第9死 初デート
「洗い物も終わったし、行こうか?」
「あぁ。
連と行きたいところがあるんでな。」
「そう?」
部屋の外に出て廊下を歩く。
すると派手なスーツを着た男とすれ違う。
「お嬢! デートですかい?」
「……マサ。」
「ん? どうしたんですかい?」
「どうして”でぇと”だと思う?」
「違うんですかい?」
「ほう、死にたいらしいな。」
銃をちらつかせる燐。
「うわっ! あっぶねぇ!」
逃げるマサ。
「燐!」
「ふふ、弾は入っていない。」
「え?」
「……お互い冗談だとわかっている。
よくあることだよ。」
「ふぇー……。」
「ここだ。」
「射撃場!」
「私はイーグルを使うが、連はどうする?」
「多すぎて選べない……。」
「私は何も言わないぞ。」
「あ、これカッコいいな。」
「……ふぅ。」
ひとつ息を吐くと口を開く燐。
「マクミランTAC-50か。
いい趣味をしているな。」
「ひょっとしてこれ、スナイパーライフル?」
「あぁ。
3540メートルの狙撃をした記録がある銃だな。」
「さ、さんぜん? 3キロ?」
「そうだ。
重量が11キロを超えるんだが、置いて使う銃だな。
撃つか?」
「なんかそんな凄いものじゃなくて
もっとポピュラーな……。」
「ウェザビーライフルか?」
「うぇ、うぇざ?」
「ここ日本でも狩猟で撃てるウェザビー・マークⅤがある。
ここにも無くはないんだが、
連はとは言わず片手では撃てないんじゃないかな。
重量がほぼ5キロなんでな。」
「うええ。」
「あとは反動が凄いな。
こちらも私の銃同様、肩を外した記録がある。
その記録ではコケて尾骶骨も折ってなかったかな。」
「燐の知識量が凄い!」
「私にしたら連の方が凄いんだがー……。」
「得意の差?」
「連はいつもいいように言ってくれるな。
そういうところが……、こほん。」
「ん?」
「いや、何でもない。」
気のせいじゃなかったらちょっと燐の頬が染まっていた気がする。
「燐だったらどんな銃を使う?」
「うーん。
今見ていると連はスナイパーライフルが好きなようだ。
私はスナイパーライフルはからっきしダメなんでな。」
「これゴボウみたい。」
「モシン・ナガンか。
ソビエトのスナイパーライフルだな。」
「僕、スナイパーライフルにしか惹かれてないね。
なんかもっと撃てそうな銃……、あ。
これカッコいい。」
「連の趣味がいいな。
スミス・アンド・ウェッソンM500だな。」
「よくすぐに名前出てくるね……?」
「そういや気にしたことがなかったな。」
「これ撃ってみようかな。」
「……本気なら止めないが。」
「え? 何かいわくつきなの?」
「不適切な射撃は射手の安全は保障できないという触れ込みの銃だ。
片手なんかで撃て……、いや両手でも撃てない銃だ。
何かに固定しないと撃てないぞ。
弾も弾で専用弾なんでな。
デザートイーグルよりも威力は上だ。」
「ひぇぇ……。」
「連は……、こういうの!
あぁもう!重い!
これが好きそうだな。」
ガチャリと燐が両手で取り出した銃は
お尻が箱型の四角っぽい銃。
「あ、可愛い。」
「これを可愛いというセンスがいい。
ワルサーWA2000だ。
対人狙撃銃なんだがな。
1985年から4年間しか作られていない希少性も高い銃だ。
高いうえに7キロと重くてな。
200丁も無いんじゃなかったかな。」
「それがどうしてここにあるの、どうして。」
「親父がマニアなんでな。」
「どれにしようかなー……。」
「殆どのものは揃ってると思うぞ。
同じものの数は少ないがな。」
「これカッコいい!」
「連、親父と趣味が似てるな……。」
「ん? なになに?」
「ウィンチェスター・M1887ソードオフモデルだな。
装弾数6発の散弾銃だが、元は大きくてな。
これなら片手でも撃てるだろう。
どこかの未来から来た人造人間が映画で撃ってたな。」
「よくそんなに知識があるねー……。」
「特殊すぎて生活の役に立たん。
連の知識の方がいいと思うんだが。
散弾銃は少々癖がある。」
「癖があるのかー。
まぁ慣れなんだろうけど。
この小さいのは?」
「ワルサーPPKだな。
これも7がつくどこかの映画の主人公の愛銃だな。
それは扱いやすいと思うぞ。」
「……これ撃ってみたい。」
「そこにゴーグルとグローブがあ……。」
言いかかってやめる燐。
「どうしたの?」
「連専用のものにしよう。
汎用で使っているものは私が嫌だ。」
「燐って潔癖症?」
「あれだけだらけた姿を見ていて潔癖症と言うか?」
「燐、血液型A型でしょ。」
「Aらしいが、何かあるのか?」
「拘るところに曇りがないっていうか、
拘りの差が激しいというか。」
「血液型で違うのか?」
「僕B型だもん。」
「Bだとまた違うのか?」
「一般的にはあんまりいい意味で使わないねー……。」
「連の凝り性も中々だと思うが。」
「そう?」
「あぁ。」
そんなことを話しつつ訓練が始まる銃撃。
奥の人型には全く当たらなかった。
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