第8話

食事を終えた2人は一緒に屋敷の中を見て回った。


セダムはさらに興味が惹かれ、楽しくなっていた。


「さて、そろそろ私は仕事に戻る。あとはこの2人に任せるよ。」


ウィルフは2人のメイドに声をかけると、「おやすみ。楽しんで」と一言残し行ってしまった。


2人のメイドは深々と挨拶をする。


「カナと申します。」


「マリアと申します。」


セダムもそれに挨拶で返した。


「リジアです、よろしくお願いします。」


カナとマリアは微笑みながら客室へと案内してくれた。


扉から普通とは違う仕組みで、ドアノブがなく窪みがあり、そこに手をかけ横にスライドすると開く仕組みだった。


「扉が消えた!」


セダムは嬉しそうにそう言うとスライド式の扉をまじまじと観察した。


「なるほど、壁と壁の間に隙間があり、そこに扉が収納される仕組みなのですね!こんなの初めて見ました!」


目を輝かせて1人で納得しているセダムをカナとマリアは背中を押し中に入るよう急かす。


中は、不思議な匂いが漂っていた。


「この香りは…」


「これはカズの木という木の匂いでございます。カズの木の香りはどんな香りよりも強いのが特性ですが、その強さの反面爽やかな香りがするのです。」


「このお部屋にはカズの木を基調とした家具が置いてあります。匂いの強さを家具の数で調整し、程よい強さの香りをお部屋に拡げているのです。」


「確かに、匂いはしっかり感じるのに爽やかでいい香りがしますね…」


セダムは家具の近くで鼻から息を吸い込む。


鼻の奥に、森のようないい香りが拡がる。


「気に入って頂けましたか?」


「はい!こんな素敵なお部屋ありがとうございます!」


セダムは2人に笑って頭を下げた。


「それでは次は浴室にご案内致しますね。」


セダムは2人に連れられ今度は浴室に向かった。

なんとそこには、大きな滝があった。


厳密には、岩山の造りをした像からお湯が出ている、が正しい。


周りには先程話題に出たカズの木が数本あった。


「まるで、本物の森の奥にいるみたい…」


ガラス張りの天井からは月明かりが差し込み、滝の1部を明るく照らしていた。


そこには1人で座る用の青い椅子がポツンと置いてあった。


近寄ってみると、月明かりに照らされている部分だけが綺麗な青色に見えていた事がわかった。


「この椅子の本来の色は、黄色なんです。」


セダムはこの椅子を見た瞬間、ウィルフの提案の件の答えが決まった。


その日、セダムはカナとマリアに綺麗に洗われ、部屋に戻り、森の爽やかな匂いに囲まれて眠りについた。




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