ!何て事を言うんだ!」

「あ、ああ?そう……だよな、うん……すまん。」


「何故、俺は怒られてるんだ……?」と、困惑の色を張間は隠せないが、今度は宗治もそこに加わる。


「お前はだからモテないんだよ!もうちょっとこう、仲間とか友達を大事にしろよ。バスケ部の副部長だろうが!」

「……ああ、悪かった。そうだよな。仲間を大事に出来なくてチームを引っ張って……いや、どう考えてもお前らの方が酷いことを言ってるよなぁ!?」


遂に自分が悪くないと開き直った(?)張間が言い返してくるが、それでも俺達は止まらない。


「アイツは六条先輩みたいな美人と風呂に入っただけで鼻血吹き出して数時間伸びるようなポンコツだ!お前みたいに邪な存在では断じてない!」

「なんか酷いことサラッと言われたけど、お前らもう少し奏の事を大事にしろよ!?」

「開き直るな!友達を大事にしろ!!」

「お前らが言うんじゃねえっ!!」


わざと噛み合わないようにしている宗治と張間の言い合いを聞いて、顔すら知らないであろう奏の事を思い、他の客が涙するのを俺達が知るのは、もう少し後の事だった。

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