B.大声で助けを求める

(この物語は、前章「不思議な店」の末尾でBを選んだ方の為にあります。Aを選んだ方は「A.勇気を振り絞り、巨人に殴りかかる」の方をお読み下さい)




 助けてくれ。


 貴方は大声で叫んだが、その声は周囲にむなしく響いただけだった。

 巨人の肩らしき辺りがわずかに動く。嘲笑しているようだった。

 怒りと、それ以上の絶望が貴方を押しつぶそうとする。


 だが、その時。落した本が開いた。ページから、赤い薔薇の花びらが吹き上がり、赤黒い空間の中で渦を巻く。


 薔薇の嵐の中から、幾つもの人影が現れた。


 彼らは皆、大きな飾り羽根をつけたつば広の帽子を被り、闘牛士のようなひだの多い衣装をまとっていた。全員で四人。いずれも長身の、容姿の整った男たちだった。

 四人のうち、三人が影に対峙する。

 残りのひとり、白い衣装の青年が貴方の横に降り立つ。

 青年が貴方の肩に触れる。何か暖かいものが伝わってくる。心が落ち着いてきた。


「助けを求めてくれて有り難う。我らは、守るべき方がいることで顕現できる」


 白い衣装の青年が、腰の剣を抜く。針を大きくしたような、鋭い細剣レイピアだった。


「さあ、共にやつを斃そう」


 青年と共に、その細剣を握る。

 巨人に向かって細剣を突き出す。細剣から光が放たれる。光に貫かれた巨人がよろめく。

 その光はますます強くなり、貴方は耐えられず目をつぶった──。

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