回想 海中での激闘とジーナとの出会い


 アオザメ一族は鋭利な歯と銛で上質なマグロを獲った者が長になる。俺や実弟・活発も長となるべく、奮励していた。


 「寡黙は良質なマグロを獲る」つやのある赤身を見た父が、豪快に笑う。「兄さんは俊敏だからなあ」活発が銛の首飾りを俺の背ビレにかけ「惚れた女性に渡すんだぞ」と小声で言った。

 「オールドマニー家だ‼」シロワニの長・泰然様の声が響き、旗に古い硬貨が刺繍された密漁船が次々にサメたちを海底へ沈めていく。

 「逃げろ‼」活発の絶叫が響き、銛が刺さった腹から鮮血が飛び散る。チョウチョウウオやウニたちも、岩の隙間に隠れた。

 銛で背ビレに傷を負いながら白く変色したサンゴ礁を通り抜けて廃墟に着くと、活発が息絶えているのが見えた。


 気力が湧かなくなり、海を眺めて過ごす日が続いた。各諸島を巡回し泰然様のもとで銛と弓、海中での救出訓練を積み、12年前にハンマーヘッド諸島のライフセーバーとなりジーナと出会う。当初はゲーム依存の影響で目は腫れ上がり、髪が伸び放題だったが、根気強く清掃に取り組む真摯さに惚れ込んだ。


 「ジーナ。水分を取ったほうがいい」割りばしとプラスチック製スプーンの回収を終えたジーナと木陰に移動し、天然氷入りのいよかんジュースを渡す。

 「この銛は、アオザメの武具なんだ」着けていた銛を外し、ジーナの首に下げる。「ありがとう」密漁船に安置されている活発に(無事に渡せたぞ)と報告した。



 「ギャーベージタウンに行って、がくぜんとした」「住人は8歳の男の子で、体に不可欠な栄養が足りていないんだ」漂着物の仕分けを終えた健太と五円が、小声で話している。

 「緻密、利発と登校途中にヒレから出血したお前を発見し、病院に直行。検査で化膿がなくてほっとした」「ありがとう」五円はヒレを健太の肩に乗せ、宿泊施設に戻っていった。

 

 


 


 

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