第3話 五月(さつき)ちゃんとの出会い

成井「、、、駄目だ。桂木のやつ実家にもいない」

告別式は、あと一時間で終わってしまう。

私たちは、手分けして先輩の家や友人、高校の放送部顧問の竹田先生にまで連絡を入れてみたけど、、、

成井「桂木のお袋さんが言うには、4日前に実家から大学そばのマンションに引っ越したって。電話繋がったら連絡来るはずが来ないって」

平田「4日前って、、、」

最悪だ、、、先輩は引っ越しの直後、たった一人で劉ちゃんの訃報を受け取ったのか。

成井「駄目だ。教えて貰ったマンションの電話、話し中のまんまだ!」

どうしようもない焦燥感の中、劉ちゃんの告別式は、幕を閉じた。

ーー

ーー

平田先輩が倒れた。後輩の死、仲間の行方不明、元々身体の弱い先輩には耐えられなかったのだろう。

恋人の安否を優先せざるを得なくなり、ひたすら謝る成井先輩に頷き返して私は横浜を離れた。目指すは、、、新宿!!

ーー

ーー

?「錦野さんですか?」

待ち合わせ場所に現れたのは、、、かわいい小学生だった。こう言ってはなんだけど、お兄さんには全く似ていない、、、ううん?どちらかと言うと、初めて会ったときの中学一年生の劉ちゃんに似た。

五月「桂木 五月(かつらぎさつき)です。マンションの鍵を持って来ました」

ーー

ーー

当然のように一緒にマンションに行くと言う五月ちゃんを私は止めた。

、、、本当は二人で行ったほうが良いのではと最後まで考えたんだけど、、、

劉ちゃんの夢枕から最悪の事態が浮かんできてしまうから。

錯乱しているかもしれない先輩が、劉ちゃんの面影を持つ五月ちゃんに襲いかかったら?ううん、最悪、先輩の身に何かがあったなら。

「五月ちゃん、マクドナルドで一人で待てる?必ず報告に戻るから!」

五月「錦野さん、お兄ちゃん、、兄に何があったのですか?兄は確かにここ一年ほど情緒不安定なときがありました。でも、引っ越しのときは、、希望に燃えていて、、あたしもお母さんもきっと憂い事が解決したんだって、、」

「、、、」

先輩が明るかったのは理由がある。

今となっては劉ちゃん最期の手紙、そこには

「新しい治療法が見つかった!今度のは上手くいったら完治だよ!!」

と記されていたんだ。

「五月ちゃん、お兄さんにはね、大事な人が、彼女がいたんだ。その子がね、、亡くなったんだ」

ーー

ーー

五月ちゃんと別れて一人、新宿幡ヶ谷の小綺麗なマンションのオートロックを解除して、私は303号室に向かう。

鍵はある。だけど私はマンションの扉を叩き続けた。

「先輩、、先輩!!いるんでしょ!?」

先輩が劉ちゃんの告別式に来ない?あり得ない!

万死に、、、万死に値する。だって、、だって、劉ちゃんはきっと誰よりも!!

「先輩、、先輩!!、、さっさと、、さっさと開けなさいよ!!」


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