第3話

話を聞いたセダムはヘリが出ていったあと、ヘリの言葉を思い返していた。


「自由、か。」


セダムにとってリハルトの手紙の言葉が今まで全てだったが、それが自由という一言で今までの重しが一気に無くなった感覚だった。


セダムは直ぐに支度を始めた。


小さくなった服を全てカバンにつめ、なるべく動きやすく質素な服を着て、高そうなアクセサリーもカバンに出来るだけ詰め込んだ。


そして最後に手に取ったブレスレットを手首に付けカバンを魔法で小さくする。

それをポケットに入れ、大きな窓を両手で勢いよく開ける。


今まで気にもしてなかった緑が広がった庭を上から眺めてセダムはやっと気づいた。


「私、今まで何も知らなかったのね。」


窓から小さな身体を乗り出し勢いよく飛び降りる。

そのままセダムは転移魔法を使い地面に潜る形で姿を消した。


たまたま外に居たリハルトがそれに気づき一瞬顔を歪めたが、そこにはもう何も残っていなかった。




セダムはこの日、小さなテーブルにヘリへの手紙だけ残して消えた。


しかし誰もセダムを探すことはなく、3ヶ月ほど経ったとき、リハルトはセダムの死亡報告をした。



そして、セダムの長い旅が始まる。

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