第22話 制作開始


「その二人を引っ捕らえて牢にでも突っ込んでおけ」


「「「はっ」」」


 大長老が側近に言い放つと、セツナは魔法障壁を解除する。そして直ぐに二人は捕らえられ去っていった。


「ブルーダ、苦労しておるのう」


「度々すまんな…… 」


「では、邪魔者達もいなくなりましたし、話を続けましょう。さぁヒイロ」


「はい、先ずは大長老様の、」


「ヒイロ少年、ブルーダで構わんよ。正直兄弟弟子の義息子にそう畏まられるのは好かん。叔父だと思って話してくれ」


「でも……」


 ヒイロが戸惑いながらドモンを見ると黙って頷かれる。そしてレインが声をかけた。


「ヒイロ、ブルーダさんもそう言ってるから普段通りで大丈夫よ。遠慮することはないわ」


「はい、レインさん。先ずはブルーダさんの扱える魔法属性と魔力量と魔力操作がどれくらいなのかを調べます」


「なるほど」


「それからサイズを測って、素材を選んで作ります。完成しても扱えなるように訓練して貰う感じです」


「ほう、それはこの国の魔道具師が見学しても?」


 ヒイロが快く返事を返す前に、セツナが間に入った。


「大長老よ。それはまだ待ってもらいたいですね。しばらくすれば、この技術は教会から発表されますので。ただ、技術を伝授する職人は選別させていただきますので、そこはご了承を」


「そうか、たしかにのう…… ふむ、納得だ」


「ご理解頂きありがとうございます」


「それで報酬なのだが、ヒイロ少年は何が望みだ?」


「報酬?」


「大丈夫じゃ、何か欲しいものがあるなら遠慮なく言うてみい」


「う~ん…… あっ!あの自動運搬車が欲しいです」


(((!)))


 報酬として希望したものが、予想より余りにも斜め上だった為驚くその場にいた一同。


「あんな物でよいのか?」


「はい!あれがいいです。駄目ですか?」


「構わんよ。あれなら高くもないが安くもない。一台では報酬に釣り合わんから二、三台渡そう」


「ブルーダさん、ありがとうございます。やったぁーーーーー」


「ヒイロ、何をする気?」


 その喜びように戸惑いながらもレインが尋ねる。


「色々と調べてみたいなって。それに改造もしてみたくて」


「それは面白そうじゃのう。さっさと義眼作りを終わらせて、今回は始めからわしも一緒に弄りたいのう」


 ヒイロの言葉に賛同し、自分も手伝いをかってでるドモン。


「本当に、この二人は相変わらずだな」


「やれやれですね。まぁ、この義父ちちにしてこの子有りですか」


 ヒイロが仲間達との話が盛り上がっていく。不安に思ったブルーダが念を押すように語りかけた。


「ヒイロ少年、あ、あくまでも報酬だからな? 先ずはわしの義眼を頼むぞ! 」


「勿論です。早速取り掛かります」



 一方、牢へと入れられた二人は言い争っていた。


「だから止めましょうって言ったじゃないですか」


「しかし、もし大長老の目が復活してしまえば、次の鍛冶勝負で勝ち目はないぞ」


「それでも、大長老が正式に招いた客人との謁見を、邪魔したらこうなることはわかるでしょ? 」


「ふん、そこはお主がどうにかすると思っていたが、全くもって使えんやつじゃ。これではわしが大長老になった時に、獣人国への優遇の件も考え直さないとなぁ」


「いやいや、このままでは鍛冶勝負の参加でさえ怪しくなってますよ」


「なんじゃと!どうにか参加出来るようにしろ」


「まぁ、頑張ってはみますが期待しないでくださいよ」


「それより、ここから出られるよう早急に手配しろ。わしをいつまでこんな所に居させるつもりじゃ」


「はぁ~~~、わかりましたよ」


(このドワーフ、もう目茶苦茶だ。ただ鍛冶の腕だけは一流なんだよなぁ)


「頼んだぞ、わしは寝る」


「はいはい…… 」


(それに頭が弱いから操り人形には最適だと思い、こいつに取り入ってドワーフ国のトップにしてしまえば祖国への優遇措置を取り付けられ、私も祖国で返り咲くことが出来ると思ったが、こいつじゃ無理かもな。別の手を使うとするか…… )



「では早速作り始めますね」


「ああ…… よろしく頼む…… 」


 あれから数々の材料が揃っている立派な設備の別室へと移り、問診と診断をしながら、こっそり鑑定スキルでブルーダの両目の状態を確認したヒイロ。

 一人の鍛冶師としてどんな仕事をするのかと興味が尽きなかったが、大人しくブルーダは退室していった。ドモンへうらやましい顔を向けたが、完全に相手にされなかった。


 右目は完全に視力が無く、眼球白くなり黒目がなく、左目は辛うじて見えてはいるものの、鑑定では視力0.3と出ていた。

 そして魔法適性は、ドワーフ特有の火と土を持っており、魔力量も問題なかった。しかし肝心の水属性が全く鍛えられておらず、ヒイロの考えている義眼に対して最大の問題点となってしまった。


「それでは右目の義眼の前に、左目の片眼鏡モノクルを作ります」


 先ずヒイロは左目の補助器具から入ることにした。それは義眼の制作中でも日常生活を快適に送れるようにというは配慮からだ。


透鏡レンズはヒイロに任せて、額縁フレームはわしにまかせろ。寸法サイズを紙に書いて渡してくれ」


「ありがとう、ドモン義父とうさん。それと先生、ブルーダさんに水魔法を教えてもらえますか?」


「ああ、なるほど、そういうことですか。わかりました。早速、部下の方々に時間調整をしてもらいに行ってきます」


「なら、私もセツナと一緒にいくわ。ちょっと調べておきたいこともあるし」


 どんな性能の義眼を作るか察したセツナがいうと、レインも同行するらしい。恐らく先程の乱入者(できなかった)二人の動向を調べ監視したいのだろう。


「なら、俺は二人の手伝いをしながら護衛だな。作業中は無防備すぎる」


「よし、では各自で行動開始じゃ」



 


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