第29話 二十七日目
昨日帰って、自衛隊について調べてみると、新隊員の教育期間中に、ダンジョン20階までクリアする教育があるようだ。
大人数で挑戦する分、移動は遅いが、教官達のサポートを受けて安全に探索をするようだ。装備も国から支給されており、他に探索に必要な道具や食料も国からの支給なのだという。
つまり、国民の税金から出されている。
くっ!黙って飯くらい食って帰れば良かったぜ!
また、ダンジョンで教育を行うのは警察も同じようで、自衛隊ほど大人数ではないが、一般的なパーティ単位で探索するらしい。
その違いは、自衛隊と警察の役割の違いからなのかもしれない。
まあ、何にせよダンジョンでのキャンプの仕方は何となく分かった。
あとは、道具を揃えるだけである。
予算は決めているのだが、肝心の欲しい物が無い。
通販サイトで検索するのだが、ヒットするのは小さくて四人用の物からだ。オークションサイトでは、ソロ探索者用のキャンプグッズも出品されているが、一人用キャンプ用品を雑に改良してダンジョン用と謳っているだけで、信用は出来ない。
いっそ一人用のキャンプ用品で試してみるか?
いやいやと首を振る。
それで命を落としては意味がないのだ。最低限の安全は確保して、探索をしたいのだ。
それから幾つかのサイトで調べて行き、一つ気になるものを見つけて手を止めた。
これは…。
ダンジョン15階
モンスターを蹴散らし進んで行く。
相変わらずのエンカウント率で嫌になる。
他の探索者はどんどん進んでいるが、やはり仲間がいるのと居ないのとでは、こうも効率が違うのだろう。
と、朝までは俺も思っていた。
どうやら少しだけ違っており、どうやら虫除けならぬ、モンスター除けなる使い捨てアイテムがあるようだ。
ショッピングモールにある雑貨屋に並んでおり、ペン位の大きさで、筒状になっている。頭の部分を捻ると発動し、効果時間は三時間。価格は一本二千円となっており、大変リーズナブルになっている。
ただし、その効果は強いものではなく、遠方からでは気づかれ難いと言うだけで、近付けば気付かれるようだ。
それでも、これがあるとエンカウント率が半分になり、その効果は絶大であった。
俺は購入したモンスター除けを発動してみる。
筒状の表面には、モンスターバーツと印字されており、これがこの商品名なのだろう。
うむ、確かにモンスターとの遭遇が減った。
俺はモンスターを蹴散らしながら感心する。
続いて来るモンスターをブーツの鉤爪で掴んで、そのまま切り裂く。
エンカウント率は確かに減っている。
魔法で串刺しにして、接近したモンスターは散弾で吹き飛ばす。大剣を振り回して、モンスターを始末する。
減っているが完全には無くなる事は無いようだ。
だが、その効果は確かで大変優秀な商品のようだ。
何処の会社が作っているんだろうと気になり、商品を見てみる。
するとそこにはホント株式会社の文字。
……。
俺はモンスター除けを収納空間に戻した。
馬鹿野郎!
ダンジョンに来たのに、収入源のモンスターと戦わなくてどうすんだ!
まったく、金を稼ぐために潜ってんのに、何がモンスター除けだこのヤロウ!
俺は当初の目的を思い出し、モンスターとの戦闘を再開するのであった。
ーーー
田中 ハルト(24)
レベル 14
《スキル》
地属性魔法 トレース 治癒魔法 空間把握 頑丈 魔力操作 身体強化 毒耐性 収納空間 見切り 並列思考
《装備》
俊敏の腕輪 不屈の大剣 神鳥の靴
《状態》
デブ(各能力増強)
ーーー
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