第6話

 王城に帰り着くと、昼食を済ませた。

 今日はそれ以降、休みなので自室で装備を外して武具の整備をする。

 体力的には問題ないはずなのだが、精神的に疲れたのか眠気が襲ってきた。

 夕食までには整備を済ませて、さっさと眠りにつきたい。

 あまりにも眠すぎるから、立ったまま整備をしていると部屋の扉がノックされる。


「はい」

『入りますよ、坂堂さん』


 生徒会長の声がして扉が開けられる。

 装備を机の上に置いて、顔を向けると片手半剣が投げられた。


「え?」


 気付いた時には生徒会長が剣を振り上げていた。

 想像以上の速さで振り下ろされ、投げられた剣で受ける。

 生徒会長の攻撃は止まらず、そのまま何度も攻撃を受け続けた。

 

「やっぱり、勇者ですよね?」


 ようやく攻撃を止めたと思ったら、考えてもいなかったことを言われて何も言えない。

 そんなこちらの反応を見ながら、満足げな顔をしている生徒会長。


「なわけねぇだろ」

「否定されても、練習していなかった片手半剣をそこまで使える理由を考えれば分かります」

「扱いはそこまで変わらないだろ」

「私は本気で攻撃していたのに、簡単そうに攻撃を防いでいましたよね。適性があっても扱いには差があるのでしょう」

「俺を勇者だと決めてかかっているのは分かった。それで、確認しに来ただけか?」


 生徒会長は武器の扱い以外にも、俺を勇者だと考える要因があると思う。

 思い込みで攻撃してくるほど、考えなしじゃない。

 それに勇者だと考える要因が何であれ、吹聴されても困る。

 何を言い出すのかと、じっと目を見つめているとドアがノックされた。


『すみません。武器を打ち合うような音が聞こえてきたのですが、入ってもよろしいでしょうか?』

「はい」


 生徒会長が許可を出して入って来たのは、今日の実戦でついてきていた騎士の1人だった。

 俺と生徒会長の顔を見て、少し安堵している。


「お二人なら大丈夫でしょうが、部屋の中では止めてください」


 会釈して出ていく騎士を見て、その程度の注意でいいのかと不安になる。

 まあ、それだけ生徒会長への信頼があるのだろう。


「坂堂さん」

「うん?」

「あなたの事は、特に言う理由も無いので誰にも言いません。ただ、バレたくないのであれば、目立つことは控えた方がいいと思いますよ」

「お、おう」


 俺の手から片手半剣を取り、帰っていく生徒会長。

 目立つと言えば、影分身だろう。

 それを使わないのは無理だろうけど、これからはできる限り控えよう。

 それが叶うかは別として、そう思った。

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