第34話 三十二日目〜三十三日目

 気付けば無職になって一ヶ月が過ぎていた。


 元々、一ヶ月くらいはのんびりしようかなと思っていたが、なかなか活動的だったと思う。

 バイト感覚で始めた探索者だが、当初はマイナス発進だったのでどうなるかと思っていた。だが、今ではしっかりと収入になっている。それに、今使っている装備を売れば当分は遊んで暮らせるだろう。

 正直に言うと、社畜時代よりも余程裕福だったりする。


 ダンジョンは3K職場に違わぬ過酷な場所だが、そこで得られる収入は魅力的である。


 不人気な職場ではあるが、一定数の探索者がいるのも頷ける。それに、趣味で潜っている人もいるくらいだ。

 それだけダンジョンには魅力があるのだろう。


 その気持ちはよく分かる。


 これはもう認めるしかないだろう。


 俺はダンジョンにハマっていると。


 命の危険もあり、きつく汚い職場ではあるが、ダンジョンに行かないと体が疼くようになって来ている。

 昨日はダンジョンに行くには行ったが、10階で格下のモンスターを相手にしただけだ。帰って来てからも、もっと体を動かしたくて疼いていた。


 というわけで、今日から明日にかけて泊まり掛けで探索しようと思う。




 ダンジョン17階


 正に無職のフットワークの軽さを武器に、急遽ダンジョン探索を開始した。突発の泊まりがけの探索だが、しっかりと準備はしている。


 食料も買い込んでおり、使う道具の手入れは昨日していて問題はない。


 正面からスケルトン二体と横からジャイアントスパイダーが迫る。

 厄介なジャイアントスパイダーに弾丸の魔法を放つが、簡単に避けられる。追撃で二発三発と放つが、どれも避けられてしまった。

 それでも、僅かに引かせる事は出来た。

 その隙にスケルトンに接近し、その骨を粉砕していく。

 何もスケルトンは棒立ちをしている訳ではない。しっかりとこちらに反応はしているのだが、如何せん動きが遅く、武器を振り下ろす前に倒せているのだ。


 俊敏の腕輪と身体強化が合わさった俺の動きはそれなりに早いようで、スケルトンは付いてこれていない。


 残ったジャイアントスパイダーは壁を伝って逃げ出したが、その背中を追って一気に加速する。

 複眼で見えているのか避けようと動作をするが、それよりも早く大剣で斬り落とした。


 ふうと息を吐いてモンスターから素材を回収する。

 最近は素材採取も慣れてきており、手早く済ませることが出来る。まあ、これが収入になると思えば、やる気も出るというものである。


 その後も探索を進め、モンスターを倒して採取して行く。


 前回の探索で、ある程度探索していたのもあって、早々に水場を発見した。そこには数匹のジャイアントスパイダーが集まっていたが、糸を避け、魔法で牽制して大剣で斬り捨てた。


