第28話 二十六日目
今日は朝早くから、ダンジョンの近くにあるショッピングモールに来ている。
目的はダンジョンで使う、キャンプ用の道具を見に来たのだ。
別に無理して泊まりがけで探索する必要はないのだが、一度もやらずに終わるのも嫌だったので、一、二回やってみてダメそうなら諦めようと結論を出したのだ。
それでキャンプ用の道具を見ているのだが、一連の道具が置いているのはキャンプ商品を取り扱っている店舗で、その一角にダンジョン用の商品が置かれている。
うん。めっちゃ高い。
ただのキャンプ道具に比べて、桁が一つ二つ違う。
どれも頑丈そうな作りをしており、中でも隠蔽やモンスター除けの魔法が施されているテントは、家が買えるくらいの値段だ。
こんなの誰が買うんだよと思ったが、この値段で命が買えると考えたら、そんなに高価とも言えないのだろう。
それと一つ気になった事がある。
俺が欲している商品が見当たらないのだ。
これだけ探しても無いのなら、もしかしたら取り扱ってないかも知れない。
俺は店員に尋ねる。
あの1人用のキャンプ道具ありませんか?
ああ、こちらでは扱ってないんですね。
どこか取り扱ってる所って、教えてもらえたりしませんか?
え?無い?何で?
ダンジョンの道具は四人用からしかない?
他も一緒?
一人で潜る奴なんていないから、どこも作ってない?
あー、そうですよねー。皆んなパーティ組んでますもんね。
俺?
俺はソロパーティです。
どうやら、このキャンプ用品店は、俺をお客様と認めていないらしい。
俺は購入を諦めて、ショッピングモールにあるフードコートで1人寂しく飯を食べていた。
今はジャンクな気分だったので、新商品のハンバーガーのセットを注文した。
のんびりとスマホを扱いながらポテトを食べていると、正面から黒いスーツを着た男が近付き、話しかけて来た。
何してるのかって、見れば分かるでしょ。
一人寂しく飯食ってんだよ。
ご一緒って、嫌だよ。別の席空いてんだから、そっち行きなよ。
普段何してるって?
何で教えないといけないんだよ。あっち行けよ鬱陶しい。
ん?何で驚いてんの?
え?あんたが嫌いかって?
俺はニッコリ笑って、
「嫌い、生理的に受け付けない」
と言っておいた。
ダンジョン15階
ダンジョンに潜る前に、昨日手に入れたアイテム、解毒の首輪を売って来た。買取価格は俊敏の腕輪と同じく二百万円、なかなかの値段になった。これで、キャンプ道具を買い揃えるのも良いだろう。
あと、久しぶりにステータスチェックを行った。
すると、そこそこレベルが上がっており、並列思考のスキルが増えていた。
並列思考は、魔法の同時使用に使えたりするので、かなり良いスキルを得る事ができた。
身体強化を施し、モンスターに向かって走りながら、地属性魔法の弾丸で数を減らしつつ、残りを大剣で始末する。
小さ目の棘でモンスターの動きを止め、弾丸を撃ち頭部を破壊して行く。
ポイズンスライムの核を弾丸で狙うが、何度も外してしまい、最後は散弾でまとめて潰した。
そんな感じで進んでいると、チラホラと他の探索者を見るようになって来た。
これまでも、何度か探索者は見て来たが、三十人規模の大人数で攻略して行くのは初めて見た。
前に襲撃して来たおじさんパーティも十人規模のパーティだったが、その倍となると道を圧迫しており、追い越すのを戸惑わせた。
どうしよう。
何だろう、このパーティ?
年齢の幅も広く、大学生くらいから中年もいる。
本当に何の集まりなんだ?
何て少し離れた位置から、付かず離れずの距離を保ちつつ進んで行く。
よく見ると彼等はキャンプ用の道具も背負っており、泊まりがけでダンジョンに挑んでいる事が分かる。
ん?なんか目の前のパーティの一人が手招きしている。
はい、何でしょう?
え?これを持て?
ああ、はい。
…。
……。
ああ、ここでキャンプするんですね。
それ組み立てろって言われても、俺、これ組み立てた事ないんですよ。
ああ、そうやるんですか。流石っすね!
へ〜銃ってそんなに反動があるもんなんすね。
あっ今から点呼取るんですね。
整列して、何か自衛隊みたいですね〜。
…。
自衛隊だね、この人達。
俺はこっそりと抜け出して、急いで家に帰った。
ーーー
田中 ハルト(24)
レベル 14
《スキル》
地属性魔法 トレース 治癒魔法 空間把握 頑丈 魔力操作 身体強化 毒耐性 収納空間 見切り 並列思考
《装備》
俊敏の腕輪 不屈の大剣 神鳥の靴
《状態》
デブ(各能力増強)
ーーー
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