間章 貫徹の後悔と緻密の暴走
貫徹は発散できずにいた怒りを健太にぶつけたことを悔やみ、一途や牛肉弁当屋の次男で12歳のしらさと一緒に清掃活動が行われる海岸を訪れていた。「健太!」「お兄ちゃん‼」貫徹は使い古された鍋のふたにあごをぶつけ、砂まみれになってしまった。
「こんなに捜しても見つからない」肩を落とす父に、「パパ。このスニーカー、お兄ちゃんが買ってくれたんだよ」と一途が登校する時に着用している白いスニーカーを指差し、『支出記録』と書かれたノートを見せる。
『一途と父ちゃんの靴 1万円 玄関に置いておこう』『一途のグローブ 2000円長く使って!』最後のページには『父ちゃんに一喝されることが増加した。ゲームやめたい』と書かれていた。
「健太をほめることが少なくなってたな」貫徹はノートを閉じ、持参したタオルで涙をぬぐう。しらさが大盛りの牛肉弁当を出し「活力を出してください‼」と励ます。貫徹と一途は弁当を完食し「ありがとう」と笑顔を見せた。
6年生の教室では黒髪を肩まで伸ばし、銀色のめがねをかけている男子・緻密が熱中しているリズムゲームで高得点を出していた。
「廃人になっちまうぞ」しらさにゲーム機を取り上げられ、憤怒の形相で「俺からゲームを奪うな‼」と絶叫しながら椅子を蹴り倒し、窓ガラスを粉砕。破片がしらさのほおに刺さり、血がしたたり落ちる。「緻密!窓を割っちゃいか―――ん‼」黄色いメスのセキセイインコ・タルトの怒声が響いた。
「健太が失踪した。貫徹さんや一途と捜し続けてるけど、見つけられない」小声で言うと絶叫がぴたりと止み、冷静になった。
「どうして長時間ゲームに熱中するんだい?」しらさの手当てを終えたオスのセマルハコガメ・五円に聞かれ「同級生に認めてほしかった」と小声で答え、窓に取り付けたガラスに飛散・粉砕防止の網を張る。
「緻密。身だしなみとゲーム三昧の生活を改善したほうがいい」五円に言われ、不安そうな顔になる。
「健太の捜索に参加してくれ!」「わかった」緻密は健太がよく行く場所の情報を見やすくまとめた地図を作成・持参して貫徹やしらさたちと早朝の捜索に参加したが、手がかりはなにもなかった。
緻密は腰の激痛で河原に座り込んでブルーベリー入りのかき氷を食べながら、「7歳から早起きができなかった」としらさに打ち明ける。
「ゲームは適度にやると面白いんだよ」しらさはみかんの果汁入りかき氷を食べ終え、うなだれる一途の肩に手を置く。貫徹は気落ちし、石の上に座り込んだまま微動だにしない。
「しらさ、けがを負わせてごめん。牛肉弁当、今度買いに行く」「ありがとう。五円、健太に『顔が見たい』って伝えてくれ」「うん」五円は3人の伝言を甲羅に保管し、ハンマーヘッド諸島に向かった。
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