第33話 渡辺 湊の場合
※本日2話投稿です※
「お前に勇者を決める権利を与えよう」
「俺が指名するのは神本鈴、もしくは坂堂晃だな」
「理由は?」
「勇者としてやっていけるのは、その2人だと思っているからだ」
あの日、優しい光の降り注ぐ雲の上で、神を名乗る者から状況の説明を受け、勇者を決める権利を与えられた。
中性的な神だった。
真っ白の服に妙に似合っているプラチナブロンドの髪。
確かに神だったのかもしれないけど、勇者を決める権利とは何だったのか。
結局2人は勇者ではなかった。
召喚されてからあきらと一緒にいたが、勇者ではなかった。そもそも勇者が見つからないという事態になっている。
現状、勇者候補と呼ばれる俺たちの中で、最有力なのは嶋野大雅だ。
約束の剣と呼ばれている剣をひときわ光らせて、闇と邪以外の属性で適性を見せた。
最初は神が嘘でも吐いているのではないかと思っていたが、魔法を使えば剣を光らせるくらいは光属性の適性があればできるだろう。
だから嶋野が勇者最有力だと思われているのは、違うと思う。
確かに、多様な属性に適性があるかもしれないが、過去の勇者の事を調べていくうちに分かったことがある。
全属性であったとか、闇属性に適性を示したとか、そういうものが見つかったのだ。
だからこそ俺は、もう一度あきらと生徒会長のどちらかが勇者だと疑っている。
生徒会長が勇者であった場合、隠すような理由があると思う。それこそ、嶋野が勇者だと思われているから、その状況を上手く利用したいような何かがあるんだろう。
あきらが勇者の場合、現状のように訓練に精を出して、逃れられない責任感から強くなっていくと思う。訓練の邪魔されて騎士にキレるくらいだからな。
俺の推測は案外間違っていないんじゃないかと思う。
あいつは生徒の間で毛嫌いされているだけで、先生からの評判は悪くない。
先生たちはあきらに頼みごとをするし、面倒くさがるだけで、あきらはそれを受ける。
委員会の仕事だって黙って熟していた。会話するような友人がいなかったからかもしれないが、やるべきことはやる奴だと思っている。
だからこそ、やるべきことが勇者という役目で、その責任感から他の人より厳しい訓練を続けているのだとしたら。
そう考えると勇者かもしれないと思う。
ただ。
続けて考えようとしたとき、そんなことがどうでもよくなるような微睡に襲われた。
今日は休日、訓練も無い。
開けていた窓から暖かいような冷たいような空気が吹き込んで、気分が良い。
こういう日は、寝て過ごすべきなんだ。
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