第28話 帰還


「私はちょっと、様子を確認してきますね」


「はい、いってらっしゃい先生」


「おう、行って来い」


 セツナは、部屋を出ていく。レイン達と合流する予定だ。これから色々と聞き出す相手を持ち帰ってくる予定である。恐らく肉体的にも精神的にも話さずにはいられない状況まで追い込まれるのだろう…… 


 話が途中で終わってしまい、気になったことをドモンへ再び質問し始めるヒイロ。


「それで、ドモン義父とうさん。武器や防具の場合はどうするの?」


「先ず、魔合金は天然物と人工物があるのは説明したしたじゃろ?」


「うん」


「より品質が良いものは天然物じゃが、魔銀や魔金、また極稀に緋緋色金ヒヒイロカネ魔重剛金アダマンタイトなどが、魔力が豊富な場所で見つかる。その鉱石こうせき鋳塊インゴットにする方法に、錬金を使う」


「うん、それはわかるよ。先ずは不純物を取り除いて純粋な金属に分ける作業だよね」


「そうじゃ。そしてこの錬成は一度しか出来ん。これには色々と説はあるが、それはセツナに聞いたほうが良いじゃろう」


「うん、後で先生に聞いてみるよ。なら鉄を魔鉄にしたららもう鉄には出来ないってこと?」


「そうじゃ、一度錬成してしまったらその後は錬金出来んのじゃ。そして天然物は鍛冶で加工することになる。この錬金はドワーフ国でも使える者はほんのわずかじゃし、何より魔力が相当な量を使う。例えば一本のショートソードを金から魔金に錬成するなら、セツナクラスの魔導師が五人は必要じゃ」


「えっ!そんなに? なら、ほぼ不可能なんだね」


「まぁ、かなり難しいのう…… 」


「でも、魔銀や魔金をどうやって鍛冶で加工するの?」


「それは同金属の鎚と金床を作り、硬化魔法を付与して打つんじゃよ」


「あ、そっかぁ! 硬化魔法の分、強度が上がるから加工できるんだね」


「ただ、ちゃんと熱で柔らかくてからじゃないと、欠けるし割れるがのう。だから温度を見極めることが重要で職人の腕が、目が試されるんじゃ」


「でも、これでブルーダさんは鍛冶が出来るようになれるよね」


「行く行くは今以上に出来るじゃろうが、それは奴の努力次第じゃて」


「いつか、三人に渡した義手や義足と義眼も魔鉄よりも凄い奴で作りたいな」


「いや、これでも十分じゃよ。まぁ、それはわしも考えておったがのう」


「なら、いつかは一緒に魔銀ミスリル製や魔金オリハルコン製を作ってみたいな。みんながこんなに強いのを知らなかったから、次は色んな仕掛ギミックもつけてみたいし」


「ほう、例えばどんなんじゃ?」


「レイン義母かあさんの義手には飛び出す短剣か大釘とか、ドモン義父とうさん義足には車輪をつけてたり風魔法で飛び上がれるとか、先生の義眼には攻撃魔法を打ち出せるとか…… 」


「面白そうじゃのう、落ち着いたら作ってみるか?」


「うん、やっぱり魔改造は夢だよね」


「魔改造…… 初めて聞く言葉じゃが良い響きじゃ」


「それじゃ、魔力回路を制作を始めるね」


「おう、もう物は揃ってるのか?」


「うん、火の魔石粉と水の魔石粉、それを溶かす純水と流し込む細筆。ちゃんと揃ってるよ」


「なら、見ていてやるから好きにやってみい。所々助言するがのう」


「うん」


 返事を返した後二つの深皿を用意し、魔石粉を振るい入れるヒイロ。そこに純水を加え混ぜるとねっとりとした状態になった。それを細筆に含ませ回路になる溝に筆先を軽く置くと、スーーーっと流れ込んでいく。プラモデルの墨入れのような作業を繰り返し、額縁フレームの溝に魔力回路が出来上がった。


「よし、後は乾かすだけだね」


「いや、乾いた後念の為もう一度流し込むんじゃ。確かに出来はいいしこのままでも発動はするが、これじゃ魔力の通りに若干のむら付きが出るぞ」


「わかった。二度塗りかぁ」


「うむ、純水を加えてもう少し粘度を落としてもいいのう。三度塗りになり時間がかかるが、かなり綺麗に流し込めるぞ」


「ありがとう、勉強になったよ」


「うむ、それで乾かしている間に先程の魔改造の話を詰めるかのう」


「うん」


 この親にしてこの子ありなのだろう。仕事と趣味が混在した話が始まり、盛り上がる二人だった。





「おかえりなさい、ご苦労でした」


「ただいま、二人は無事?」


「もちろん、こちらへ仕掛けてくることはなかったですよ。今頃魔道具の話で盛り上がってるでしょうね」


「そう、ならよかったわ」


「で、師匠、こいつ何処に運びます?」


「地下室にある牢屋の最奥を予約してますから、そこまでお願いします」


「わかりました」


「私はセツナと交代で二人の所に戻るわね」


「はい、二人は休んでないので食事と睡眠を取らせてください」


「またなの!もう、本当に私がいないと駄目なんだから」


「そうですね、レインがいないと永遠と魔道具の話をしてるでしょうね。でもよかったじゃないですか、後継ぎが出来て」


「う〜ん、ヒイロが継ぎたいと言えば嬉しいけど、今後は、それどころじゃない気がするのよね」


「そうですね、でもそれを選ぶのもヒイロですから。別にこの義手や義足だけを作っていけとは誰も言いませんし、させませんよ」


「そこら辺はセツナを頼りにしてるわよ」

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