 ジャイアントスパイダーが複数で出てくるのは珍しいなと思いながら、水の湧く場所に近付いて行くと、上から何か圧力のような物を感じる。

 なんだと思い上を向くと、うぞうぞと蠢く大量のジャイアントスパイダーがいた。


 その中には、一際大きなジャイアントスパイダーがいるのだが、それはこちらを見ているだけで動く気配はない。


 俺は大量の汗を流しながら後退る。

 流石にこの量のジャイアントスパイダーは相手に出来ない。

 千匹以上はいるであろうジャイアントスパイダーは、こちらを襲おうとはしていないが、何がきっかけで襲って来るか分からない。


 俺はゆっくり、ゆっくりと移動してこのフロアの出口に向かう。すると、上から一際大きなジャイアントスパイダーが落下して来た。

 襲って来るのかと警戒するが、そのジャイアントスパイダーの半身は既に無くなっており他のジャイアントスパイダーが食い付いていた。

 これはあれだ。

 蜘蛛には子供に体を差し出し、食料とする種類がいると聞いた事がある。それが、まさかジャイアントスパイダーでもあるとは思わなかった。



 早まる鼓動を抑えながら、足早にその場を後にする。


 子供に食べられているジャイアントスパイダーの目が、こちらを見ている気がして不気味だった。



 まさか、モンスターの神秘をこの目にするとは思わなかった。

 また知りたくもないモンスターの習性を知ってしまった。

 てか、水が湧く場所でやるのは止めてほしい。

 もうちょっと場所を変えてくれないだろうか。



 俺はこの階でキャンプをする気にはならず、次の階を目指して探索を再開する。


 18階に続く階段を発見したのは割と直ぐだった。



 ダンジョン18階


 土の弾丸が岩トカゲに当たるが、仕留めきれない。更に弾丸を撃つが、直撃しても怯む事なく向かって来る。岩トカゲを土の棘で下から突き刺すが、それでも進もうと足を動かす。追加で二本の土の棘を突き刺して、ようやくその動きを止めた。


 18階で出現する岩トカゲの体表は強固な、それこそ岩のような肌に守られており、土の弾丸程度ではダメージが通らない。だが、下の方はそうでもなく、ひっくり返して攻撃してやれば倒すのは容易い。


 それに、魔法で下から攻撃してやれば、ひっくり返す必要もなく仕留めることは可能だ。また、武器は強靭な顎だけなので、接近させなければ怖くはない。



 スケルトン二体とジャイアントスパイダー、岩トカゲと接敵して来る。

 スケルトンと岩トカゲが向かって来るが、ジャイアントスパイダーは様子を窺うように、先行するモンスターから一定の距離を取っている。こちらに隙が出来れば、襲い掛かって来るのだろう。


 一番近い岩トカゲを土の棘で串刺しにせんとするが、急に飛び上がって避けられてしまう。驚いた俺は反応が遅れてしまい、岩トカゲの接近を許してしまうが、大剣で力任せに打ち付け後退させる。

 その間にスケルトンが接近して、剣と鉄棍で攻撃して来る。剣を避け、鉄棍を盾で受けると、大剣を片手で振り抜き腰の骨を砕く。

 これで一体。

 だが、大剣を振り抜いた隙を狙われて、ジャイアントスパイダーの糸が襲い、上半身の動きを阻害する。


 即座に神鳥の靴に鉤爪を生やし、残るスケルトンに蹴りを食らわせて掴むとジャイアントスパイダーに向かって放り投げた。

 そこに岩トカゲが再び襲い掛かり、口を広げて迫るが、神鳥の靴で押さえつけ土の棘でその腹を突き刺した。


 身体強化を使い、ジャイアントスパイダーの糸を無理矢理引きちぎると、残るスケルトンを一気に砕き、ジャイアントスパイダーの頭を切り落とした。



 思ったよりも梃子摺った。

 身体強化すれば、まだ余裕を持って戦えるが、ノーマル状態だと攻撃を受けてしまう。

 魔法もそうだが、身体強化も魔力は消費するので、考えて使わなければあっという間に魔力は枯渇してしまう。

 日帰りならばそこまで気にしないのだが、魔力回復のために休んでいても、モンスターが接近すれば戦闘になる。戦闘になれば魔力も使うので、その分回復が遅くなる。


 魔力を節約しながら進まないと、いずれジリ貧になってしまうだろう。


 モンスターとの接敵を極力回避しながら進む。

 スケルトンのような自己主張の強いモンスターならば避けれるが、ジャイアントスパイダーのような隠密系には上手くいかない。空間把握で気付くことは出来るが、その距離は既に戦う距離なのだ。


 せめて一体づつ(ずつ)来てくれと願うばかりだ。



 18階の水場を見つけたのは、体力も魔力もかなりきつくなってきた頃だった。


 そこには二組のパーティがキャンプを構えており、夕食の準備を始めているようだった。

 俺も少し離れた場所にキャンプをしようと、テントを収納空間から取り出す。既に組み立てた状態で入れていたので、ただ取り出すだけで良かった。


 バケツと鍋を取り出して、水を汲みに行こうと二つのパーティの間を通る。

 パーティ同士の仲が良いのか、和気藹々としていた。その間を通るのかと、特に気にせずに通り過ぎる。


 俺は気にしない。

 あいつらが盛り上がっていようが、俺には関係ない。

 そう思いながら過ごしたボッチ時代は伊達ではないのだ。


 水を汲んで戻ろうとすると、また何かに呼び止められた。


 何だ。また盗賊か?


