第3話
2機の自爆ドローンを先頭に迫撃砲やクラスター爆弾を搭載した20機超のドローンがこちらを爆撃してくる。
爆風が吹き荒れ、木々はなぎ倒され、鉄条網は一瞬で破壊される。
撃ち落とすにしても小さすぎてアサルトライフルでは当たりそうもない。
「こんな所じゃただの的になる。体制を立て直そう」
「そうね」
監視塔の階段を降り、基地の本部へと向かい後退する。
パン パン パァン ドォン
蝿のようにうるさく、そして大量のドローンが自分目掛けて迫ってくる。
小石すらも凶器となり、爆風とともにこちらの命を狙わんと皮膚を鋭く切りつける。
この世に存在するありとあらゆる物が命を奪おうと襲いかかってくる。
爆撃網を潜り抜け、砲弾を避け、掩体に身を隠し、降り注ぐドローンの残骸の間を走り抜け、炎上する監視塔を横目に戦場を駆ける。
敵はこちらに考える時間を与えてくれない。
止まれば、無事ではいられない。
……
―ヴェゾベツ空軍基地 基地本部―
「君たちにはこれでドローンを叩き落としてもらう」
第32歩兵旅団旅団長がKS-23K(ショットガン)を手渡してくる。
「「「「「「了解しました」」」」」」
旅団長曰くS-400などの防空システムも配備されてはいるものの、ミサイルの在庫がポーランド・ルーマニア戦線に回されており数が不足しており、撃ち漏らしたドローンを撃墜してほしいとのことだった。
こちらもやられているばかり癪に障る。
シュラプネル-25(KS-23K専用の弾の一種) を装填し、コッキングする。
さあ、反撃の時間だ。
―ヴェゾベツ空軍基地 基地屋外―
電子部品がパラパラと舞い散り、砲弾は周囲に降りそそぎ、鉄の雨となって衣服を赤く濡らす。
360°あらゆる方向に脅威が潜んでおり、気を抜いたら死ぬ。
「なんでこんなことになったんだか…」
2時の方向から、1機の爆薬を抱えたドローンがこちらに突進してくる。
ドローンに向け照準を合わせ、タイミングを見てトリガーを引く。
ドォン
「まずは1つ」
爆風が直撃すればただではすまない、1秒でも油断したら次の瞬間には吹き飛んでいるだろう。
それでも恐怖に飲まれてはならない。
全ては、祖国の為。
…
ドォン
「これで7つ目、少し攻撃が強くなってきたような…」
20分前よりさらにドローンの量が多くなり、各地で爆発音が鳴り響く。
ドローンの飛行音すらもかき消され、頼りになるのは視界のみ。
シューン
「っ!?」
死角から攻撃されたようで、反応が遅れる。
ドォン
直後に体が右に吹き飛ぶ。
衝撃とともに爆風に押され、地面に倒れ込む。
地面が抉れ、舞い上がった土がこちらへ飛ばされる。
「足は…腕はまだ残ってるか…?」
足と腕があることを確認し、立ち上がる。
ドォン
「あ゙ぁ゙ー!あ゙ぁ゙ー!あ゙ぁ゙ー!あぁ゙…」
「穴の中に伏せろ!」
爆発音と共に悲鳴が聞こえる。すぐさま駆け寄り、護衛にあたる。
「大丈夫か?何があった?」
「両手が…両足が…」
「酷い怪我…手足の骨が全部折れてる…」
「大丈夫か?」
兵士の1人がこちらに近寄って様子を見にきた。
「負傷者だよ。手足の骨が全部折れてる」
「ベストを持ってきた。彼をここに載せてくれ。あとは俺が運ぶ。」
他にも複数怪我人がいるようで、色々なところから悲痛な声が聞こえてくる。
「もうおしまいだ…俺の脚はもうだめだ…」
「泣き言を言うんじゃねえ、這って進め。自殺なんてするんじゃねえぞ」
「わかってるよ。さあ、他の奴の所に行け」
それでも爆撃は続く、私達を皆殺しにする為、攻撃は止む気配を見せない。
30分後
「収まった…かな?」
監視塔は灰となり、ミサイルの在庫が二桁になった頃、それまで続いていた激しい爆撃がピタリと止んだ。
「とりあえず本部に戻らないと」
―ヴェゾベツ空軍基地 基地本部―
「被害報告を頼む」
「監視塔、鉄条網のほとんどを喪失、本部施設にも少し被害が出ています。負傷者は5名。このうち1名は重傷です。また今回の攻撃で基地にあるミサイルの60%を使用しました」
「また攻撃があるかもしれない、今後も警戒を怠るなよ」
「「「「了解」」」」
……
少しして、教官に集められる。
「さて、今回の訓練は終わりだ。予想外のこともあったが、それに対応できてこその指揮官だ。今回のことは教訓にするように」
「「「「「「了解しました」」」」」」
Il-76に乗り、大学へと向かう。
色々あったが、やっと帰れる。
―Il-76 貨物室内―
「ねえヴァーリャ」
「なんだい?エカテリーナ」
「今日は色々あったわね…」
「そうだな、でも良い経験になっただろう?」
「そうかな…?」
「そうだよ。これで甘えを捨てられる。ここで覚悟を決めておくと、後で役に立つと思うよ」
「そうね。ありがとうヴァーリャ」
「どういたしまして、エカテリーナ」
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