第27話 錬金
御殿にあるブルーダの私室の扉が勢いよく開かれ一人の騎士が報告してくる。
「大長老、失礼します。例のスラム街の酒場から出火を確認。これより衛兵を率いて消火に向かいます」
「そうか…… 頼んだぞ、クロスロード」
「はっ」
ドワーフ国の上層部は、レインの放った火を合図に慌ただしく動き出した。
消火とは名ばかりで、これからの
(まさか、彼らが来て大掃除が出来るとは思わなんだ。しかしドモンも凄い人をかみさんにしたもんだ…… )
この日の夜、ドワーフ国で暗躍していた
◆
レインとガロードが戦闘?を終えるころ、ヒイロ達三人は工房で話し合っていた。
「ドモン、それだと接触して発動の妨げになりますよ」
「いや、これはこのままでいいんじゃ。最後に調整するんじゃよ。それよりセツナ、わし等の仕事に口を出す前に、お主はお主の仕事をしろ」
自分の仕事にセツナが口を出し、ご機嫌斜めになるドモン。空気を読んだヒイロが話題をそらす。
「それより先生、ブルーダさんの訓練はどこまで?」
「それがなかなか…… 今日の訓練から上達速度が遅くなりまして」
「訓練がたりんのではないか?」
「ちゃんと訓練してますよ。しかし彼の水魔法は恐らくここらへんが限界でしょう」
「いや、ブルーダをもっと鍛えんと、この義眼が最大限の力を発揮せんぞ」
「そうは言っても、ここからの水魔法の成長速度はそこまで期待出来ませんよ。毎日訓練しても成長は年単位になるでしょうね」
「う~ん、仕方がないのう」
既にブルーダは、ある程度の水魔法とその魔力制御を覚えていた。しかし中級レベルになると、なかなか上手くいかない。一般でもそれは魔法適性が低い属性ではよくあることで、後は地道な訓練を重ねるしかないのだ。
「でも、最低限使えるなら、後はブルーダさんの努力次第だし、左目の酷使は防げるからよかったかな。とりあえず鍛冶は出来るようになるし」
「そうじゃの」
「そうですね」
ヒイロの言葉に二人も同意し、ドモンは先走った事を心の中で反省し、セツナはより良い訓練方法を頭の中で模索し始めた。
「よし、終わったぁ~~~」
しばらくして、ヒイロの作業が終わった。すると作業台の上に魔法陣を描き始めるドモン。そして書き終わるとその中央に金で出来た
「それじゃ、セツナも手伝ってくれ。わしの魔力量では足りん。頼む」
「わかりました、ヒイロはしっかり見ておくように。これが魔法金属の錬成方法です」
「はい!」
作業台を挟んで立つドモンとセツナ。指先が魔法陣に触れるよう台へと両手をつく。そして徐々に無属性の純粋な魔力を流し始め、その勢いがどんどんと強くなる。すると中央に置いた
「一気に行くぞ」
「いつでもどうぞ」
さらに強く魔法陣に魔力を注ぐ二人。すると金色の
「うわっ!」
そして
「ふう~、終わったのう」
「流石ドモン、お見事です」
「いや、セツナがいなければこうも短時間で出来なんだわ」
「さぁ、ヒイロ、錬金後の変化を手にとって確認してみてください」
「はい、おお!ほんのり温かいです」
「錬成したばかりだからじゃよ。時間が経てば冷えるぞ」
「よく見れば金色から
「それが
「下手な錬金をすると、色がまばらで強度のばらつきがでてしまうんじゃ」
「でも強度はどれくらい上がったんですか?」
「
「ふぇ~それじゃ加工はかなり難しいですね」
「そうじゃのう、細かい物はこの方法があっているが、武器や防具は違う方法で作るんじゃ」
「えっ!、どうやって?」
「それはのう…… うん、何やら外が騒がしいのう?」
「そうですね、話から火事みたいですけど」
ヒイロの質問に答えていると、突如、工房の外が慌ただしい雰囲気になっていた。中まで聞こえるような色々な指示が大声で飛び交っている。
勿論、ドモンとセツナは理由を知っていたがヒイロに話すことはなかった。
「火事かぁ、被害が出てないといいですね」
「う、うむ」
「そ、そうですね」
「?」
二人の返事が不自然なことに疑問に思うも、錬金後で疲れているのかなと、思うヒイロだった。
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