 警戒して振り返ると、そこにはハーレムパーティの一人が立っていた。というより、二つのパーティの片方がハーレムパーティだった。


 ああ、どうもお久しぶりです。

 ええ、一昨日ぶりですね。

 それで何でしょう?

 はい、実は母から直ぐ帰れと連絡がありまして…。

 えっダンジョンは圏外?

 えっと、まあ、過ぎた事は良いじゃないですか。先の事を話し合いましょうよ。

 えっ?夕食?ああ、じゃあご一緒させて頂きます。



 ハーレムパーティの弓使いの少女から、食事に誘われた。

 字面を見れば通報されそうな内容だが、ダンジョン内で他のパーティメンバーもいるのでその心配もない。


 まあ、ただ飯を食えるなら、ありがたい限りだ。


 そして後悔した。


 目の前には、同級生同士で仲良くしている男女11人。


 いくらボッチに慣れているとは言っても、ワイワイ賑わっている中に放り込まれるのは堪えるものがある。ましてや、学生時代と社畜時代にその楽しさを知っていれば尚更だ。


 ええ、大丈夫です。

 はい美味しいです。


 未成年に気を遣わせている大人。それが俺である。



 えっと、皆さんは同級生なんで?

 ああ、高校生。三年なんですね、進路は?

 あ、すいません。プライベートに突っ込むものではないですね。

 今は休みなんですか?

 ああ、ダンジョン探索って出席扱いなんですね。

 え?俺ですか?俺は24ですけど。

 あーいいですよタメ口で、気にしなくて良いですよ。



 どうやら俺の事を同級生か歳下に見ていたらしい、コイツらも俺の大人の色気を感じ取れないようだ。てか、弓使いの少女は忘れてたみたいな顔をしている。


 俺が歳上と分かったからか、話は学校の事からダンジョンの話題に変わった。どんなモンスターを倒したとか、どのモンスターが強かったとか、宝箱を見つけたとか、トラップに掛かった話など様々だ。


 その中でもハーレムパーティが転送系トラップに掛かった話が、いっそう盛り上がっていた。


 へーすごいっすね。

 宝箱から何が出たんです?

 え?いや、俺の話なんかいいんで。

 そういえば、皆さんここに来るまで早かったですね。

 俺なんて、何日も掛かりましたよ。

 えっ?地図?

 なんです、それ?


 俺の話に移ろうとしていたので、無理矢理流れを変えようと話題を振ったのだが、何やら聞き捨てならない文言が出てきた。

 何故か呆れたような顔をしている高校生達だが、そんな事を気にしている場合ではない。


 探索者協会、通称ギルド、探索者カード、様々なサービス。

 俺の知らない事ばかりだ。

 いや、それは言い過ぎた。

 探索者協会は知っていたし、買取所もその建物の中にあるのだから、そういう組織があるのは知っていた。

 探索者登録というセコイ商売をしていて、良い印象は持っていなかったので、俺は登録せずに探索者をやっていたのだ。


 まさか登録すると、お金を払えばダンジョン20階までの地図を買えるようになるとは知らなかった。

 他にも競売、オークションへの参加や宝箱から出たアイテムの出品、武器や防具を一割引きで購入出来たりする。それに、月に一度ステータスチェックを無料で受けれるそうだ。


 いや、最後のはどうでもいいな。


 また、探索者カードを持っていると、ダンジョンの情報も買うことが出来、その中に20階までの地図もあるそうだ。


 俺は落ち込んでいた。

 これまで、散々歩き回って次に進む階段を探していたのに、それが無駄な労力と言われた気がしたからだ。


 そして切り替えた。

 金稼いだからええやんと。


 そのあとも彼等の話は続き、探索者としてのマナーやら彼等がどうして探索者をやっているかを聞いてお開きとなった。


 因みに彼等は、大学に進学する学費や生活費を稼ぐ為に探索者をやっているそうだ。

 正直、見直した。





 睡眠中に何度か起こされて、モンスターを倒したこともあり少しばかり寝不足だが、女王蟻の蜜を飲めば一発で目が覚めた。


 高校生達はまだ眠っているのか静かだ。

 見張りも寝ており、こちらに気付いた様子はない。


 最後に接近して来るモンスターを討伐して、今日のダンジョン探索を開始する。




 昨日の話の中で、ダンジョンの地図を見せてもらえた。


 19階に続く階段は、ここからかなり離れていたが、突き当たりを二度曲がった先にあるのは分かったので、迷うことなく進んで行く。


 そして着いた先には、階段は無かった。


 いやいや何でだよ。

 道間違えたのか?

 あの地図、階段まで別れ道なんて2回しか無かったよ。

 どっちも右に2回だ。

 それは覚えてるし、間違えるほど難しくもない。

 とにかく引き返して別の道だな。


 俺は肩を落として戻ろうと振り返る。


 すると、そこには何も無くなっていた。

 そう、出口も無くなっていたのだ。


 何かが上から見ている気がする。

 その視線は昨日も感じたような気がするが、昨日は少なくとも背筋の凍るような思いはしなかった。


 上を見る。

 昨日も見た光景だ。

 但し、巨大なジャイアントスパイダーが子供のジャイアントスパイダーを捕食している姿だが。

 昨日見た光景とは逆だ。


 巨大なジャイアントスパイダーが降りて来る。

 巨大な体で重量もかなりあるはずだが、その衝撃は驚くほど小さく、砂煙も立ってはいない。


 二本の前足が鋭く伸びて串刺しにせんと襲いくる。

 大剣で薙いで弾くが、まるで遊ぶように何度も何度も前足が伸びて来る。

 斬り落とすつもりで振っているのだが、火花が散るだけで、表面に傷も付いてはいない。


 一度仕切り直しと背後に下がるが、そこを糸が追撃して来て、まともに食らってしまい壁に縫い付けられる。

 あっと言う間にピンチになった俺は、土の弾丸を生成して巨大なジャイアントスパイダー目掛けて飛ばす。だが、それは避ける必要がないと、ジャイアントスパイダーの体表で弾かれてダメージにはならなかった。


 動けない俺を捕食するため、巨大なジャイアントスパイダーは顔面から突っ込んで来る。警戒心もない。自分が優位に立っているという余裕のある特攻だ。


 俺は身体強化を発動して糸を引きちぎると、突っ込んで来たジャイアントスパイダーの頭の上に乗り、ブーツに鉤爪を生やして頭を思いっきり掴む。鉤爪が複眼に突き刺さり何とか踏ん張れる足場を確保すると、頭部を斬り落とさんと大剣を思いっきり振り抜いた。

