第6話

2人は商売や貿易について色々話しているうちに、馬車は止まっていた。


「君がそんなに頭が良く商売の素質がある子だとは思わなかったよ、もっと君と話がしたいのだが、夕飯を食べながら続きを話そうか。」


セダムが外を見ると気づかないうちに暗くなっていた。


「あ、気付かずすみません。」


ウィルフは笑いながら扉を開け先に降りると、手を出してセダムをエスコートした。


グレシェントの屋敷もかなり広かったが、目の前に広がる屋敷もなかなかの広さで、唯一違うところは、色んな石像がある事だった。


ウィルフは門から玄関まで歩いている間、ゆっくりとセダムに合わせて歩き、見える石像の話をしてくれた。


外国の伝統工芸品や、伝統模様、様々な国の特徴を模した石像は、華やかに屋敷を彩っており、初めて見る者は必ずその変わり変わり視界に入る石像を楽しめるだろう。


セダムはウキウキしながらウィルフの話を聞いていた。

玄関にたどり着いた時、扉を大きく開いた使用人たちが声を揃えて挨拶をした。


「お帰りなさいませ、ウィルフ様、

ようこそお越しいただきましたリジア様。」


中に入ると、そこは見たこともない奇抜なお面や、まだこの国では見たこともないレースのあしらわれたカーテンなどが目に入り、セダムは足を止めた。


「目新しいものばかりだろう?外国には素晴らしいものが沢山あるのだ。」


セダムは頷いて前を歩くウィルフについて行った。


そのまま客室に通され、ウィルフが出ていく時入れ違いで先程の言い争っていた2人の騎士が入ってきた。


「先程は助けていただいたにもかかわらず失礼を致しました。」


2人は深々と頭を下げお礼を述べると、すぐに出て行ってしまった。


少しするとメイドが入って来て目の前にティーセットを並べる。


「こんな小さなお客様は初めてでお口に合うか分かりませんが、こちらのお茶をどうぞ。」


メイドはにこっと笑いセダムのティーカップにお茶を注いだ後、ミルクを少し注いだ。


「ありがとうございます」


セダムも笑顔で返すとお茶を口に運んだ。


独特の深みのある味とミルクの濃厚さが絶妙なバランスを保ち口の中で広がる。


「美味しい…」


セダムはつい口に出すと


「そうだろう」


と、後ろからウィルフの声が聞こえた。


「はい!これももしかして…」


「そうだ!これも外国のお茶なのだが、この苦さとミルクの甘さが合わさることでより濃厚で深みのある味が出るのだ。」


セダムはこの数時間でウィルフの人となりが少し見えた気がした。


「ウィル様は、型にハマらない自由なお方なのですね。」


悪い意味ではなかったが、つい言葉に出ていたことに気づいたセダムは慌ててウォルフの顔を見たが、その言葉を聞いてウィルフは嬉しそうに微笑んだ。


「そうだな、私は自由だな。」


ウィルフはセダムの向かい側に座って自分もカップに注がれたお茶を飲み始めた。


「もう少しで夕食の準備ができる、お茶は飲み過ぎないように」


「はい!」


2人はそのままお茶を飲みながらまた商売の話を始めた。


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