第12話 帰宿
ヒイロとレインが大量の野菜を魔法袋に詰め込んでいる時、ドモンとガロードは村の奥にある畑を突っ切り森の中へと足を踏み入れていた。
「あまり、獲物がいないのう」
「ドモン兄、もう少し奥に行ってみようぜ」
「ガロードは張り切っておるのう」
「護衛なのここまでは戦闘しなかったのは久々だったぜ。こんな旅じゃ感も鈍るし身体は訛るし。早く身体を動かしたい」
「そういや最近だと、どんな魔物を狩ってたんじゃ?」
「そうだなぁ、珍しいのだと
「やっとガロードも一人前かのう」
「そりゃないぜドモン兄。とっくに一人前だ!いつの話してるんだ?解散してからも冒険者を続けて、次回の昇級試験でやっと超級を受けるつもりなんだからよ」
「なんじゃ、まだ超級になっとらんかったのか?」
「あのな~俺は人間種だし、三人みたいに化け物じみた力なんて持ってないんだよ。実績をコツコツと積み上げて、やっとここまではきたんだって。一緒にされちゃこまるぜ」
「鍛え方が甘かったかのう?」
「あれ以上鍛えられてたら死んでるわ!」
久しぶりの一緒の狩りに饒舌になるドモンとガロード。パーティーの解散後は、余りガロードはドモン達に会いには来なかった。いや、意図的に避けていた。それでもヒイロの話を聞いて少しは顔を出すようになり、ある日ヒイロから相談を受け、三人には黙って協力していたガロード。
「しかし、ガロードがヒイロに頼まれていたとはのう」
「恩返しの内容を聞いた時は驚いたぞ。しかしヒイロは天才だな」
「そうじゃのう。しかしここまでは大事になるとはのう」
「顔には出してないが責任は感じてるだろうな」
「う~ん、どうしたもんかのう」
「ヒイロが悪くないことを、しっかりと皆で伝えるしかないだろう?」
「う~ん………そうじゃのう」
「なぁに、司教様が上手いことやってくれるさ」
ここまでの道中、時折顔を曇らせるヒイロに気づいている保護者の面々。勿論レインもセツナも気づいている。
「おっ、あれはオークか?話はここまでじゃ」
「だな、そこそこ数がいるから、ここは一つ競争といかないか?」
「その勝負受けてやる。こいつのお陰でまだまだ若い者には負けんわい」
ドモンは義足を擦りながらガロードからの競争を楽しそうに受けることにした。
「豚共、こっちだ」
「「「ブォ!ブヒ~~~」」」
背中に担いでいた大剣と大盾を装備し、大声でオーク達を挑発するガロード。
「そうだ、そのままこっちにこい」
ガロードに群がるオーク達。しかし最後尾のオークが一頭、また一頭と減っていく。
「ドモン兄、ずりぃぞ」
ガロードは眼の前に迫るオークの攻撃を大盾で受け、大剣をカウンターで叩き込む。斬るというより叩き切るに近い攻撃に、吹っ飛ぶオークは一撃で動かなくなる。
「相変わらず、バカ正直な戦い方じゃのう」
ドモンは気配を消しガロードに列を成したオーク達の最後尾に回り込み、大斧で一匹づつ首を跳ねていく。二動作のガロードと一動作で仕留めるドモン。競争の結果は言うまでもなかった。
◆
日も暮れ宿にはヒイロとレインとセツナの三人が既に帰ってきており、ヒイロとレインは夕食を、セツナは風呂の準備していた。
今日の夕食は、超巨大猪の肉を薄切りにして、村で手に入れた野菜と一緒に煮込んだ鍋らしい。
風呂はセツナが水魔法を貯め、義眼で温度を測り火魔法で適温まで沸かす。
宿と言っても空き家の一棟貸であり、食事はついていない。その分料金は格安だ。外的に襲われる心配もなく、雨風をしのげて寝床があるだけでも、旅人にはありがたい。なにより風呂があったのは皆が喜んだ。
「う~ん、いい匂いだわ」
「早く食べたいなぁ」
「お風呂の準備も終わりました。もうそろそろ二人も帰ってくるから待ちましょう」
そんな会話をしながら二人の帰りを待っていると、扉が開き二人が帰ってきた。
「今帰ったぞい。さて飲むかのう」
「ただいま、腹減ったぁ~」
しかし、かなり汚れていて汗の匂いが酷い。
「ほら、二人共、先にお風呂に入ってきてよ。夕飯はそれからよ」
レインが風呂へ行くように言うが、彼女の話を聞こうとしないドモンとガロード。
「全然獲物が見当たらなくて奥まで行っていたからのう」
「まぁ、その分村は安全ってことだろう」
「二人共、狩りの成果はどうでした?」
そしてセツナが話に加わる。
「オークの群れを見つけたから全部狩り尽くしてきたわい」
「みんな、聞いてくれよ。ドモン兄が酷いんだぜ」
「まだ言うかガロード」
「何があったんです?」
(レインさん、もうそろそろ限界だろうなぁ……)
どんどんと話が盛り上がり、言い争うドモンとガロード。それを煽るセツナ。
しかしヒイロだけはレインの顔色に怯えていた。そして予想通りの事態になる。
「さっさとお風呂に行きなさい!夕食抜きにするわよ!」
「「はい!行ってきます」」
いつまでも言うことを聞かない二人に、レインの雷が落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます