第28話
「上位種は真ん中に固まっていますから、連携を取られないように離しましょう。坂堂さんは上位種の戦闘に通常種が入ってこないようにお願いします」
「わかった」
「魔法で奇襲してから突撃します。魔法の用意を」
生徒会長の言葉に従い、全員が得意な魔法を用意していく。
俺は影分身を5体用意して、土の弾を準備した。
生徒会長は先頭に立ち、後ろを振り返ることなく、剣の切っ先をオーガの方へ向ける。
「魔法撃て! そのまま突撃!」
誰よりも勇ましく、オーガに突撃を始める生徒会長。
共に戦う細川は少し遅れ気味だが、前回とは違い走っている。
各々の魔法はオーガに命中はした。上位種は全員が防御しており、少しケガしたくらい。
しかし通常種は土の弾を受け、ほぼ死にかけだ。
いつも以上の魔力を込めたのが結果として出たのだろう。
影分身を通常種に向かわせて足止めしている間に1体ずつ倒していく。
死にかけのオーガには走りながら、土の弾丸を撃ち込む。
通常種は残り5体。
次のオーガは実戦で初めて使う刀だ。
前の刀よりも使いやすく、武器強化の魔力の循環は違和感なくできた。
影分身に攻撃を当てることが出来ていないオーガを後ろから切る。
オーガに対して、高橋と桐島は武器強化の出力を上げる必要があった。
俺は刀の試しとして、いつもと通りの強化で切ったのだが、想像以上に切れている。
質が良いと楽に魔物を倒せるわけか。
切られて瀕死のオーガを見て、短剣を影分身に渡してトドメを任せる。
そのまま残り4体のオーガを新しい刀の実戦相手とした。
刀身が少しだけ長く、分厚くなり重量は増した。逆にそれが良かったのか力むことなく刀を振ることができる。
どのオーガも肉だけを切り、無駄な魔力消費をすることもなかった。
通常種との戦闘を終え、影分身を周囲に散らせる。
影分身に刀を渡して、弓を構えながら上位種と皆の戦闘を観察していく。
さて、援護が必要な人はいるのか。
2本角で首飾りをしたリーダーと戦闘をしている生徒会長と細川。
生徒会長は接近戦をしており、剣と盾で攻防一体と言わせるような戦闘をしている。しかしリーダーの攻撃を盾でまともに受けてしまう時があり、細川はそういう時に魔法を使い援護に徹しているようだ。
この2人は問題ないな。
次は、3本角で大きな杖を持ったオーガと戦闘をしている倉田と水上。
どうやら、この上位種は魔法を使うオーガだったようで、倉田の攻撃を杖で防御しながら、水上の魔法を迎撃していた。
それでも攻撃にまで意識が回っていないらしく、このまま持久戦で勝つことができると思う。
その2人の隣で戦闘をしていたのは高橋。
拳の大きな1本角は素手で攻撃する上位種だったようで、手数で言えば高橋と同じだ。とはいえ剣と拳で出の早い上位種の方が少し有利だ。
それに下手な攻撃に耐えられる強さを持つオーガは人間よりも肉体性能に勝っているだろう。
高橋も自分より少しだけ強い敵との戦闘が楽しいのか、チラッと見える顔には笑みが見える。
それでもオーガが切り札を隠していた場合、均衡は一気に崩れるだろうと考え、弓に矢をつがえた。
どのタイミングで矢を射ろうかと考えていると、1体と1人の戦闘は止まり高橋が俺を見て首を横に振る。
オーガもそれを律義に待っているあたり、何かしら通ずるものがあったのだろう。
高橋に頷いて、桐島に視線を移した。
桐島の相手は棍棒を持っている2本角のオーガで、見たところオーガの方が優勢だ。
棍棒を持っているが動きは素早く耐久力もあるため、多少の魔法を気にしないオーガ。
桐島は一撃重視の長剣を使っているため、このオーガは相性悪そうだ。
矢をつがえ、いつでも射られるように準備をしていると、長剣の攻撃を防がれた桐島が魔法で攻撃しながら距離を取ろうとした。
別の魔物であれば問題はなかっただろうが、オーガには絶好のチャンスだ。
魔法を受けながら最短距離で、桐島に近づいていくオーガへ矢を放つ。
肩に矢を受けたオーガは一瞬俺を見たが、すぐに桐島へ視線を移すことになった。
長剣の周囲が陽炎のように揺らめき、それを見たオーガは咄嗟に棍棒を盾にする。
振り上げられた長剣はオーガに届く距離ではなかったが、振り下ろされると同時にオーガの倍はある剣の形をした岩になった。
棍棒を体の前から頭の上へ動かしたオーガだったが、圧倒的質量には勝てず、棍棒ごと押しつぶされてしまう。
視線の先の桐島が一息ついて周囲を見ると、他の戦闘は全て終了していた。
一先ずグループで集まり、全員がケガを負っていないことを確認する。
「問題ないようですね。誰ひとり怪我無く私たちは実戦を終えられました」
「いやー、ホント桐島は見ててヒヤヒヤした」
「うるせー、俺だってヒヤヒヤする戦いしたいわけじゃねぇよ」
「一先ずは上手く終わったことを喜びましょう。片づけをして野営地に帰りますよ」
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