第2話 先輩は本当に告別式に来なかった
4月の雨は、時に嵐になる。
劉ちゃんの告別式は、そんな天候の中で執り行われた。
名字の示す通り、劉ちゃんは中華系。横浜中華街に実家を構える華僑のお嬢様。
劉ちゃんは、横浜の中学校であたしと出会い、同じ高校に進学してすぐ白血病を発症し、闘病生活を繰り広げた香港の病院で息を引き取った。
だから告別式といっても、劉ちゃんの遺体は骨になってしまっていて。
「(劉ちゃん、、、)」
遺影の写真には見覚えがある。
まだ発症が分からなかった7月の夏の日差しの中、球技大会の赤組の応援団に彼女はいた。
軽い化粧を施した劉ちゃんの端正な小顔は、信じられないような美少女と化していて。
写真部が捉えたこのショットは、その年の高校写真コンクールで銀賞を受賞して、、、今、その笑顔は大きく引き伸ばされて私たちを見ている。
「(劉ちゃん、、、悔しいよ、、何でだよ、、)」
高校の、中学の、、多くの仲間のすすり泣きの中、
「(約束、、、先輩を、、、探さなきゃ!!)」
ーー
ーー
成井「錦野、、、」
平田「ゆうこちゃん、、、」
そこには、お世話になった放送部の先輩カップルが。
成井「錦野、、、桂木を見なかったか?いくら探しても見つからないんだ」
「え、、、?」
ーーー
ーー
ー
ー(昨日 夜)ー
「先輩を救ってって、、、あんたが夢枕に立てば良いじゃない!こんな風に」
劉「出来るんならやってる、、、」
「え、、、?」
劉「立てないの、、全然立てないの、、、多分、先輩は一睡もしていない、、、」
そんなバカな!あたしでさえ劉ちゃんの死を知って3日経っている。劉ちゃんの実家と物凄く懇意にしていた先輩のところには、もっと早く、、、それこそ死亡直後には連絡が入ったはず。
劉「ゆうこ!お願いだよ、、、先輩を救いに行って、、、もう一刻も余裕が無いんだよ」
「、、、、」
劉「、、、もしかしたら、先輩おかしくなってるかもしれない、、、危険かもしれない、、、でも、頼めるのゆうこしか」
「え?やだ」
劉「ゆうこ~~うらむよ~?」
「先輩おかしくなってんの?そんなのの相手やだ!恨まれてもやだ!」
劉「じ!じやあ賭けをしよう。先輩は明日の告別式には来ない!」
「え?劉ちゃんの告別式に先輩が来ない?そんなの許される訳無いじゃん!絶対来るって、成井先輩あたりに引き摺られてでも」
劉「じゃあ先輩が来なかったら、ゆうこは身体を張ってでも先輩に会いに行って!もし先輩が来たらなんでも言うこと聞いたげる」
「何でも?」
劉「何でも!」
「じゃあ、生き返って、、、」
劉「、、、、」
「生き返って!!約束だよ?劉ちゃん!!」
劉「、、、分かった、その賭け受ける!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます