第38話 幕間4(ある熟練探索者)
おっ兄ちゃん。ここは二十歳にならないと入れないんだぜ。
あ、24?その形でか?だぁはははっ‼︎
すまねえすまねえ、まさかそんな童顔で二十歳超えてるとは思わなかったからな。詫びだ。マスターこっちの坊ちゃんに一杯だ。おっとミルクじゃないぜ、ウィスキーをやってくれ。
何だイケる口じゃないか。
それでどうしたんだ?こんな早い時間から来る奴なんて、そんなにいないぞ?
俺?俺は良いんだよ。今朝帰って来たばかりでな、今週は休みにしたんだよ。
何してるって?探索者だよ探索者。プロの探索者だ。見ろこの体を。俺の肉体はそんじょそこらの奴等とは違うぜ、戦う奴の肉体だ。作り物と一緒にすんなよ。
何?お前もダンジョン潜ってんのか!?
嘘つけ、お前みたいな太っちょがダンジョンで生き残れる訳ないだろうが。
ああ、まだ潜り始めたばかりか。なら納得だな。
まあ頑張れよ。ダンジョンはダイエットにも良いらしいからな、そのうち俺みたいになれるかもな。
何だよ、ノリ悪いな。そこは嘘でも頑張りますって言っとけよ。
もう無くなっちまった。
マスターもう一杯頼む。
そうだな。まあ趣味程度で潜っているんだろうが、ここは先達としてアドバイスしてやろう。
おい嫌がんなよ、仲良くやろうぜ〜。
お前は11階でビックアント相手に戦ってるんだろうが、絶対に前の階には行くなよ。
ギルドは言わないけどなぁ、なんでも5階辺りから10階辺りでユニークモンスターが出るって話だ。もし戻るなら、レベルは10まで上げてからにしておけ。10以上の探索者の前には、姿を現さないらしいからな。
どうだ?ためになっただろ?
他にもあるぞ。
最近の話だがな、11階でクイーン・ビックアントが現れたそうだ。ああ、モンスターの名前言われても分からないな。そう言うモンスターがいるって覚えとけ。
本来ならクイーン・ビックアントは41階以降に出現するモンスターでな、出現率も低い半ば幻のようなモンスターだ。
そのモンスターが11階で見つかった。
しかも死体でだ。
一時的に進入禁止にしたそうだが、結局ギルドも何も分からずじまいだったそうだ。
そうだそうだで当てにならない?
仕方ないだろうが、俺も聞いただけだからな。
まあ、情報の出所はギルド職員だから間違いないぜ。
そう言えば、お前のスキルって何なんだ?
おっ分かってるな。
そうだぜ、無闇に自分のスキルやレベルは言っちゃいけねぇ。それが弱みになっちまうかも知れないからな。
当然だが、パーティメンバーのスキルだって言っちゃいけねぇよ。それは明確な裏切り行為だからな。
宴会で盛り上がって人のスキルを叫ぶ馬鹿が偶にいるが、仲間にいたら殴ってでも止めろよ。死ぬのはお前だからな。
ん?何だ。
その心配はない?何でだ?
おっおう、そうか、それなら心配いらないな。
……一人か…。
まあ、頑張れよ。
そうだ、あれだよ。ギルドで仲間紹介してもらえよ。
パーティメンバー募集してる奴、結構いたはずだぞ。
なに?ギルドに登録してない?
おいおい、まさか10階のボスも一人で……いやいや、それは無理だな。誰かに手伝ってもらったんだな。驚かせんなよ。
手伝ってくれる知り合いがいるなら、そいつに頼っても良い。とにかく一人では潜るな。危ないからな、採掘だけするなら話は別だが、先に進むなら仲間が必要になる。
特に13階以降は、絶対に一人じゃ無理だ。
一人でロックウルフの相手をするのは、プロでも厳しいからな。絶対に一人では行くなよ。
なに、登録する金が勿体ない?
馬鹿野郎!こんな所で不味い安酒飲む金があるならさっさと登録して来い!
あっすまんマスター。
今のは言葉の綾ってやつだ…分かった。今いる奴らに一杯奢るから許してくれ。
ふう、お前のせいで散々な目に遭ったぜ。
理不尽?
馬鹿野郎!この世は理不尽で出来てんだよ!
見ろ上級国民を、あいつらが住んでるのは、俺たちがダンジョンから持ち帰った鉱石やら魔道具を使って作られた物だぜ。
あそこは宇宙進出のコロニー実験施設なんて言っちゃいるが、実質上級国民の住処だ。俺達は立ち入る事さえ許されない。災害知らず、気候も関係ない、年がら年中同じ気温なんだと。しかも…。
あー愚痴だ。忘れてくれ。
羨ましいとかそういうんじゃないんだ。
昔、あいつらに嫌がらせされてな。
あー何の話してたっけなー。
まあいいや、何か質問はあるか?
銀の薬品?
それはマジックポーションだなぁ。ギルドの雑貨屋に置いてある、高いが持っていた方が良いぞ。
何だ宝箱で見つけたのか、ラッキーじゃねーか。
マジックポーションは良いやつだとうん十万するからな、宝箱から出たなら、かなり高品質なはずだ。
黄色いスキル玉?
そりゃ伝説のドラゴン○ールだ。
嘘だ。
黄色いスキル玉を手にすると、レアスキルが手に入ると言われている。言われているってのは、俺は見た事ないからだ。というより、ここ数年は手に入れたって話は聞かない…。
いや、何年か前に、出たって話題になったな。
何だ興味あるのか?
ないんかい!
痩せる方法?
ダイエット動画で勉強しろ。
20階のボス?
そんなの考える前に、仲間を作れ。話はそれからだ。
俺がダンジョン何階まで行ってるかって?
ふふん、教えてほしいか?
こっち向け、そっちは扉だ何も無いぞ。
ふっ、仕方ない教えてやろう、俺は今47階を攻略している。これでも、プロの探索者の中でも上位なんだぜ。
一番強い探索者?
そうだなぁ、今だと宵闇の剣持か、いや闘神の神宮寺も…。まあ沢山強い奴はいるって覚えとけ。
史上最強?
それは天津勘兵衛だな。
何だ知らないのか?結構有名だぞ。
いやまあ、七十年前の人物だからな、知らないのも無理はないか。
探索者といやぁ、これから探索者の天下が来るらしいぞ!
なんだよその目は、信じてないな?
探索者を支援する法案が通過するそうだ。
お前、法案の事も知らないのかよ。
後で調べとけ、マジで探索者やめれなくなるぞ。
あとは何か…あっ。
一つ思い出したぜ、噂っていうより都市伝説の類なんだがな、ダンジョンは意志を持っていてな、困難に立ち向かう者を好むそうだ。それは人もモンスターも等しくそうであり、目を付けられた者は死ぬギリギリまで追い詰められるそうだ。
あくまで都市伝説だ。
こんな話があるって覚えとけ。
まあ、他にも都市伝説の類は幾らでもあるんだがな。
代表的なのがそれだ。
他にも魔人やら世界樹やらあるが、他に知りたかったらギルドの資料室に行ったら見られるぞ、大半が作り話だろうがな。
おっ?もう帰るのか?
良い探索を。
何だ知らないのか?
探索者同士の挨拶だぜ、今度から使っていいぞ。
初めて聞いた?
そりゃそうだろうな。
何せ俺が今考えた挨拶だからな!
だぁはははー‼︎
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます