第5話

そんな日々が2ヶ月ほど続いたある日、森の中に張り巡らせた感知魔法に、人の感知があった。


セダムは警戒しながらその場所に様子を見に行くと、魔物に囲まれた馬車と、数人の男がいた。


男たちは魔物と必死に戦うが、数で負けているため、少しずつ傷が増えていく。


セダムはその様子を見ながらしばらく考えたあと、素早く飛び出し大きな炎を起こした。


すると魔物はあっさりと逃げていき、その場にいたみんながセダムに視線を向ける。


「何だこのガキ」


「おい、勝手に近づくな!」


男たちがセダムに剣を向けたまま言い争っていると、馬車から若い男が出てきた。


「説明」


一言だけそう言うと、言い争っていた2人はビシッと背筋を伸ばし説明し始めた。


「つまり、この子は命の恩人なわけだ。」


男はセダムをしばらく見つめると話しかけてきた


「君名前は?」


「あ、私の名前は…」


セダムは名前を言いそうになったとき、本当に本名を言っていいのか怖くなり偽名を使った。


「…リジアです。」


リジアとはアメリアと街へこっそり出かける時に使っていた偽名だった。


「リジア、君はこの辺に住んでるのか?ご両親は?」


「あ、家は向こうです。両親は、、居ません。」


セダムは家の方を指さしながらそう言うと、男は少し考えてから提案をしてきた。


「リジア、もし良ければ家に来ないか?助けてくれたお礼がしたいんだが。」


リジアは頷いて男と一緒に馬車に乗った。


馬車の中で男は色んな話をしてくれた。


男の名は、ウィルフ。

伯爵家当主で商人をやっている。


セダムはその話に興味を示すと、ウィルフに商売の話を色々聞いた。


「ウィルフ様は、外国の方との商売が主なんですね!!では、最近人気のあのシルク生地は…」


「私の商売で最近輸入しているものだね。まさかあの生地が女性にあんなに人気になるとは考えていなかったけどね。あと、ウィルでいいよ。」


「はい!ウィルさま!」


セダムは嬉しそうに名前を呼ぶとまた質問を始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る