第26話 対峙
次の日の夜、ドワーフ国の下町からさらに奥の目立たぬ酒場では、釈放された二人と黒尽くめの者達数人が、大きめのテーブルを挟んで代表者二人が話し合っていた。
「そちらの要望は、あの少年の身柄のみと?」
猿の獣人がそう聞き返す。
「そうだ、彼一人でいい。後の事は好きにしろ」
まとめ役であろう席に座っている黒尽くめの者達の代表が答えた。声からして男だとわかるが、容姿はマントを覆いフードを被っていて、顔も鼻からしたをマスクで覆いわからない。唯一見える目はとても冷たく感情の起伏が読み取れない不気味な雰囲気を醸し出していた。
「それで、御殿の襲撃で人手も御貸し頂けると?」
「ああ、そちらはどれぐらいの人数を用意できるんだ?」
「
「その数の人数が集められると言うことは
「はい、よくご存知で。何でもジャミルという手練れを手配してくれるそうです」
「なるほど、影のジャミルか。奴なら暗殺にはうってつけだな」
「そんなに有名人なんですか?」
「裏の世界では名が知られているぞ。お前、獣人国出身のくせに知らないのか?」
「聞いたことがないですね」
「ふん、まぁいい。それでは明日、新月の晩に決行だ」
話が終わり、黒尽くめの代表が席を立った瞬間、凄い音を立てながら部屋の壁が突然壊れた。
「そんな事はさせねぇよ」
そして壊れた壁の向こうには一人の男が剣を持ち凄い殺気を放ちながら部屋の中へと言い放つ。
「まさか子爵家の放蕩息子のお出ましとはな」
「ほう、俺を知ってるのか。しかもその言いよう。色々と聞きたい事が増えたな」
ガロードが貴族の子息だと知っているのは、基本仲間達の他は上級貴族の関係者のみである。もちろんしっかりと調べればわかることではあるが、放蕩息子と言う言い回しに、ある程度相手の素性が絞られた。
「時間稼ぎはしといてやる。お前らはさっさと逃げろ」
「ふん……」
「わ、わかりましました」
男の指示で、扉から逃げ出そうとする二人。
「逃がすと思うか?」
その二人へより強く殺気を放ちながら剣を構えてガロードが言い放った瞬間、
「殺れ」
「「「はっ」」」
男の後ろに立っていた黒尽くめの者達が、指示に従い一斉にガロードへ仕掛けようとした瞬間、
「
ガロードの剣は一瞬で魔法が付与され光を帯び、その攻撃が部屋一面を襲った。
剣を振った瞬間、高速で無数の燃えた岩が
「くっ、ここまで強かったとは…… 」
「観念しな」
「ははは、しかし私を殺したとしても明日には
「あ~~~その心配は無いから期待するな」
「なんだと!どういうことだ?」
「別にお前が知ることじゃないさ」
「ならば、お前を殺してここから逃げて再び体制を、なっ!」
「よく喋るわね。この喉切り裂こうかしら」
男の後ろに突如現れ、首に短剣を当て皮一枚切るレイン。
「わ、私が気付かず後ろを取られるだと!」
「やめてくれ、俺が師匠に怒られる」
驚く男と、止めに入るガロード。
「そう、私の仲間達と
「え、あ、そ、そうですね…… 」
(やばい、レイン姐さっきの話を聞いてキレてる)
「ふん、殺せないのか?そうだよな。俺から情報を、ぐぁぁぁぁ!」
「とりあえず四肢の筋を切ったからもう動けないわよ」
「お前、余り図に乗ると本当に首切られるぞ」
(一瞬で四連撃かよ!俺もまだまだだな…… )
話している男が突然悲鳴を上げた。次の瞬間、両肘の内側と両膝の裏側から鮮血が流れ出る。立っていることも出来ず倒れ込む男。ガロードはしゃがんで痛みに歪む男の顔を見ながら忠告した。
「で、話すなら命までは取らないわ。素直に話してくれる?」
「は、はい…… 」
「それじゃガロード、こいつを担いでいって」
「はぁ~~~、わかった。後はどうする?まだ息のある奴もいるぞ?」
「後始末はやっておくわ」
「了解」
ガロードは、男の後頭部に手刀を放ち意識を刈り取った後縛り上げ担ぎ上げる。レインは蜂の巣になって転がっている者達の生死を一人一人確認していく。黒尽くめの者達は全員死んでおり証拠として魔法袋に入れる。そして二人組が倒れている所に来るとドワーフは既に事切れていたが、猿獣人は息があるようだ。
「た、助けてくれ…… 」
「なぜ?」
命乞いをする猿獣人に冷たく答えるレイン。
「わ、私が悪……かった…… 」
「そう、わかっているならその報いも受けなきゃね」
「た、頼む…… 」
「あなたの処刑は祖国へ許可を取っているわよ。助かったとしても直ぐに追われるでしょうね。国で悪さをし、追放された挙げく他国にも迷惑をかけるなんて…… せっかくの恩情で命までは取らなかったのに、それを仇で返すなんて本当に馬鹿すぎるわ」
「そ、そんな…… 」
猿獣人も事切れ魔法袋に回収し、レインは酒場へと火を放ちその場を後にした。
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