第22話
翌日、借りたままのジャケットを着て食堂に向かうと、訓練着の人と華美な服の人がいた。
街の散策をしない人もいるんだな、と思っていると華美な服を着た生徒会長がやって来る。ほかの人も意外そうな顔でこちらを見ているから、理由を生徒会長に聞こうと顔を向けた。
「坂堂さん、今日は訓練してから行かないんですか?」
「それで意外そうな顔してたのか?」
「はい。みんなは坂堂さんが昨日訓練をしていたから、自分も、と今日は訓練してから行くらしいですよ」
「いや、昨日は他の人と周るのが嫌だったから」
「なるほど。それで今日の予定は何ですか?」
「今日は装備を作ってくれたところに行く予定だ」
「そうですか。私も装備の更新がしたかったので一緒に行ってもいいですか?」
「俺はいいけど、お供の騎士に言っとけよ」
「そうですね」
食事を終え、短剣と刀を装備し宿舎の外で騎士と合流すると、騎士が4人いた。
オルブライトはおらず、騎士が4人だ。
生徒会長が先に待っており、生徒会長側の騎士と騎士さんが会話中だった。
「トビー、今日はどこに行くんだ?」
「中流街の防具専門店だよ」
「そうか、坂堂さんは軽装だから貴族街じゃないのか」
「そう。そういうこと」
貴族街は重い装備しかないのか。訓練用に後から探しに行くか?
「遅かったか?」
「はい、遅かったです」
「そうか。それより騎士が4人いるけど、2人で良くないか?」
「それもそうですね。では、私とクライアで向かいます」
生徒会長の騎士が言うと、2人を残して騎士は王城の方に歩いて行った。
騎士さんが今回は先導してくれるようで、俺は生徒会長と並んで歩き出す。
後方には生徒会長の騎士がついている。
「それで、装備の更新って、あの鎧使いづらいのか?」
「もう少し軽くできればと考えているんですけど、防御力が減るのは困るんですよね」
「俺ももっと軽くしたいと思ってるけど、現実的じゃないからな」
「私が後衛だったら、前衛があの装備は嫌ですよ」
「まあ、立ち回りの違いじゃないか? 生徒会長は攻撃を受け止めてから始まるからな」
「確かにそうですね。坂堂さんは避けて攻撃、私は受け止めて攻撃ですから」
だから防戦一方の戦闘になった鬼の時、生徒会長に任せきりだったんだ。
訓練で多少はマシになっただろうけど、あの赤い手に変わり身を使うことはできるのだろうかという疑問は残る。
生徒会長の戦闘技みたいに大量の魔力を使えばいけるかもしれないけど。
それからしばらく歩いて、防具専門店に着いた。
周囲には防具以外にもバッグ、靴などほかの店が並んでいる。
目当ての店は、他の店と比べると2区画分大きい。結構いいとこの店だったようだ。
「いらっしゃい。ああ、騎士様でしたか。本日はどうされましたか?」
開けっ放しの扉から中に入ると、確かに見た顔が出てきた。
この店の商品だったことは間違いなさそうだ。
「こちらに来たいと言われてな、店主」
「お久しぶりです。装備はいい感じに使えてます」
「ああ! そうですか、それは良かった。本日はどうされましたか?」
「装備の改良の話と、こちらの人の装備を相談しに来ました」
店の中は1区画分だけの広さで、他は倉庫にでもなっているのだろうか。
多種多様な防具が並べられており、金属から革、布などがある。
他の客はいないようで、俺達を対応してくれるようだ。
「まず改良の話をしましょうか?」
店の奥に一度行き、帰ってきた店主は椅子を2脚持っていた。
俺と生徒会長は出された椅子に座り、店主は正面で立ったままだ。
「えーと、改良って言っても出来ればの話なんだけど、もう少し軽くなったりしないかと思いまして」
「ギャンベゾンに革を縫い付けたものでしたよね?」
「はい」
「あれ以上となると、ギャンベゾンではなくローブと革ベストになり、前衛の防具ではなくなります」
「分かりました。俺の話は終わりです」
悪くはないんだけど、攻撃を受けてしまった時に耐えられる防具じゃないと。
今着ている服で戦闘すればジャケットの上からでも切り傷を負うだろうけど、あの装備だったらそれもないだろう。
最低限の防御は必要だから、軽いモノはあきらめるしかないか。
他に欲しいものというと、重さを重視した訓練用鎧が必要だな。
その後、生徒会長は色々な鎧を着てみて、どの鎧くらいの重さが理想か、革と金属の割合を調べているようだった。
することのなくなった俺は、並べられている鎧をみて時間をつぶしていく。
生徒会長の用が終わると、店主が俺を呼んでいた。
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