第44話 四十日目
昨日の一件で、22階に続く階段の位置の情報を得た。
なんでも、勘違いしたお詫びという事らしい。
それじゃ足りないとゴネたら、使い捨ての血抜き用魔道具を貰えた。
何か特殊な物なのかと思ったが、いや特殊なのだが、これはギルドの売店に定価千五百円で普通に売っている物だった。
どの会社が作ったのだろうと見てみると、ホント株式会社の文字。
絶妙に良い商品を出すな。
感心して収納空間に封印する。
使ったら負けのような気がした。
武器屋に行き、改めて鎧の調整をお願いしようと思う。
何も昨日の出来事で見分けが必要だよな、とか思ったわけではない。鎧と戦斧の鑑定をお願いしたら、これは使うべきだと判断したのだ。
ーーー
魔鏡の鎧
魔法攻撃に対して極めて高い耐性を持つ。物理耐性も高く、特殊効果の
耐久値 127
特殊効果
買取価格 五千万円
ーーー
ーーー
暴君の戦斧
振る速度に合わせて攻撃力が上昇する。また、連続して攻撃を加えても攻撃力が上昇する。
攻撃力 30
耐久値 52
買取価格 一千万円
ーーー
魔鏡の鎧が優秀すぎる件。
暴君の戦斧も決して弱いわけではないのだが、魔鏡の鎧の買取価格と比べると、どうしても見劣りしてしまう。
厨二心くすぐるデザインといい性能といい、文句の付けようもない鎧なのだ。
だから五百万円払っても惜しくないのだ。
震える手でカードを差し出す。
五百万。五百万。5,000,000円。
ゼロは幾つだ。6つだ。6つて何個だ?
とにかく沢山だ。
俺は一杯マルのついた料金を支払うのだ。
以前も二百万払っただろって?
まったくその通りだ。
たかが五百万がなんだ。
五百万で何が出来るってんだ。
ちょっと良い車に乗れるだけじゃないか。
良いもん食って遊べるだけじゃないか。
いけないお店に200回も行ったら無くなる程度じゃないか。
……。
また来ます。
ダンジョン21階
やはりこの階は探索者が多い。
最も人が多い階と聞いていたが、正にその通りだろう。
モンスターが発見しやすいオークというのもあって、探索者の警戒心は薄れている。
だからか、和気藹々としており、楽しそうに談笑しながら薬草の採取を行っている者も散見される。
別に悪い事ではない。
気を抜けるところでは抜くべきだし、無理に気を張る必要もない。そんな事していては、長い時間探索するのは不可能だ。
いずれ精神的に参ってしまい、戦闘にも影響が出て来るだろう。それは命取りになりかねないので、気を抜くタイミング、方法は必要になって来るだろう。
それにしても楽しそうだな。
100m間隔で現れる探索者達は、仲間と楽しく笑い合っていた。
…俺も仲間が欲しいな。
不意にそう思ってしまう。
別にソロ活動にこだわりはない、仲間が出来れば是非一緒に潜りたいと思っている。
まだ潜り始めて一ヶ月と少しだが、かなりピンチな状況があった。
仲間がいれば、それも助け合えるのだ。
仲間がいる。
これほど心強い言葉はない。
オークがこっちを見ている。
俺は手を上げて「よう」と言った。
気さくな感じで、よく知る友人のように慣れた挨拶をする。
オークも「フゴッ」と言って通り過ぎて行く。
あいつも社会の荒波に揉まれて大変そうだな。
去って行く背中が煤けて見えるぜ。
そんな去って行くオークの頭が突然吹き飛ばされた。
オーークーーッ!!??
オークを倒した探索者が亡骸を引き摺って行く。
俺は思う。
仲間を失う気持ちは、こんなにも辛い物なのかと。
これなら仲間なんていない方が良い。
これはあまりにも…あまりにも…。
やめよう。
一人が寂しくて変な事をやってしまった。
俺は探索を再開する。
今回の目的は、22階に続く階段の場所を確かめることだ。
オークを屠り進んで行く。
昨日教えてもらった情報の通り、そこに22階に続く階段があった。これで、今日の目的は達成したと引き返そうとすると、背後から視線を感じた。
何だと振り向くが、そこには何もない。
それでも視線が無くなることはなかった。
何かに見られている。
別に何かの達人のようにはっきりと感じるわけではないが、空間把握のスキルの影響か、視線などの不確かなものにも敏感になっていた。
視線を感じる方向へ向かうと、何かが割れる音が響き渡る。
そして突如として、目の前にオークが現れた。
オークの目は血走り、雄叫びを上げて威嚇して来る。
そして、手に持った棍棒で俺を叩き潰さんと振り下ろし来る。だが俺は、余裕を持ってバックステップで避けて距離を取る。
すると、オークは距離を詰めようと突進して来る。
その勢いは凄まじく、これまでのオークの中でも最も早く、そして力も強そうだ。
しかし、それに合わせて下がりながら大剣で首を刎ねた。
いくら早くなっていてもコボルトほど速くはないので、対処は簡単だった。
指令を送る頭を失ったオークは、前のめりに倒れ、その命を終える。
突然現れたオークに驚きはしたが、問題はなかった。
通常のオークより少しだけ速く、少しだけ力が強そうな個体だった。個体差と言われたらそうかもしれないが、それでも同じ大きさのオークよりも一段と強く感じたのだ。
そのオークの亡骸を見ていると、黒い靄が舞い上がり、空中に消えていく。
さっきまで感じていた視線も、いつの間にか消えていた。
ーーー
田中 ハルト(24)
レベル 16
《スキル》
地属性魔法 トレース 治癒魔法 空間把握 頑丈 魔力操作 身体強化 毒耐性 収納空間 見切り 並列思考 裁縫 限界突破
《装備》
俊敏の腕輪 不屈の大剣 神鳥の靴
《状態》
デブ(各能力増強)
ーーー
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