第2話
アメリアが死んで以来、リハルトはセダムを屋敷の一番端の暗い部屋に閉じ込め、一切会いに来なかった。
初めのうちはリハルトの命令でメイドが数人世話をしていたが、年月がすぎていく事にその人数は減り、8歳になった今ではヘリ1人になっていた。
ヘリは初めから世話をしてくれていたメイドで、命令を下されていない今でも空き時間にやって来てはセダムの世話をしてくれた。
リハルトもそれを黙認して、たまにこうして用事があるときは手紙を渡させる。
「お嬢様、大きくなられましたね。」
「そうかなー?」
「えぇ、とても立派なご令嬢です。」
大きな鏡の前で服を着せてもらっていたセダムは、笑って鏡を見ると、ヘリが悲しそうな顔をしているのに気づいた。
「ヘリ?どうしたの?」
「…お嬢さま、私結婚が決まりまして、このお屋敷を去ることになりました。」
セダムは時が止まったように固まった。
声も出ずただ目を見開くことしか出来なかった。
「相手は、北国のアルバート伯爵様です。きっと、もう会えることはありません、お嬢様の髪を結うのも、お洋服を着せるのも、お食事をお持ちするのも、一緒にお茶をするのも、今日が最後です。」
「そんな急に!嫌だよ!」
やっとのことで出た声は震えてしまった。
「お嬢様、私からひとつ失礼を承知で申し上げます。お嬢様、この家を出て1人で生きる術を身につけてください。望まぬ結婚をして幸せになった令嬢は1人もいません。最悪死ぬ場合もあります。」
「なんでそんなこと…」
「…奥様が、男児を身ごもりました。今まではお嬢様以外の後継がいなかったため公爵様はお嬢様を生かしておられましたが、男児の跡継ぎが生まれてしまえば、お嬢様は用無しになってしまいます。未だに公爵様はあの日のことでお嬢様を憎んでおられます。どうか、この家から逃げて自由に生きてください。」
身ごもった義母は、アメリアの元友人兼メイドである、フロレシアだった。
この女が、アメリアの背中を押し、リハルトにセダムがアメリアの背中を押したと報告した張本人だった。
リハルトはアメリアの死後、アメリアの1番の親友であったフロレシアに優しく慰められ、寄り添ってくれた彼女を自然と再婚相手にと考え始め、気づいた頃にはセダムの義母になっていた。
1度だけセダムの元に来たフロレシアは宝石が沢山装飾された赤いドレスを着ていて、高いヒールでセダムを罵りながら踏みつけた。
「あんたさえいなけりゃいいのに。早く死ね。」
その場にいたメイドは止めるどころかそれを笑ってみていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます