第17話
〇
魔物の群れに襲撃された翌日。
馬車に揺られ、機関車に揺られ、再度馬車に揺られ王城へ帰って来た。
今日は休みで、王城の外には出られないがゆっくりと訓練もせず過ごすことにする。
武具の整備を済ませると、昼食にちょうどいい時間だったため、食堂へ向かった。
食堂には他の生徒がおらず、近くのメイドに食事を頼んでいると、生徒会長が来ていた。
「おはようございます。元気そうですね、坂堂さん」
「おっ、生徒会長、おはよう。みんなは?」
「さあ、疲れて眠っている人が大半じゃないですか?」
テントで多少眠りが浅くなるのは分かるが、昼飯食べないくらい眠いのか。
まあ、俺も食事を終えれば昼寝の予定ではあるが。
「みんな眠れなかったんですよ。あれだけの緊張状態にあったのものですから」
「まあ、俺も疲れが取れている気はしないな」
「しっかり眠れてはないでしょう。私も寝起きです」
「へー」
生徒会長と会話をしていると、食事が運ばれてきた。
昼食を食べ始めると、生徒会長がメイドに食事を頼んで対面に座る。
食事をしていない人に食事風景を見られるのは、なんだか居心地が悪い。
真剣な顔で腕を組んでいるから、それを言い出しづらい雰囲気がある。
「坂堂さん」
「うん?」
「私達全員、もっと強くなる必要があります」
「そうだな」
「今までしてませんでしたが、一緒に訓練しましょう」
「俺は、他人がいたら色々試せないだろ?」
「他の属性が使えないってことですよね?」
「そういう事だ。攻撃の種類を増やすこと、魔力を一気に消費しても動けること、体は防御に動いても魔法で攻撃すること、それらを長時間しつづけるスタミナをつけること。現状はこれだな」
言い切ると、メイドは食事を運んできた。
生徒会長は受け取り、食事を始めるがすぐに手を止めて、こちらを見る。
「攻撃の種類を増やす以外は一緒にできますね。ついでで探知できるようになることも追加しておいてください」
「で、一緒に訓練するのは決まりなのか?」
「あれ? 乗り気だったんですか?」
「面倒も増えるけど、訓練の幅は騎士とするよりも増えるだろ」
「それなら食事終われば訓練しますか?」
「昼は食べたら眠くなるんだ」
「そうでしたね」
平原でのことを思い出したのか、気分良さそうに笑う生徒会長。
俺はその後のことを思い出して、あまり気分が良くない。生徒会長自身もうれしくないことだったと思うんだが、違ったのか?
その後、結局今日は休みだから訓練はやめておこうと決まった。
俺は部屋に帰ってベッドで横になった。
いつもならすぐに眠気が襲ってくるのだが、なぜか目が冴える。
天井をボーっと見つめがら影分身を出して、現状諦めている視覚の共有を再度試していく。
影分身に流れる魔力はただの魔力だ。
影分身が魔法として完成するのに使われるのは、土と邪属性の魔力。
土属性でゴーレムをつくり、操るのに邪属性を使うと思っていたが、俺は邪属性の魔力を流してはいない。
だからゴーレムとして完成したものを邪属性で動かしているのではなく、土属性と邪属性を使ってゴーレムを完成させ、それを無属性の魔力で動かしているわけだ。
「邪属性のゴーレムってなんだ?」
そもそも魔法の成り立ちからして、分からん。
魔法は想像力で無限大ではないし、成立しているということは問題ないんだろう。
すべての疑問を無視して、流している魔力を邪属性にして流すが特に変わりない。
ただ邪属性が付加されているだけのゴーレムという事か。
「分からん」
これ以上は訓練する気がないから、魔力を一気に消費して動く訓練でもしようと考えて、ゴーレムに一気に魔力を流したことがないことを思い出す。
魔力を操作して、動けなくなることも考えずに一気に魔力を流してみる。
影分身がビクッと動くだけで変化はなかった。
ただ一気に魔力を消費して体は動かせなかったが、前回よりも復帰は早かった気がした。
翌日、訓練が再開した。
いつも通りに影分身と一緒に素振りをして体を慣らしていると、生徒会長がやって来る。
「まずは何するんですか?」
「自分の弱点克服したらいいんじゃないか?」
「それなら私は魔法をもっと早く発動することですね」
「俺は防御しながら魔法で攻撃しつづけることだな」
「なるほど。私は坂堂さんという、ちょうどいい的を手に入れたわけですね」
「いいけど、弱めの魔法で頼む。体が燃えるとか、貫かれるとか、そういうのがない魔法な」
「坂堂さんはどこに魔法を撃つんですか?」
「生徒会長」
「私の盾を貫かない魔法で頼みますよ」
「ああ。少し移動して始めるか」
周囲に騎士や生徒がいるため、移動して広い場所を確保した。
俺は実戦の装備で刀を構え、生徒会長は片手半剣を納めたまま盾を構えている。
影分身を四方に展開して、もしも人が入ってきた場合は動けるように待機させた。
「魔法いきますよ」
周囲を確認してから生徒会長が魔法を発動し始める。
少しして空中に、魔力が少ない火の球がポッと現れた。
俺へ一直線で飛んでくるが、その軌道は避けたとしても地面へ当たるようになっている。
周囲への気遣いだろう。
魔力を纏わせた刀で火の球を切ると、何事もなかったように消えていく。
そこから一瞬の間があり、火の玉が飛んでくる。
しかし、どの攻撃も対処で手一杯ではないため、俺の訓練にならない。
「生徒会長。もっと早く、俺が魔法撃てない」
「言っておきますけど、普通の人はそんな余裕を持って対処できませんからね」
「相手にするのは普通じゃない奴らばっかだろ。普通じゃないことができてようやく並ぶんだぞ」
「水上さん呼びましょうか?」
「やめろ。真っ二つになるだろ」
それからしばらく動き続けていたんだが、まだ対処できるくらいだ。
魔法をこちらは撃つことができずに、そこそこの速度の火の玉を切るだけの練習になってしまう。
生徒会長が休憩をとるため、俺も休むことにした。
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