第32話 解体

 

 改めてしっかりと鑑定するヒイロ。すると細かい詳細が見て取れる。


 スナッピングビッグタートル

 (大型すっぽん)


 全長一メートル~三メートル

 重量百二十キロ~三百六十キロ


 水属性の魔法を使い、一度噛みついたら食いちぎるまで離れない。

 弱点 雷魔法 氷魔法

 巨大なわりに素早く凶暴で、生息地が沼地であるため狩るのは難しい。

 最適調理方法

 調理次第で大変美味である。

 鍋 唐揚げ 血割酒

 推奨冒険者ランク中級パーティー以上

 効能

 生き血はアルコール度数の高い酒で割り飲むと滋養強壮、勃起不全、性欲増進に良い。

 甲羅は適切な処理をし調合にすると、不妊症、婦人科疾患、腫瘍などにも効く。

 乾燥させ粉にして飲むと、ほてり、熱感をとる作用がある。

 栄養

 コラーゲン、必須アミノ酸やビタミン、ミネラル類が豊富に含まれており、滋養強壮や美容に良い効果が期待でる。

 


 (すっぽん料理は知ってるけど前世でも食べたことなんてなかったなぁ。唐揚げかぁ~ 確かにこれだけ大きければ美味しそうだし、定番の鍋の二種類で決まりだよね。この血割酒ちわりざけは流石に今出すのは……弟妹きょうだいは欲しいけど旅の道中だと色々と大変だし気を使うし…… )


「で、ヒイロ。どう料理するの?」


「あっ!うん、ちょっと待ってレイン義母かあさん。試しに一匹捌いてみるから」


 急かすレインに待ってもらい、ヒイロは、とりあえず捌いてみることにする。すると、


「こいつが一番デカいな。よっと」


 その言葉を聞き、数頭いる巨大すっぽんの中から一番大きい個体を担ぎ上げた。

 

「作業台には乗りませんね。この布の上に置きましょうか」


 それを見たセツナは、魔法袋から丈夫そうでツヤツヤしている大きな黒い布?を取り出し地面に広げる。


「師匠、お腹を上にして置いてください」


「ああ、わかった」


 広げた布?の上にヒイロの指示の下ガロードが巨大すっぽんを半回転させ優しく置いた。そしてしかれた布?を撫でながら、軽く引っ張ったり戻りたりしているヒイロ。 


「先生、これはなんですか?」


 何の素材か分からず尋ねると、


「この布はスナッピングビッグタートルを狩った時にいたブラックビッグフロッグの皮ですよ。水捌けが良く、雨具や対水棲魔物対策の防具素材になるものです。勿論、浄化魔法はかけてありますので清潔ですよ」


 ヒイロの問いにセツナが丁寧に説明してくれた。


「あっ!これかなり伸び縮みするんですね。便利そうな素材だなぁ」

(これってゴムの代わりにつかえるかも…… )

 

「さぁ、ヒイロ。早く捌いてみて」


 ヒイロの気が散っていたのに気付いたレインは再び催促をする。


「うん、やってみるね。上手く出来るか分からないけど。とりあえず、えいっ」


「おお~~~~~~」


「ふぇ?」

(なんだこの切れ味は!)


 魔力を流したミスリル製のキッチンナイフを振り下ろすと、まさかの甲羅ごと縦に一刀両断出来てしまった。その切れ味に驚くヒイロに感心して拍手をするギャラリー。


「どうじゃ?良く切れるじゃろ?ゴクゴクゴク」


「ドモン義父とうさん、切れ過ぎだよ!」


「危ないからといって切れない刃物を与えても怪我をするだけじゃ。良く切れる刃物を正しく使うほうが怪我はせんわい。後はヒイロが使いこなせるように訓練を頑張るだけよ。プッファ~~~~」


「そ、そうなんだ…… 」


「それはドモンの言う通りですね。次はもう少し流す魔力を抑えてみては?それにちゃんと甲羅に反って肉を切り出さないと」


「はい、先生。もっと抑えて……魔力の流れも緩やかに…… 」


 今度はアドバイス通りに、甲羅と肉の間にナイフを刺し、綺麗に肉だけを切り出す。それを一口大に切り分け魔法袋から大きなボールを取り出しレインに渡した。


「レイン義母かあさん、鍋に油を入れて温めて。それとも肉には酒としょう油と生姜をすりおろして入れて揉み込んで」


「わかったわ」


「なら、竈と鍋はわしが準備しよう」


 レインは、ヒイロに言われたとおりに素早く作業を始める。そしレインの手伝いに即席の竈を作って火を入れ、鍋に食用油を並々と注いで準備するドモン。

 勿論義手でボールを抑えて調味料を入れて素手の方で揉み込み始める。


「先生は甲羅の処理と回収を」


「甲羅は浄化後、乾燥させればいいのですね?」


「はい、完全に水分が無くなるまで乾燥を」


「わかりました。手頃な大きさに切られてて助かります」


「師匠はレイン義母かあさんから野菜を貰ってぶつ切りにして下さい」


「わかった」


「肉の大きさ位ですよ。それと自分の口の大きさじゃないですからね」


「お、おお…… 」


「ドモン義父とうさん、一番大きい鍋を用意して水を半分ぐらい水を入れといて」


「おう。しかしヒイロ、今回は随分と張り切ってるなぁ」


「だって、レイン義母かあさんが乗り気だし喜ばせたいから」


「うむ、流石わし達の義息子むすこじゃ」


「へへへ、恥ずかしいから内緒でね」


「わかっとる、わかっとる」


「なぁに?二人してニヤニヤしながら私を見て」


「「なんでもない(よ)」」


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