 しかし、鈍い音が響き、少しだけ凹ませるだけで頭部を斬る事は出来なかった。


 巨大なジャイアントスパイダーは頭に付いたゴミでも払うように、足で頭を払い俺を吹き飛ばす。

 盾で防御したからか盾にヒビが入る。あと一度でも受ければ壊れてしまうだろう。


 俺は更に身体強化を発動して、巨大なジャイアントスパイダーに特攻する。魔法では威力が足りず、距離が開けば糸を飛ばされる。

 動かなければいい的だ。

 ならば動き続けるだけでなく、接近戦に持ち込まなくてはならない。


 近付く俺を見た巨大なジャイアントスパイダーは一気に飛び上がると、天井に張り付いた。

 そしてフロア一面に糸を吐き出し、まるで地引網のように糸が降って来る。


 俺は不屈の大剣に魔力を流すと、糸に向かって剣閃を飛ばした。巨大なジャイアントスパイダーまで到達する前に霧散するが、それでも糸は切り裂き十分な仕事をしてくれた。

 死蔵だと思っていたが、早々に使う羽目になってしまった。


 天井に張り付いたジャイアントスパイダーは、なおも糸を飛ばして来る。今度は面ではなく、点で俺を狙ってだ。


 面では捕らえる事は出来ないと判断したのだろう。

 走り回って回避するが、俺には天井に張り付いたジャイアントスパイダーを攻撃する手段が無い。魔法を飛ばしても威力が足りず、剣閃はそもそも届かない。


 だから、俺自身があそこまで行く必要がある。


 神鳥の靴に鉤爪を生やすと、壁を掴んで走る。

 上手く行くか分からなかったが、人間やれば出来るものだ。

 壁を走って巨大なジャイアントスパイダーの元に向かうと、糸を吐き出す速度が上がり、奴も焦っているのが分かる。


 避けて避けて走り抜け、天井付近まで来るとジャイアントスパイダーに向かって飛んだ。


 巨大なジャイアントスパイダーはそれを好機と見たのか、更に連続して糸を吐き出すが、神鳥の靴のもう一つの能力を使い空中を蹴る。

 直角に曲がり射線を切ると、更に一歩空中を蹴って巨大なジャイアントスパイダーの元に飛んだ。


 必ず倒す。

 そう心に誓い飛んだ。

 不屈の大剣が力が増すのが分かる。


 大剣を振り抜き、ジャイアントスパイダーの前足を斬り落とし、そしてその勢いのまま腹に突き刺した。


 ダメージを負った巨大なジャイアントスパイダーは、天井から足を離し地面に落下する。


 落ちた衝撃で、俺も投げ飛ばされるがジャイアントスパイダーから目を離さない。

 前足を一本失い腹にダメージを負ったモンスターは、明確に怒りの感情を抱いている。

 こちらを獲物ではなく、殺すべき敵として認識したようだった。






 うむ。

 死にかけた。

 二百万もした装備がボロボロだ。

 あれからの巨大なジャイアントスパイダーの動きは一変して、素早く猛攻を繰り出して来たのだ。


 足だけではなく、糸は勿論、体全体を使った攻撃も仕掛けて来る。俺も負けじと応戦するが、互いに傷が増えて行きジリ貧状態に陥った。


 何とか勝つことが出来たが、腕が上がらず、左足はあらぬ方向に曲がっており、全身から血を流している。

 頭以外で無事な所はないほどにやられてしまった。


 頭部は必死に守ったおかげだが、無駄に気を遣って怪我が増えたような気もする。

 次に潜る時は、兜かヘルメットを買おうと思う。


 またいつものように、ポーションを飲んで治癒魔法を使い治療していく。その前に、折れた足を真っ直ぐにするのを忘れない。やらなくても良いかもしれないが、もしも変な形で治ったら嫌なので、痛みを我慢して動かした。


 治療を終えたら素材を回収していく。

 糸袋が素材なのは知っているが、これだけ大きなジャイアントスパイダーならば、体も買い取ってくれそうな気がする。


 勿体ない精神を発動させた俺は、収納空間にどんどん入れていく。どこかで限界が来るかと思ったが、まだ余裕があるようだ。


 途中でガラス玉を拾った。

 手の中に消えて行くのを見届ける。

 これが、昨日言っていたスキル玉と言うやつなのだろう。確かに、ガラス玉を拾う度にスキルが増えていったような気がする。


 全て回収し終えた俺は、その場に座り体力と魔力の回復に努める。


 まだ今日の探索が始まったばかりだというのに、既にすっからかんのボロボロだ。このまま帰るにしても、回復しないとまずい。そんな状態だ。


 ゆっくりと休んでいると、まるで場面が切り替わるように自分のいる場所が変わる感覚を覚える。

 何がと大剣を手に取り警戒していると、無くなっていたはずの入り口から二組のパーティが入って来るのが見えた。


 何が起こっているのか分からず辺りを見回すと、背後には19階に続く階段が出来ていた。


 俺は狐に化かされたような気持ちになり、高校生達に手を上げて挨拶するのであった。




ーーー


田中 ハルト(24)

レベル 15

《スキル》

地属性魔法 トレース 治癒魔法 空間把握 頑丈 魔力操作 身体強化 毒耐性 収納空間 見切り 並列思考 裁縫

《装備》 

俊敏の腕輪 不屈の大剣 神鳥の靴

《状態》 

デブ(各能力増強)


ーーー

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